テラーノベル
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──翌朝。
レイは玄関先でネグに苦笑しながら言った。
「……程々にな? 本当に。」
その声にネグは、静かに「うん……わかってる」と頷き、再び謝りに家へ向かった。
リビングへ戻ると、だぁはいつもの優しい顔で迎えたものの、事情を聞くと口元を押さえながら肩を震わせ、ついには吹き出すように笑った。
「ぷっ……ふふっ、いや、もう……さすがに……っ」
夢魔は腕を組んだまま、険しい表情を崩さず睨んでいた。
すかーに至っては完全にガチギレ状態。
顔を真っ赤にし、眉間に深い皺を刻んだまま拳を震わせている。
マモンも声は出さないものの、肩を震わせ必死に笑いを堪えていた。
ネグはそんな中、申し訳なさそうに小さな声で呟く。
「……いや、ほんとに……うん……ごめん。」
だがその言葉に、すかーは静かに、そして確実に怒りを込めた目で睨んだ。
「……今さら、何回目だと思ってんだよ……」
夢魔も低い声で続ける。
「……許すわけないだろ。」
重たい沈黙が流れる。
リビングの空気はひたすらに重く、ピリついていた。
その時。
「ピンポーン」
インターホンが鳴った。
「……宅急便か。」
すかーが立ち上がり、ネグもついて行く。
玄関前――
配達員が荷物を持って待っていた。
だが。
「わっ!」
ネグの小さな悲鳴。
ツルツルと滑る床――
わざとじゃない。本当にツルツルすぎる。
「おい、マジで……!」
すかーが振り返った時にはもう遅かった。
ズルッ――
またもやネグの手が、すかーのズボンを掴んでしまい、そのまま下着ごとズボンをズルッと下へ。
「う……っ……あッ……!!」
目の前には配達員。
「……あ、じゃあ……ありがとうございました……」
配達員は目線を逸らしながら、静かに逃げるように玄関から去って行った。
だがすかーの顔は真っ赤どころじゃない。
「……ッッ……なぁ……マジで……!!」
拳が震え、怒りと恥ずかしさとで呼吸すら荒くなる。
その状態のまま、ネグがまたもや手を伸ばしてしまい――
(え、また……?)
ネグの指先が、何も考えずすかーの下半身を掴んでいた。
「……ッッ……あッ……あああああああッッ!!」
すかーは膝をつき、地面を叩きつける勢いで手をつきながら悶えた。
顔は歪み、目元には涙が滲み、唇を噛みしめて。
「だから……マジで……なん、でだよ……!」
苦しそうにかすれた声を上げる。
ネグは目線を逸らそうとしつつも、口からつい漏れてしまった。
「……ださ……笑」
その一言で、すかーの怒りは完全に限界を超えた。
「お前ぇ……ふざけんなぁ!!」
全力で怒鳴りつけたいのに、声が裏返るほど痛くて悶えている。
そのままネグは上着をサッとかけて、隠すようにして立ち去った。
──リビングへ戻ったネグは、夢魔の存在に気づかず――
「わっ……!」
またぶつかり、そのまま夢魔のズボンに手が伸びた。
ズルッ――
「……ッ……やめっ……!!」
夢魔の顔が真っ赤になり、喉を詰まらせたような苦しそうな声。
「……ッ、ッ……!!」
ネグの手は、完全に無意識だった。
またもや下半身をギュッと掴んでしまっていた。
夢魔はうめきながら、眉をひそめ、苦しそうに身体をくの字に折り曲げる。
マモンとだぁはすぐ横にいて、目を見開いたまま、完全に呆れていた。
ネグは「……ほんと、悪気は無い……」と声を震わせたが――
夢魔は振り絞るように声を上げた。
「……離せっ!!」
ネグはハッとして手を離し、すぐにその場を離れようと玄関へ。
だが――
すかーのことをすっかり忘れていて、玄関先ですかーの下半身へ――
「ぐああああああああああああッッ!!」
すかーは完全に床に倒れ込む勢いで悶えた。
その顔は涙まで滲み、苦痛で声にならない呻き。
「っ……なん、で……俺ばっか……」
──外。
ネグは再びレイの家へ逃げ込み、全てを話した。
レイはもう完全に腹を抱えて笑っていた。
「いや、マジで……! なんでそこまで!? もう漫画超えてんぞそれ……!」
ネグはうつむいたまま、小さく呟いた。
「……ほんとに……悪気はないんだけど……」
レイは涙まで浮かべて笑いながら、肩をすくめた。
「ほんまにさ……あいつら、よく耐えてんな……」
──すかー・夢魔視点、その後。
ソファに倒れ込んだすかーは、ズボンを必死に直しながら唇を噛み締めていた。
「マジで……マジで許さねぇ……」
夢魔もズボンを直しながら、ため息を吐きつつ、苦笑すら浮かべていた。
「……あいつ、次やったら……ほんと、怒鳴るどころじゃ済まさねぇぞ……」
だぁとマモンはその様子を見守りながら、微妙な顔で静かに見守っていた。
リビングの空気は、またもや重く沈み込んでいた。
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