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6 視線
先生の黒板に書く字はキレイと言われたらキレイじゃない。
なら、数学の深澤先生の方がキレイ。
けど、私はそんな先生がかく適当な字が好きだった。
だから、スマホをすっと出して先生の字を撮ったこともある。内緒だけどね。
6時間目が国語の時はそのままの流れでホームルームをする。
その日も、連絡事項だけ話してみんなが帰りの支度を始めてる時
「あー、誰かさぁこれ準備室まで運ぶの手伝ってくんねー?」
先生は私たちが出したノートを手のひらに積んで教室を見渡した。
「日直はー、今日沢山働いたから日直以外で」
日直だった男の子が「しょっぴー最高!」って言ってる。
みんなは早く帰りたいからか、先生とは視線を逸らしてる。
そんな中、私は先生の顔をずっと見てた。
お願い先生!
私を選んで!
お手伝いでも、なんだってするから!
その時、先生の目が私にとまった。
一瞬、音が消えたような気がした。
「ふはっ笑」
「さんきゅ。」
「んじゃ、姫野。お前の放課後のちょっと俺にちょーだい。」
じゃあ、解散!って先生が手を叩いてみんなが帰っていく。
先生をみたら手の甲を揺らすのと逆に
ゆらゆら、私を手招ていた。
・
誰もいなくなった教室。
「あ、靴も持ってきなね?そのまま帰るでしょ」
「んじゃ、これ運んでくれる?」
そう言って教壇に置いてあったノートを半分に分けて少ない方を私に渡した。
「こっちでいいですよ?」
私は多い方を指さしてそう言ったけど、先生は
「オンナノコに重い方も出せるオトコなんてどこにいんのよ。」
クラスの男の子からは絶対に出てこないであろうセリフが先生の口から出てきて、やっぱかっこいいって思った。
廊下を歩いてる時、すれ違った女の子たちが
「しょっぴー!明日うちのクラスの授業だからね!」
って嬉しそうに話しかける。
先生と一緒にいる私はちょっとだけまた、特別感を味わえた。
神様、ほんとにありがとう。
私、幸せです。
国語準備室に入る。
「ここ、置いてくれる」
『はい』
顎でクイッと示された机の上にノートを置く。
「助かったわぁ、」
『いえ!こんなの、全然大丈夫です…』
いつでもやります!って言えばよかった。
失敗。
「見た目以上に重いんだよなぁー」
『紙が重なってるものって重くなりますよね。』
「俺引越しの時、ダンボールん中に紙たくさん入れて、持ち上げたらそこ抜けたことあったわ笑」
『えー、!!』
「まぁ、そこ抜けなくても重くて持ち上げられんかったけど笑」
そう言ってクスッて笑う。
「んじゃ、頑張ってくれた姫野にご褒美でもやるか。」
『え?』
「ご褒美。」
思わずビックリして『ご褒美』とオウム返ししてしまった。