テラーノベル
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「佐伯さん………」 さやかちゃんが、私の机までやってくるのは、これで三度目だ。でも、今回は前回までと違って、鬼の形相では無く、恋する乙女の表情だ。
そして、頭上の好感度数値が63%まで上がっている。
おい、何があった。
それはもう、恋人同士でもいいレベルの数値だぞ。
アナタは一回、主人公とデートしただけでしょうが。進みすぎ、明らかに進みすぎ。
光秀を討って、その後たった八年で天下統一を成し遂げた、豊臣秀吉じゃないんだぞ。
「な……なんの御用でしょうか………」
怒りを向けられた時以上に、困惑した気持ちで返事をした。
好感度が上がるようにセッティングしてやったつもりだけど、ここまで跳ね上がるとは思ってなかった。
その件について言われる話は、何になるのか。分からないけど、確実に『デカい』。観客に死人が出るぞ。
「佐伯さんのおかげで、アタシは自分に素直にれたの。本当にありがとう」
素直になれたとは、是如何に。
話が掴めない、と戸惑いながら、続きを促すように頷き返すと、さやかちゃんはにっこりして話し始める。
「アタシ、本当はカワイイ物が好きなのに、空手をやってるから、男より強くならなきゃいけない。女らしい所を見せちゃ駄目だって、ずっと思ってたの。
けど、佐伯さんは小鳥遊さんと一緒に、アタシをフリフリのドレスで飾り付けて、可愛いって褒めてくれた。アタシは、佐伯さんのおかげで素直になれたの」
「さ……左様ですか………」
好感度の変遷を見るに、私とこのみちゃんがロリィタを着せた『後日』の方が、さやかちゃんの心境に影響してる気がするけど、そこは突っ込まないでおこう。
「自分に素直になれたから、アタシは朝倉君にも、気持ちを伝えられる気がするの。だから、佐伯さんのおかげ。佐伯さんが居てくれたから、アタシは勇気を出せたの」
両手を、さやかちゃんの両手で包まれ、グイッと引き寄せられる。真剣な眼差しで見つめられ、頬が紅潮していくのが見て取れる。
「そ……それはなによりで……」
素直になったから、朝倉くんへの気持ちに気づいたみたいに言ってるけど、アナタが恋したのは、昨日ですからね? それまでは、仲の良い男友達程度でしたからね?
「これからも、佐伯さんにはお世話になりたいなって。いいかな?」
「え……ええ、もちろん。わたくしで良ければ、いくらでもお力になります」
情報屋としては、いくらでも協力しますけど、この結果を招いたのは、ほとんど私の力じゃない。
さやかちゃん、アナタがシンプルにチョロかったのよ。
「ありがと、これからも友達でいてね」
さやかちゃんが、両手を差し出してきたので、こちらも両手で握り返す。空手で試合した後も、こんな感じで握手してて、その癖が出てるのかな。
「こちらこそ、よろしくお願いいたします」
ああ、また友達が増えてしまった。
いや、友達が出来るのは嬉しいんだけど、ギャルゲーの情報屋がこれでいいのか。
多分ダメなんだけど、女の子(ギャルゲーヒロインなので自ずと美少女)と仲良くなるのは楽しいから、距離を取る気にもなれない。
ああ、女子に(男子にも)手を出しすぎて、嫉妬に狂ったヒロインに刺された某主人公よ、今なら君の気持ちが分かるよ
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