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その後、三人は必要な物を一通り買い揃え終えると、 「アイスが食べたい!」と希海が目を輝かせて言い出した為、フードコートへ向かうことに。
夕方前の館内は既に人で賑わっていたが、運良く席が一つ空き昴がそこを確保した。
「ういちゃん、アイスかいいこー!」
「すみません、吾妻さん。希海と一緒に買ってきてもらってもいいですか?」
「はい」
「やったー!ういちゃん、いこ!」
嬉しそうに手を引く希海に羽衣子は小さく笑いながら頷いた。
二人が並んでアイス売り場へ向かう後ろ姿を昴は席から静かに眺めていた。
手を繋いで歩くその姿は、傍から見ればまるで本当の親子のようだった。
希海も終始楽しそうで、時折羽衣子を見上げては何かを話している。
(……吾妻さんに来てもらって、正解だったな)
自然とそんなことを思う昴。
やがて、アイスと飲み物を抱えた二人が戻ってきた。
「パパ、みて! チョコにした!」
「良かったな」
「ういちゃんはいちご!」
「希海くんが一緒に選んでくれたんです。京極さんはコーヒーだけで良かったんですか?」
「はい。私は甘いものが少し苦手なので、これだけで大丈夫です」
「そうなんですね」
羽衣子からコーヒーを受け取った昴は、向かいの席で楽しげに話しながらアイスを頬張る二人を見て穏やかに目を細めた。
三人で束の間の休憩を挟んだ後、館内は夕方に近づくにつれて急激に混み始める。
「そろそろ出ましょうか」
「そうですね」
人混みが本格的になる前に、三人はショッピングモールを後にした。
本来なら帰りにどこかで夕食を済ませる予定だったが、車へ乗り込んで暫くすると、はしゃぎ疲れた希海がぐっすりと眠ってしまう。
「……これは、どこかへ寄るのは難しそうですね」
バックミラー越しに希海を見ながら、昴が小さく笑った。
「そうですね。お家に帰ったら、私が何か作りますね」
「ですが、吾妻さんも疲れているでしょう。何か買って帰りましょうか」
「このくらい大丈夫です。食材も沢山ありますし、作るのも手間じゃないので」
「そうですか?」
「はい。お気遣いありがとうございます」
そこで一度会話が途切れ、静かな車内には走行音だけが心地よく響いていた。
そんな中、昴は時折ルームミラー越しに希海の様子を確認していた羽衣子へ視線を向け、ふと口を開く。
「今日は、希海がすみませんでした。大変だったでしょう」
「え?」
その言葉に羽衣子は驚いたように顔を上げ、それから慌てて首を横に振った。
「そんなことないです! むしろ、凄く楽しかったですし」
「楽しい、ですか」
「はい。子供は元から好きですし、希海くんも私を慕ってくれているので、私の方が楽しませてもらってます」
そう言って柔らかく笑った後、羽衣子は少しだけ表情を和らげた。
「それに私は、あくまでお世話をしているだけですから。実際、親になる方がずっと大変だと思います」
その言葉に昴は静かに目を細める。
「そうですかね」
「え?」
「確かに、親になるには覚悟が必要ですし、楽なことでありませんが、私は保育士という仕事はとても立派だと思いますよ」
「…………」
「他人の子供を責任を持って預かって、親代わりになって色々なことを教えるんですから」
「…………」
「現に、今日私は吾妻さんから沢山学ばせてもらいました」
そう言って微笑む昴に、羽衣子の胸がじんわりと熱くなる。
「これも全部、吾妻さんのお陰ですね」
「……っ」
そんな風に真っ直ぐ認められたことは今まで一度もなかった羽衣子。
保育士として感謝されたことはある。
けれど、それが仕事だから当たり前。
“立派だ”と言われたことはなかったのだ。
(……なんで、京極さんは、こんなにも自然に欲しかった言葉をくれるのかな)
昴の言葉を胸を打たれた羽衣子は、そっと視線を落とした。
玩具売り場でのやり取りに、三人で歩いたショッピングモール。
“パパとママみたい”と言われて慌てたこと。
今日一日の出来事を思い返しながら、羽衣子は小さく笑みを零す。
(……なんだか、本当に家族みたいだったな)
そう思ってしまうくらいに、今日の時間はとても温かかった。
コメント
1件
読了したわ。この回、ガチであったかい……! 「パパとママみたい」って子どもに言われるの、もうズルいよね。昴さんが「保育士って立派ですよ」って自然に言えるの、大人として強すぎる。羽衣子が「欲しかった言葉をくれる」って思うシーン、沁みた。 夕方のショッピングモール、寝ちゃった希海、車内の静かな空気。日常の温度感が丁寧で、読んでてこっちもほっこりしたわ。いい話すぎる🔥
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