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陰キャは陽キャで妄想します♡

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陰キャは陽キャで妄想します♡

1 - 陽キャのほとけくん、俺の妄想を殺しにくる

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2025年12月04日

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青水


陰キャ×陽キャ








昼下がりの教室は、ざわざわとした雑音と、どこか甘ったるいお菓子のにおいが満ちていた。
 その中心にいるのは、クラスの太陽――ほとけくんだ。


「なあなあ、見てよこれ! 昨日の体育祭の動画、編集してみたんだけど」


 スマホを囲んで笑う声。

 ひとりひとりに気さくに話しかけ、相槌を打ち、ちょいちょいボケて、絶妙にいじられ返す。

 ほんと、彼がいるだけで教室の空気が明るくなる。


 ――眩しい。


 俺、――**いふ(男)**は、できるだけ彼を視界の端に入れないように、机にかがみこんでBL同人誌を読んでいた。


(いや、学校で読むもんちゃうのは分かってるねんけど……!

 このシーンの続き気になるし……なんで今日に限って新刊持ってきてもうたんや俺……!)


 ページの隅に、陽キャ特有の笑い声がちらつく。

 視界の端で、ほとけくんがまた誰かの肩をポンと叩いて笑わせていた。


(……いや無理やろ。陽キャってあれやで? 妄想の材料になりすぎるねん……!)


 俺は心の中で机を叩き割りながら、こっそりページをめくった――その瞬間。


「いふくん? 何読んでるの?」


「ッッッッ!!?」


 肩を跳ねさせた俺の上から、まるで天使のような顔が覗き込んでいた。


 ほとけくん。

 陽キャ。

 あかん、この距離……心臓止まる……!


「そ、それは……! あ、いや……っ、ちゃうんや……!」


 反射的に同人誌を机の下に隠す。


 だが、ほとけくんは机に手を置き、ぐいっと俺の顔に近づいてきた。


「なんで隠すの? 僕に見せられないもの?」


「ちゃ……ちゃう! ちゃうて! ええから離れてくれ! 近い近い!」


「え、顔赤いよ? 熱ある?」


 そう言いながら、自然に俺の額に手をあててくる。


 ――陽キャは距離感という概念を学校の外に置いてきてるんか?


「なあっ……! やめぇって……!」


「ほんとに熱くない? 心配なんだけど」


 二重の意味で熱いんや……!!


 俺が涙目になりながら拒絶しようとした時、ほとけくんはふっと笑った。


「……いふくん、可愛いね」


「ッッななな……!」


 陽キャの微笑み攻撃は殺傷能力が高い。

 心臓が爆発した気がした。


「で、本当に何読んでたの?」


「な、なんもっ……! ええやん……! 放っといてくれ……!」


「気になるじゃん。ほら、いふくんって普段あんまり喋らないし。話題に入りづらいなら僕が助けるし……」


「ちゃうわ!!」


「ん?」


「話題に入られへんのは……俺が……陰キャやからや……!」


 言ってしまってから、後悔が押し寄せた。


 でも、ほとけくんは笑わなかった。馬鹿にもしてこなかった。


 ただ、素直に俺の言葉を受け止めたような目をしていた。


「……じゃあさ」


 ほとけくんは、俺の机の横にすとんと腰を下ろした。


「僕が話し相手になるよ。いふくんが喋りたい時だけでいいから」


「は……?」


「寂しい時とか、暇な時とか、話したい時とか。僕、いつでも呼んでね」


「なんで……俺なんか……」


「なんかって言わないの。僕、いふくんとちゃんと仲良くなりたいだけ。だめ?」


 こんなん言われて、断れる陰キャおるんか……?

 いや、普通はビビって逃げるけど……これは……。


「……し、知らん……好きにせえ……」


 俺がそっぽを向いて小声で言うと、ほとけくんはぱっと花みたいに笑った。


「やった。じゃあ今日からいふくんの隣、僕の席ね」


「いや勝手に決めんなや!!」


「いいじゃん、どうせ空いてた席でしょ?」


 確かに空席やけど!!


 ほとけくんは喜々として俺の隣の席に座り、机に肘をついた。


「いふくんってさ、いつも漫画読んでるよね?」


「まあ……そやけど」


「どんなのが好きなの?」


 この質問は……地雷や。


 俺の好きなのは、男同士の恋愛が描かれたBL漫画。

 しかも腐男子歴はそこそこ長い。


(陽キャに言えるかぁぁぁぁぁ!!!!)


「い、一般的なやつや……! バトルとかスポーツとか……!」


「ふーん?」


 ほとけくんは何故か、その言葉の裏を読もうとするように俺をじっと見つめていた。


 この人、観察力ありすぎへん……?


「じゃあさ、いふくん。今度、僕にもオススメ貸してよ」


「はぁ!? 無理無理無理無理! 絶対無理や!」


「なんで?」


「なんでって……そら……」


 腐男子であることを知られたら死ぬからや!!!


「大丈夫だよ。僕、人の趣味とか否定しないから」


「……?」


 その一言で、胸に小さな衝撃が走った。


 否定しない。


 それは、俺がずっとほしかった言葉だった。


 俺がオタクやからって、距離を置かれたり笑われたりするのは、もう慣れとる。

 けど、否定しないってはっきり言われたことなんて……ほとんどなかった。


「……ほとけ、お前……やめろや……」


「え?」


「優しくすんな……余計に、距離わからんくなるやろ……」


 陽キャの優しさは毒や。

 その毒を吸いすぎたら――俺みたいな陰キャは、勘違いしてまう。


(……妄想が、加速してまうやろ……)


 そう、俺は腐男子。

 男同士がどう絡むか、どう恋に落ちるか、勝手に脳内で妄想してしまう。


 そして今――

 陽キャのほとけくんが、俺の妄想のど真ん中に立ってしまった。


「ねえねえ、いふくん」


「……なんや」


 ほとけくんは少し照れたように微笑んで言った。


「……僕、いふくんともっと仲良くなりたいんだよね」


「――――ッッ」


 ほとけくんは、俺を殺す気なんか?

 陽キャの言葉ってなんでこう……破壊力があるんや。


「仲良く……って……なんで俺なん……?」


「だって、可愛いから」


「可愛い言うなあああああ!!」


 机を叩く俺に、ほとけくんは笑いながら手を振った。


「え、だって本当に可愛いよ? 反応とか、仕草とか」


「陽キャは陰キャ煽るの趣味なんか!?」


「煽ってるわけじゃないよ。僕、ほんとに思ってるだけ」


「やめろ!! 本音で言われる方がダメージでかいねん!!」


 ほとけくんはケラケラ笑う。

 その笑顔があまりにもまぶしすぎて、俺は本気で泣きそうだった。


(……こんなん、妄想が止まるわけないやろ……)


 今日から俺の日常は――平凡な陰キャのままではいられへん。


 陽キャのほとけくんが、

 俺の生活にこれでもかって入り込んでくる。


 そのたびに俺の腐男子脳は暴走するし、心臓は死ぬ。


 これはもう……


 陰キャ一人では抱えきれない事件の始まりや。


 そして放課後。


「ねえ、いふくん。今日、帰り一緒にいい?」


「は……!? なんでや!」


「なんでって……僕、いふくんのこと気になるし」


「気になる!? 気になるってなんの気になるや!」


「全部」


「全部!?」


「全部だよ。もっと知りたい」


 陽キャの「知りたい」は、もはや告白より重い。


「なあ、いふくん。僕のこと……嫌い?」


「……嫌いやない……」


「じゃあ、友達になってよ」


「……」


「いふくんがいいんだ。僕は」


 俺は完全に固まった。


 陽キャのほとけくんが、陰キャで腐男子の俺に――こんな言葉を。


 これもう、妄想じゃなくて現実やんけ……!


「……勝手に、したらええわ」


 そう小さく呟くと、

 ほとけくんは満面の笑みで俺の腕を引っ張った。


「よし、帰ろう!」


「うわああああっ、触んなアホ!!」


「可愛い反応だね〜」


「やめろおおおお!!!」


 こうして俺たちの“関係”は始まった。

 陽キャと陰キャ。

 妄想と現実が入り混じる危険な日々。


 このあと俺は、ほとけくんの言葉や行動ひとつひとつに悶え狂い、

 腐男子脳はさらに加速して――


 とんでもない勘違いと、本物の恋が入り乱れることになる。


 それはまだ、俺もほとけくんも知らない










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