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緑山 紫苑
「そうかい……ジャヌスさんが……」
お世話になった人達にジャヌスの死。
そして、旅立ちの挨拶をする為、早朝から村を訪れていた。
「辛かったね……」
そう言い、そっとニティアを抱き寄せる牛飼いのおばさん。
目を赤く腫らしたニティアは、再び目から涙をこぼしていた。
「何か必要なものはあるかい?」
道具屋のおじさんがフィニスに問いかけた。
⸻
「また近くに来たら寄るから!」
「本当に……おせわになりました……グスッ……」
一通り、お世話になった人達に挨拶を終えた2人は、最後に大きなお辞儀をし、村を後にした。
しばらく歩いたあと……
グスッ……グスッ……
「……いつまで泣いてんだよ……」
「……う゛る゛さ゛い゛」
声が掠れているニティア。
「……ねぇ、フィニス……グスッ……」
「ん?」
「またいつか……あの家に戻ってこようね……」
前を向いたまま歩くニティア。
フィニスは一度だけ、村の奥にある家の方を振り返った。
そして再び前を向くと、鼻を啜りながら歩くニティアの頭に、ポンと手を置いた。
「そうだな」
2人はそっと笑い、歩き続けて行った。
⸻
森を抜けた2人。
辺りはもう薄暗くなり始めていた。
「やっと街が見えた……」
つい先日、フィニス達が薬を売りに来ていた街が目の前に見えてきた。
「……疲れた」
目を腫らしながら、とぼとぼと歩いているニティア。
「飛んで移動したほうが良かったか?」
その問いに対して、ニティアは首を左右に振った。
「私も、ちゃんと見てまわりたい」
その言葉にふっと笑うフィニス。
「それじゃ後少し、頑張ろうぜ」
「……うん」
⸻
街へ着いた2人。
すでに日は沈み、辺りは街を照らす灯りで照らされていた。
ひとまず今日泊まる宿を取り、荷物を置いた後、食事をするために外に出る2人。
「……」
いつもは明るい時間に物を売り、明るい時間に食事をして、明るい時間に歩いていた街並み。
どうしても、ジャヌスと来ていた思い出が脳裏に浮かび、互いに無言。
気がつけば、自然と、とある店の前で足が止まっていた。
店の明かりがついていることを確認したフィニス。
「王都に行く前に、もう一度食べて行くか?パンケーキ」
その言葉にニティアはゆっくり頷いた。
「食べる」
ふっと笑い、フィニスが店のドアを開ける。
「いらっしゃーい!」
賑やかな店内に響き渡る店主の声。
「……って、フィニスと……ニティアちゃん?!こんな時間に珍しいわね!」
びっくりしている店主が、席に案内した。
「いつものでいいのかい?」
無言でこくりと頷くニティア。
「それでお願いします」
軽く頭を下げるフィニス。
「……ちょっと待ってな!」
いつもの元気が無い2人に気がついた店主。
しかし、それ以上何も言わずに、厨房の奥へと消えて行った。
しばらくすると……
「はいよおまち!」
いつもより豪華に果物が盛り付けられたパンケーキと、溢れんばかりの肉が挟まったパン。そして、温かい紅茶がテーブルの上に並べられた。
「とりあえずいっぱい食べな!」
そう言い、満面の笑みを浮かべ、別のテーブルの方へと歩いていった。
店主の元気な顔をみて、くすりと笑ったフィニスがニティアに視線を合わせる。
「食べようぜ」
「うん」
「ふわふわのやつを食べる前に、ちゃんと味覚えておかないとな」
「……うん」
食べ始める2人。
「いらっしゃい!」
しばらく食べていると、店主が隣の空いているテーブルに1人の男性を案内してきた。
その男性がテーブルに着こうとする直前、チラッとフィニス達を見て、声をかけてきた。
「あなた達は……もしかして……?」
コメント
1件
第21話、読み終えたよ。村の人たちとの別れ方も、パンケーキの灯りに照らされた夜の空気感も、じんわり沁みたな。泣き腫らしたニティアが「ちゃんと見てまわりたい」って言うところとか、フィニスが「そうだな」って短く返すところが、この2人の距離感をすごく丁寧に描いてて好きだ。店主が果物盛り盛りにしてくれる優しさには泣けるわ。最後の男性、誰なんだろ…気になる。月白さんの静かな筆致、毎話楽しみにしてる🔥