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街中がクリスマスに浮かれていた。
ゲームの中も例外ではない。
その年一番の大型イベント。
限定アイテム。
特別クエスト。
巨大なクリスマスツリー。
雪の降るマップ。
そして中央広場には、山のように積み上げられたプレゼントボックス。
プレイヤーたちは笑っていた。
フレンドと写真を撮り。
チャットで「メリークリスマス」を送り合い。
イベント開始を心待ちにしている。
そんな光景を。
セブンとNoliは別の場所から眺めていた。
「平和だな」
セブンが呟く。
「平和だねぇ」
Noliは楽しそうだった。
楽しそうすぎた。
その笑顔を見れば、大抵ろくでもないことを考えていると分かる。
「準備は?」
「終わってる」
セブンはモニターを見たまま答えた。
画面の中ではコードが待機している。
シンプルな改変。
だが効果は抜群だった。
プレゼントボックスを開く。
アイテムが出る。
その処理を書き換える。
たったそれだけ。
結果として。
すべてのプレゼントから爆弾が飛び出す。
「芸術だな」
Noliが感心したように言う。
「そうか?」
「うん」
頷く。
「みんな幸せそうな顔で箱を開けるんだ」
「そして次の瞬間――」
両手を広げる。
「どーん」
セブンは苦笑した。
「性格悪いぞ」
「今さら?」
「違いない」
二人は笑う。
時計の針が進む。
イベント開始まで残り十秒。
チャット欄は大騒ぎだった。
「限定ペット欲しい!」
「レア武器当たれ!」
「プレゼント楽しみ!」
「メリークリスマス!」
カウントダウン。
五。
四。
三。
二。
一。
イベント開始。
広場中のプレイヤーが一斉にプレゼントへ飛びつく。
そして。
セブンがキーを押した。
世界が変わる。
最初のプレゼントが開く。
中から飛び出したのは可愛いペットではなかった。
真っ赤な爆弾だった。
数秒後。
爆発。
プレイヤーが吹き飛ぶ。
周囲が静まり返る。
そして次の箱。
爆弾。
また次。
爆弾。
さらに次。
爆弾。
爆弾。
爆弾。
広場が爆発音で埋め尽くされた。
「!?!?!?」
「なにこれ!?」
「ぎゃああああ!!」
「プレゼントじゃない!」
「爆弾しか出ねぇ!!」
「助けて!!」
「運営ぃぃぃ!!」
チャットが地獄になる。
阿鼻叫喚。
悲鳴。
怒号。
混乱。
画面の向こうで数千人がパニックになっていた。
Noliはしばらくその光景を見つめていた。
そして。
吹き出した。
「ははっ」
肩が震える。
「ははははは!」
机を叩く。
呼吸が苦しくなるほど笑う。
「見ろよセブン!」
モニターを指差す。
「全員信じてたんだ!」
「プレゼントが貰えるって!」
「なのに爆弾だ!」
涙が出るほど笑っていた。
「最悪だ!」
「最高だ!」
矛盾した言葉を連発する。
セブンも口元を押さえていた。
思った以上だった。
爆発するたびにチャットが荒れる。
怒る者。
泣く者。
笑う者。
運営に抗議する者。
地獄絵図だった。
「メリークリスマスだな」
セブンが言う。
Noliは笑いながらセブンの肩に腕を回した。
距離感なんて最初から存在しない。
顔を寄せる。
耳元で囁く。
「僕たちからの最高のプレゼントだね」
吐息混じりの声だった。
セブンは呆れたように笑う。
「最低の間違いだろ」
「同じ意味だよ」
「違うだろ」
「いや、僕たちにとっては同じ」
Noliは満足そうに頷いた。
モニターには今も流れ続ける悲鳴。
雪の降るゲーム世界。
爆発するプレゼント。
クリスマスツリーの下で右往左往するプレイヤーたち。
そして。
その光景を特等席で眺める二人。
Noliは画面に映る爆発を見ながら、幸せそうに目を細めた。
「来年はもっとすごいことしよう」
「気が早いな」
「だって楽しみだから」
セブンはため息をつく。
だが否定はしなかった。
窓の外では本物の雪が降っている。
世界中の誰かにとっては穏やかな聖夜。
そして二人にとっては。
忘れられない、最悪で最高のクリスマスだった。