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柘榴とAI

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#没入感フィクション
柘榴とAI

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柘榴とAI

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「夢月ぃぃぃ! 大丈夫だったかぁぁぁ!?」
家に帰った瞬間、物凄い勢いでお兄ちゃんが駆け付けて来た。
玄関を潜るまで、もうちょっと黒沢君と話したかったな……なんて思っていたのに。
兄が私より早く帰って来ていた事に対しても、何だか尋常じゃない雰囲気も合わさって緩い思考回路が吹っ飛んだ。
「え、え、え? お、お兄ちゃん……どうしたの? あの、今日は……早いんだね?」
「4cardから連絡が来てだな!? だから俺の方から“仕事終わるまではどうにか”って、そうお願いしたんだが! なんかその後色々あったから“処理した”って報告があって! それでだなぁ!?」
「おーい、落ち着けシスコーン。夢月ちゃんおかえりなさい、お邪魔してますよ?」
「あ、早乙女さん。いらっしゃいませ……なんですけど、この状況は?」
お兄ちゃんに続き、ちょっとお疲れ気味の早乙女さんがリビングからやって来た。
何と言うか、今日は男女のペアをよく見るなぁ~。
などと絶対今は関係ない事を考えつつ、とりあえずペコッと頭を下げて御挨拶を済ませれば。
「ホンット、家だとこのテンションなのね……コイツの暴走を止めるの、結構大変だったんだから。でもこの様子だと暫く鬱陶しそうね……事情は私から説明しますね? お疲れの所、申し訳ないけど」
「い、いえいえ! むしろ何だか兄がすみません! ぇと、良かったら今日のご飯、食べて行って下さい! 私、作りますんで!」
という事で、暴走気味の兄を一旦引き剥がし。
本日いらっしゃった早乙女さんのおもてなし準備を始めるのであった。
4cardがどうとか言っていたし、本人も不思議な事を言っていたのは……もしかして、昼間の事だろうか?
私の知らない所で、もしかして結構皆やり取りしてる?
◆
「たっだいまー」
「おかえり、兄貴」
「おう、帰ってたか現太。てっきり白川妹と夕飯までご一緒すんのかと思ってたが、たこ焼き買って来たけど、食う?」
俺が帰宅してから暫くして、そう経たない内に兄貴が帰って来た。
白川さんとデート中に、いきなり現れた時は何かと思ったけど。
実際アレで助けられたのも確か。
なんだけど……。
「やっぱり、覗きに来てたんだ」
「ぶはは、今回は流石にバレたわな」
「今回はって……これまでも見てた様な言い方だね」
「もうちょっと周囲を警戒しろよぉ?」
否定はしない、と。
まぁやましい事をしている訳じゃないから、別に良いんだけどさ。
いや、良くはないか。
相手から差し出されたお土産を受け取りつつ、揃ってリビングまで移動した後。
二人分の珈琲を淹れつつ。
「今日はありがと、助かった。白川さんに怖い思いさせずに済んだよ」
「気にすんな、若い頃にはあんなテンプレみたいな事だってあるもんだ。そういう時は、大人を頼った方が何かと楽なんだよ。喧嘩だなんだってなると、それこそ面倒だからな」
休み始めた兄貴に珈琲を差し出してみれば。
随分と慣れているというか、落ち着いた様子でそんな事を言って来るけど。
「他の人達って……」
「ん? あぁ、それこそ気にすんな。同業の仲間達って所だ」
はい、言質頂きました。
だってあの中の一人は、白川さんの“バイト仲間”というお言葉も頂いているのだから。
「つまり皆、賞金首って事なんだ」
「それは思考が飛躍し過ぎじゃねぇか? 俺だって“この業界”で結構長いんだぜ? 繋がりなんかいくらでも――」
「あの大きい人、朝も会ってさ。白川さんから“バイト先の先輩”だって紹介された、それに“フォー”って」
「あっちゃぁ……」
俺の中で白川さんが6keyだという疑念は、もう確定しても良いんじゃないかって程に証拠が集まり始めている。
そして今日の事と、兄貴の今の反応。
これはもう、間違いないのだろう。
だからどうって事は無いし、俺から何か対応を変えるつもりも無い。
当然言いふらすつもりもないんだけど。
「皆強そうだったね……何より、“大人”って感じがした」
「そりゃまぁ、VRとはいえあんなゲームやってるくらいだからな。ある程度身体を鍛えた連中の方が多いさ」
もはや隠すつもりはないのか、呆れた様なため息を零しながら珈琲を啜っている兄貴。
俺からしたら家に居る事の方が多いって思えるこの人でさえも、身体つきはしっかりしてるし。
何よりどんな事をやらせても、結構ハイスペックなのは知っている。
フラッと参加したバイクの大会か何かで、普通に賞状貰って帰って来た事だってあるんだから。
「そういう凄い人達の中で。白川さんは、“プロ”として肩を並べてるって事だよね……」
「…………」
コレに関しては、何も答えてくれなかったけど。
でもこの予想が全部正解なら、それは物凄い事だと思うんだ。
高校生なんて言ったら、バイトくらいはしている人は多くとも、世間から認められる“本物”になり上がっている人なんてほんの一握りだ。
白川さんは、その一人握りに含まれている。
それは一般人だったら考えられない程尊敬出来る様な才能であり、努力とも言える。
もっと言うのなら、自らの功績を見せびらかす様な真似を彼女は絶対にしない。
もしも俺だったら、どうだろうか?
俺の知っている友人達なら、どうなるだろうか?
会社の規則として、契約として口外禁止だとされていたとしても。
実はこんな事をしてるんだぜって、世間にバレない程度には自慢したくなったりするのかもしれない。
そして白川さんみたいにサブキャラを始めたとすれば、間違い無く特徴を出して“匂わせる”様な真似だって自分からしてしまうかも。
簡単に言えば、そんな事をしてしまいたくなる程、俺等はまだまだガキだって事なんだろうけど……。
あの子には、そんな様子が一切無い。
前回のtimelimit:10のコピーと戦闘した時だって、“皆と勝つ”という目的を達成する為に隠していたソレを晒しただけに思えるのだ。
もしも俺等だけでも圧勝出来ていれば、白川さんは“アレ”を見せる事は絶対に無かった。
こういった事例を考えると、本当に考え方から全然違うっていうか……同い年なのに、何だか“大人”だなぁって思ってしまうのだ。
勉強にも手を抜かないし、俺等に教える余裕すら持ち合わせている。
家事も全部やっているみたいだし、料理だってあれだけ上手くて。
それに比べて、俺は彼女に何が自慢出来るのだろか?
こんな事ばかり考えれば、俺なんかが隣に並ぶ事自体おこがましく思えて来る程……やっぱり白川さんは、“凄い人”。
けど。
「俺、もっと“ちゃんとしたい”。大人になりたいって言ったら、それこそガキだって言われちゃうと思うけど……年齢的な意味じゃなくて、精神的な意味で。しっかりした人間だって、他の人から評価を貰えるくらいに“ちゃんとして”。その上で“特別”だって胸を張れる技術が欲しい」
だからまず、その為の土俵を本気で目指したい。
そんな気持ちで、兄貴と真正面から向き合ってみれば。
「人間なんて放っておいても、いつかは大人になるもんだ。だけどお前が言ってんのは、“そういう事”じゃないんだよな? はっきり言うと身体的に大人になろうと、思考回路がお前以下って大人は五万と居る。下を見て安心しろとは言わんけど、お前は自分を子供だと自覚した上で、もっと成長したいって事で良いんだな?」
「……うん。俺はマジでガキだから、知らない事が多過ぎるから。だからこそ、“教えて欲しい”。近道とかズルとか、そういう思考から来てるのかもしれないけど。でも知っている人から“教わって”、いち早く“上”を目指したい。その上で、白川さんの隣に居たい」
今日の帰り、手を繋いだ。
これだけで心臓がぶっ壊れるんじゃないかって程ドキドキしたし、相手も嫌がっていなかった気がする。
今までだったら、その興奮で気持ち悪いくらい喜んでいた事だろう。
でも違うって、自分で気が付いた。
最後に彼女がちょっと名残惜しそうに手を離した時。
もう一回その手を掴んで、それこそ無理矢理連れ出してでも隣に居たいって思ってしまった。
けどそれはこっちの我儘であり、もしも彼女も許可してくれたとしても……“子供”じゃ責任が取り切れない行為。
だからこそ、他の人が認めてくれる様な存在になりたい。
何より彼女が認めてくれて、俺も自信を持って一緒に居られるくらい。
“凄い人”ってヤツになりたいと、思ってしまったのだ。
「なら、俺からもルールを設ける上に、結構な無茶を言うぞ? ハッキリ宣言しておくが、高校生の立場じゃ社会的には全く信用なんぞ無い。もしも何かしら興味を持たれるとすれば……それは、“結果”だけだ」
「結果……ガンサバで言うと、個人の総合成績って事で良いの?」
「それもある、だがソレだけじゃない。ソイツの人柄や、他にどんな事をしていたのか。そしてお前が人生で残した全てのスコアを、相手が欲しがるかどうかってポイントも大事になって来るんだ」
前者に関しては、今すぐどうこう出来る項目じゃないのは分かっている。
人柄、なんて言われた所で運営側と話す機会でもない限り分からないだろうし。
それこそナナさんみたいに配信者だったりすれば、また違って来るんだろうが。
他にどんな事をしていたかって言うのは、ガンサバ以外での成果って事で良いんだと思う。
兄貴で言えば、他のゲームでもプロとして名を上げているし。
個人としての成績を調べようとすれば、色々と出て来るという訳だ。
これ等が、一般的な“社会的信用”って部類。
そして最後の項目……“相手が欲しがるかどうか”。
この一点だけは、俺だけじゃどうしようもない。
言いたい事は分かるし、仕方ない事だって理解しているビジネスポイント。
運営が欲しがっている人材と、俺が得意としている項目が合致していない場合。
どんなに凄い人だって、その会社にとっては“不要の人”になってしまう。
「もうこの際だからヒントを出し惜しみすんのは止めるが……これは、本来社外秘の内容だ。身内だから俺の独り言を聞いただけって事にしろ、な? んで、これを外部に漏らす事は一切禁止。ネットに上げるのなんてご法度だし、友達に話すのも無しだ。どこから漏れるか分からないからこそ、“誰にも言うな”って情報だからな」
「それが、“信用”って事だよね。分かってる、大丈夫。絶対に口が裂けても言わないって誓うよ、兄貴に迷惑掛けたくないし」
そう言葉にすれば、兄貴は溜息を一つ溢してから。
何故か卓上カレンダーを一枚捲って見せた、そして。
「来月、お前夏休みだよな?」
「う、うん……そうだけど」
「ちょっと、“修行”してみねぇ? あと、ガンサバでもイベントがある。これはマジでさっき担当から教えてもらった話だが、前半後半で別イベだ。けど前半は捨てろ、お前は後半で全力を出せ」
いまいち言っている事が理解出来ないと言うか、急に修行とか言われても。
ちょっと時代錯誤というか、古臭い言い回しな気がするんだけど……。
「あとな、現太。お前……スナイパーだけに拘るの、今日で止めろ。特にガンサバでは」
「……は?」
本日一番意味の分からない発言を、急に頂いてしまうのであった。
コメント
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第144話、読み終えたよ……。 現太くんの“ちゃんとしたい”って気持ち、すごく伝わってきた。手を繋いだ後のあの名残惜しさから、もっと成長したいって思う流れが自然で、心がぎゅっとなった。兄貴から「スナイパーだけに拘るな」って言われたシーンは衝撃的だし、これからどう変わるのか楽しみ。白川さんの隣に立つために、本気で動き出したんだね……応援したくなるよ🌙