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柘榴とAI

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#没入感フィクション
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「あぁぁ……ホント、美味しい……」
「す、すみません。あんまり今食材なくて……簡単なモノしかお出しできず……」
「夢月ちゃん、あのね? 普通急に来た相手に夕飯ご馳走するだけでも凄い上に、簡単なモノで鶏の南蛮漬けは出てこないのよ? 私達みたいな駄目な大人からすると、物凄くハイクオリティなご飯なのよ? 副菜だって物凄く多いし」
という事で、本日は早乙女さんも一緒に夕飯。
お客さんが来るとは思っていなかったので、あんまり食材を用意していなかったのだが。
今出来る物でササッとお出しした結果、相手は凄く満足そうにしてくれたので良しとしよう。
「夢月、本当に大丈夫だったか? 俺もすぐに向かおうと思ったんだけどな? 今日に限って緊急の仕事が舞い込んで来るし、4cardに何度も連絡取ったけど、“もう終わったから問題無い”とか言われちゃうし……」
「ほ、本当に大丈夫だったから。偶然? ナンバーズの皆が揃っててね? 何かもう、凄かった。皆さんが格好良く登場してくれて、本当に何も問題無く済んだから……」
「ごめんなぁ……俺が付いて行ってれば、そんな事にはぁ……」
「あぁぁもうウザい! アンタもう食べ終わったんならお風呂でも入って来なさいよ! 美味しいもの食べてるのに、辛気臭いのがずっと隣でグチグチ言ってたら楽しめないわよ。ホラ、シャワー浴びてシャキッとしてこい!」
「……はぃ」
そんな会話と共に、お兄ちゃんをリビングから追い出す早乙女さん。
凄い、なんか凄い。
私からすると、尊敬できる“まさに大人”って感じの人のイメージがお兄ちゃんなのに。
更にその上を行っているというか、兄ですら子供みたいに扱われているではないか。
「あはは、ごめんなさいね? 他人様の家に来てるのに、偉そうにして。昼間からあの調子だったから、もう全然集中してくれなくて……」
「す、すみません……兄がご迷惑お掛けしました。あ、えと! お酒、飲みますか!? お兄ちゃんのですけど、ストックは通販で買ってあるので!」
日用品のネット注文は、基本的に兄のアカウントで買い物するので。
お酒の管理や量の調整も、私に一任されていたりするのだ。
「なんかもう……ホントに。一家に一人夢月ちゃんが欲しい……2LDK6key付きのマンションとか、無いですかね……」
「それだと思いっ切りウチですね……」
アハハ、と変な笑い声を洩らしながらも早乙女さんのお酒を準備。
お食事もそろそろ終わりそうなので、ついでに軽く摘まめそうな物も一緒にテーブルに並べてみたのだが。
「ホントもう、帰りたくなくなっちゃう……」
「今日も泊っていきますか? お兄ちゃんが許可出してくれるのなら、私の部屋使って下さい。そしたら朝ご飯も作って、お礼出来ますので」
前は何と言うか、結局お仕事! みたいな雰囲気で終わっちゃったし。
今日は忙しい用事とか無いのなら、4cardからの訓練時間以外はおもてなし致しますが。
普段からお世話になりっぱなしなので、今がお礼できるタイミングだとばかりにフンスッと拳を握って気合を入れてみると。
「白川君が妹大好きな理由も分かるなぁ、本当に」
「な、なんだか恥ずかしいですけど。兄は会社でもあんな感じなんですか? ご迷惑とか、お掛けしてないでしょうか……?」
対面席に座り直して、恐る恐る聞いてみると。
此方の発言がおかしかったのか、早乙女さんは楽しそうに微笑んでから。
「ぜーんぜん。シックスの話になると急にブレイクするけど、それ以外はマジで仕事人間。むしろ夢月ちゃんが関わるまでは、職場では仕事は出来るけど“関わり辛い人”って雰囲気をバリバリ出してたわよ? 成果としては、むしろ物凄く助けられてる」
「そ、それは良かった……? です? でも、えっと……」
凄く頼もしい大人ってイメージはあったので、頼りになるって言われるのは私も嬉しいけど。
関わり辛い人……というのは?
あの兄からだと、あんまり想像出来ないと言うか。
ゲームに夢中になり過ぎている時期で、例え深夜だったとしても。
何だかんだ私の我儘に付き合ってくれる、凄く理想のお兄ちゃんって感じだったので。
「緊急案件とか持ち込まれても、“これなら明日の午後までにはどうにかなります、次回からはもう少し早い段階で声を掛けて下さい”とか。昇格の話が来ても、“現在の仕事量ですら給料が見合っているとは考えていません。だというのに業務量を増やし、僅かな昇給ではメリットデメリットが釣り合いません。条件の見直しをお願いします”とかね?」
「あわわわわ……」
「凄かったんだよぉ? 全部話を受けてたら、間違い無く私の上司になってただろうに。この様子に、結構周りどころか“上”までビビっちゃってねぇ。物凄く重要視されてるのに、いつかフラッと居なくなっちゃうんじゃないかってヒヤヒヤしてたくらい」
お、お兄ちゃん……家ではあんなに緩いのに。
会社だと結構無双してたのか。
ネットのお話とか、イメージになってしまうけど。
社会人になったら上司の命令は絶対って雰囲気があったけど。
それをシレッと断わり続けて、自分の仕事だけはちゃんとやりますってスタンスを貫いていたのか。
怖いよ、私にはそんな事出来ないよ。
自分がどこかの会社に勤めても、絶対何か言われたら「はい!」って返事だけしてヒーヒー言っている想像しか出来ない。
むしろ現状では、社会人になれるイメージが湧かない。
「それで、立場的には私の方が上になった時に。“何でそんなに一人になりたがるの?”って聞いてみた事があってね?」
「お、おぉ……早乙女さんは、何と言うかそういう所でも真っすぐですね……凄いです」
「そんな大したものじゃないのよ? 私だって、上から見たら生意気な奴って印象だろうし。まぁ、私の話は良いとして……アイツ、夢月ちゃんのお兄さん。なんて言ったと思う?」
な、なんだろう?
話を聞いている限り、物凄くストイックな感じで仕事してたみたいだし。
家に居る時のお兄ちゃんだったら想像出来ないけど、「一人でやった方が効率も良い」みたいな事言っちゃったのかな……。
だとしたら、あんまり良くないって私にも分かるけど。
何だかソワソワしてしまって、思わず身を乗り出しながら話を聞いていれば。
「最近妹がウチに来たので、最小の時間で終わらせて家に帰りたいだけです。アイツを独りにしたくないので、俺は兄貴ですから。だってさ? これ聞いて、迷わずウチのチームに引き抜いて~今に至る、みたいな感じね」
にひひっと笑う早乙女さんであったが、此方としてはボッと顔が赤くなったのが分かった気がする。
多分最初の方は、きっとお兄ちゃんなりのスタンスがあったんだと思うけど。
私がココに来てからは、私の為になるべく早く帰って来ようとしてくれてたのか。
なんだか申し訳ないけど、それと同時に……凄く、嬉しいって思えた。
こっちに来てからは、確かに孤独を感じた事はあまりなかった。
学校で上手くいかなくても、家ならお兄ちゃんが居る。
帰って来るのが凄く遅くなっても、お疲れ様ですって言いたくて待ってたり。
ご飯食べて「美味しい」って笑ってくれるのが見たくて、それを楽しみに毎日を生活していた時だって確かにあったのだ。
これまでは、そんな経験無かったから。
この生活が凄く新鮮で、嬉しい事がいっぱい見つかったから。
だから喜んでもらおうと頑張ったし、私自身の環境でも頑張ろうって思えた気がする。
その時間は……お兄ちゃんが頑張って、私の為に作ってくれている時間だったのか。
「お兄ちゃんの上司が、早乙女さんで良かったです……」
「実力やら頭の良さでは、向こうの方が全然上なんだけどね。でもまぁ、ウチのチームのエースなのは当然。今じゃ夢月ちゃんが“ガンサバイブオンライン”に関わった事で、アイツもだいぶ馴染んで来てる。だから、安心して? 君のお兄さんは、間違い無く“凄い人”だから。そしてソレはウチのチーム全員が理解して、更には前よりずっと“仲間”って感じてもらってるよ」
そんな事を言いつつ、早乙女さんが私の頭にポスッと掌を置いて来た。
なんか、今ちょっと泣きそう。
私の“普通”になっていた日常は、お兄ちゃんの頑張りで成り立っているのは知っている。
だからこそ感謝はしているし、私が出来る事は何でも手伝おうって思っているのは変わらない。
けど兄が頑張る理由の中に、私の為にって思ってくれていた項目があって。
それがお兄ちゃんにも良い影響を与えてたんだって、少しでも気が付けたら……なんて言うか。
「お兄ちゃんは、やっぱり私にとっての“理想のお兄ちゃん”です。なんて言うか、凄く……嬉しいです。それに、やっぱり尊敬します」
「んもぉぉ! こんな可愛い妹が居たら、そりゃ帰りたくなるわよね!? 私も欲しい!」
早くもちょっとだけ酔って来たのか、ワシャワシャと頭を撫でられてしまったけども。
高校生くらいだと、こういうのも普通は嫌だって思ったりするのかもしれないが。
私としては、こんな風に撫でられる事ってほとんどなかったので。
「わ、私も……早乙女さんみたいなお姉ちゃんが居たら、凄く良いなって思っちゃいます。そしたらお兄ちゃんも今みたいに心配性になっても、ちゃんと動いてくれそうですし」
なんて、冗談みたいに言ってみたのだが。
早乙女さんはピタッと動きを止めてから、徐々に顔を赤くし始め。
「6keyさんにまでそんな事を言われると、割と冗談にならないというか……色々、考えちゃいますね」
「はい?」
どうやら先程の発言だけは良くなかった様だ。
今度から……気を付けよう。
コメント
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くろぬかさん、第145話読みました! お兄ちゃんの会社での姿が「関わり辛い人」から「妹を独りにしたくないから早く帰る」って理由で仕事を最適化してたの、すごくグッときました。夢月ちゃんが「お兄ちゃんの上司が早乙女さんで良かった」って言うシーン、ジーンと来たなあ。兄の頑張りの裏にちゃんと妹がいるっていう構造が、この話の温かさを引き立ててますね。早乙女さんの「一家に一人夢月ちゃん欲しい」も分かる……! 最後の「6keyさんにまでそんな事を言われると」の反応、ちょっと意味深で次が気になります笑