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9月22日 朝7時
いつも通り、早朝とは思えない程大きな声が鳴り響く水守家。
しかし唯一違うのは幸太の部屋だった。
カーテンを締め切り木漏れ日一つない、鍵を閉めた幸太の部屋。
目が覚めていない訳じゃない
ただ、眠れない、痛む傷を耐えながら布団に包まる。
時は遡り、前日午前7時40分頃
華野 憂に登校を誘われ、共に家の敷地を出た。
道路には同じ小学校の生徒が沢山いた。
だが、その誰もが道路の端に寄っている
理由は明らかだ
華野 憂を先頭に2人の男、化粧をした女、その間に幸太という並びで道路の真ん中を占領しているからだ。
その光景はまるで、草食動物の群れの中を歩く手高き百獣の王の行進の様だった。
学校が見えてきたところで華野 憂は細道へと曲がった
「え?どうして曲がるの?学校はすぐそこなのに……」
幸太が不審がって聞くと
「近道を知ってるんだよ」
と言い返す憂
「そ、そうなんだ……」
あまり深くは聞かなかった、聞けなかったとも言える
目の前にいる男2人が幸太からしたら恐怖でしかない
少し歩いたところで……
憂は足を止めた
行き止まりだからだ
「どうしたの?学校遅刻しちゃうよ?」
ずっと心に秘めていた言葉が喉の外に出た
そこで憂は嬉しそうに呟いた
「学校?君にはもう関係ないところだよ、そこは 」
幸太は言葉の意味が分からなかった
理解しようとしばらく考えていたその時
ガシッ……
男2人が幸太の両腕を掴む
「え、何、痛い!離して!」
足をばたつかせるなり、首を左右に振るなり抵抗はしたものの、その抵抗は虚しく男2人は、ビクともしない。
「そういえば、紹介が遅れたね」
何かを思い出した様に憂が言った
「君の左手を掴んでいるのが三木田 健治」
「左手を掴んでいるのが河野 陽仁」
「そして君の後ろにいる女の子が相田 維野」
「今日はね?君にお願いがあるんだよ」
そう言いながら身動きが取れない幸太の前まで歩き言った
「お友達になってくれないかな?」
「と、友達?」
怯えながら幸太は答えた
「そう、友達」
さも当たり前のように憂は答える
「い、いいけど…… 」
そう言うと憂は拳を構え……
腹部を殴った
「ゴホッ、ッガ、ハァ、ハァ、」
「ありがとう、友達になってくれて」
幸太は未だ混乱している
何故自分は殴られたのか、自分は呼吸が出来ているのか、目の前が見えているのか
全てがあやふやになった
「ごめんね、友達じゃない人を殴るのは趣味じゃなくてね」
「改めて、友達になってくれてありがとう」
ようやく思考が回り始めた幸太告げ、再び
今度は違う場所を殴った
「うぅ……おぇ……」
どうやら胃の下を殴られたらしく、今朝食べた玉子焼きらしきものとお米の混ざったものが口の中から出てきた
すると憂が、
「ダメじゃないか、道路を汚したら」
そう言いながらうつむく幸太に目線を合わせる
「悪い子にはお仕置をしないとね」
そう言うと憂はずっと後ろにいた化粧をした女、維野に目を向けた
すると維野は何かを悟ったように鞄の中から縄を取り出した。
そして憂が微笑み
「これからもっと楽しもうね」
殴られた
今度は心臓辺りを殴られたようで
幸太の意識はそこで途絶えた