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#恋愛
ばたっちゅ
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#オリキャラ
月咲やまな
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屋台やキッチンカーを見て回り、目ぼしいものを買い込んだ私たちは、碧斗の先導で河川敷に降りた。たいして時間をかけずに、花火を見るのに適当な場所を見つける。
「打ち上げ場所から離れてはいるけど、だからこそ、ここからだといい感じに全体が見えそうだな」
碧斗は肩にかけていたトートバッグの中から、レジャーシートと座布団型の小ぶりなクッションを取り出した。
「柚乃と詩乃はこのクッションを使って」
「そんな物まで持ってきたの?」
柚乃は驚いて目を丸くし、サンダルを脱いでレジャーシートに足を乗せた。早速クッションの上に腰を下ろす。
「これだとお尻が痛くなりにくそうだね。詩乃も早く座ってみなよ。なかなか快適よ」
柚乃に手招きされて、私も姉の隣に置かれたクッションに座る。
「うわぁ、ほんとだ。これ、いいね。碧斗、ありがとう」
「どういたしまして」
碧斗は照れ臭そうに答え、スニーカーを脱いで私たちの後ろに座った。三人が座った真ん中あたりに、買って来た品々が入ったビニール袋を置く。
袋の中身を取り出し始めた柚乃に、碧斗が声をかける。
「俺、焼きそば食べよっかな。腹減った」
「大盛りの方だよね。はい、これ」
「サンキュ」
「詩乃は?まずは何食べる?」
「まずは」の言葉に苦笑しながら、私はたこ焼きの入ったパックを指差す。
「じゃ、たこ焼き」
柚乃はわざわざ蓋を開けてから、私に差し出す。
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
柚乃からたこ焼きのパックを受け取った時、お腹の底にドォンと響く大きな音が響き渡った。花火の打ち上げが始まったのだ。
顔を寄せ合いながら私は姉と会話を交わす。
「やっぱり目の前で見る花火は迫力満点だねぇ」
「ホントだよね」
「毎年思うことだけど、綺麗だよねぇ、花火って」
姉が綺麗な横顔を見せてうっとりと夜空を見上げている様子に、私の口元は自然と緩む。戸崎とのことを思うと、相変わらず心の中がもやもやするけれど、だからと言って柚乃が大好きな姉であることに変わりはない。
「そう言えば、今年は初お目見えの花火もあるらしいね」
「へぇ、そうなの?」
相槌を打った時、柚乃がいる側とは反対側の肩を叩かれたような気がして、振り向いた。すぐそこに碧斗の顔があって、いったい何事かと驚く。
「どうしたの?」
「あのさ」
碧斗は私の肩先近くに顔を寄せたまま、ある方向に向かって顎をしゃくった。
「あそこにいるのって、戸崎さんじゃないか?」
「どこ?」
私はすぐに碧斗の視線をたどった。しかし見つけられない。
「あそこのさ、屋台エリアに近い所。で、光るおもちゃかなんかを持って振り回してる子どもがいるの、分かるか?あの家族の後ろの方に立ってる人だよ」
私は目を凝らし、碧斗が言う「光るおもちゃを振り回している子ども」を探した。その子どもがいる家族らしき一団を見つけ、彼らの後方に視線をずらす。確かに、戸崎と思しき人物がいた。
「いるね……」
私はぼそりとつぶやいた。
碧斗はそれを聞き取り、あぁ、と頷く。
「さっき、声をかけなかったこと、実はずっと気になってたんだ。一緒に見ないかって、誘ってくる」
「内緒話?もしかして、私、邪魔だったりする?」
柚乃が会話に入って来て、にやにやしながら私たちをからかった。
別段聞かれて困るような話をしていたわけではない。私は苦笑いを浮かべて姉の言葉を否定する。
「全然そんなんじゃないよ」
碧斗もまた苦笑いしながら、柚乃に戸崎の方を指し示す。
「あそこで戸崎さんが一人で花火を見てるんだよ。だから、声をかけてこようか、って、今詩乃に話してたんだ」
柚乃は眉間にしわを刻む。
「放っておいていいでしょ」
「柚乃さぁ、なんだかあの人に対して冷たくないか?」
柚乃は肩をすくめる。
「だって、あの人と私たち、友達でもなんでもないもん」
「それはまぁ、そうかもしれないけど……」
柚乃は呆れ顔をする。
「碧斗ってば、人が良すぎるよ」
柚乃の言う通りだと思った。碧斗は私と違って、もしかしたら自分の恋敵になるかもしれない相手を、自分が好いている相手と同じ場に呼ぼうとしているのだ。
「あぁ、なんだがラムネが飲みたくなっちゃったな」
柚乃が突然言い出した。本当にそれを飲みたくなったのか、またはこの会話を切り上げようとしてなのか、そのどちらなのかは分からない。あるいは両方か。姉はすっくと立ち上がり、サンダルに足を入れた。
「買ってくる。確か一番こっち側のお店で売ってたはずだから、ちょっと行ってくるね」
「え?待って。一人で行くの?だったら、私も」
「一人で大丈夫だよ。ここから見える場所にあったと思うから。詩乃はここで碧斗と待ってて。二人の分も買ってくるね」
柚乃はにっと笑い、店が並ぶ一角を目指してさっさと行ってしまった。
私は急いで碧斗を促す。
「ね、碧斗、一緒に行ってきて」
「いや、でも、そしたら詩乃が一人になるし……」
碧斗は困った顔で、柚乃の後ろ姿と私とを交互に見る。
「あのね。柚乃は碧斗には言ってなかったかもだけど、つい最近、男の人に絡まれたらしいの。だからね、万が一、また同じようなことがあったら心配だから……。あ、柚乃っ!」
石か何かにつまずいたのか、柚乃がバランスを崩して地面に膝を着いた。
早く様子を見に行かなければと慌てて立ち上がろうとしたが、碧斗に止められた。
「俺が見て来る」
碧斗は素早くスニーカーに足を入れ、柚乃の方に駆け出そうとした。ところが急に立ち止まる。
「碧斗?」
私は不思議に思いながら幼なじみの視線を辿った。その先に見たのは、柚乃の傍らに駆け寄り、手を差し伸べる戸崎の姿だった。
しかし、姉はその手を取ることなくゆっくりと立ち上がり、浴衣の裾を手で払い始めた。怪我をした様子はなさそうだ。
ひとまず私はそのことにほっとしたが、胸がざわざわとして落ち着かなくなる。
戸崎はまだ姉の傍にいて、何か話しかけているようだった。
それに対して、柚乃がためらうように首を縦に振っているのが見えた。
そのままそこで別れるだろうと私は思っていたのだが、二人は微妙な距離を保ったまま、屋台が並ぶ一角に向かって行ってしまった。
「なんか、俺、行かなくても良さそうだな。とりあえず、俺たちはここで待ってよう」
「う、うん」
碧斗に促されて、私はのろのろと腰を下ろした。
「ほら、詩乃。花火、上がったぞ」
次々と打ち上げられて弾ける閃光が夜空を彩る。それは美しかったけれど、二人の後ろ姿の残像が目の前にちらついて、花火に見とれる余裕が私にはなかった。
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