せっかく手を握ったんだ、今は離すまいと決めていたが、阿部さんに握り返されたのがわかった時はさすがに汗が噴き出た。
💚「汗すごいね、大丈夫?まだ暑いよね、アイスとか買う?」
勘違いとは言え気遣ってくれたので、コンビニに寄り道して近くの公園のベンチで休憩した。
アイスラテを選んだ阿部さんに、コーヒーを出してくれたお母さんが重なる。
やっぱり親子だななんて思いながら見た。
🖤「阿部さん」
💚「うん?」
🖤「今日、本当にありがとうございました。俺、阿部さんに一番観て欲しかったから」
💚「俺こそ、あんなすごい活躍が目の前で見られて嬉しかったよ」
来れないと返事をしたのは友だちで、当日いるというサプライズだったと聞かされた。
阿部さんはそれで調子が狂ったらどうするんだと抗議したらしいが、深澤先輩が『目黒が阿部ちゃん見て調子あがる事はあっても狂う事は絶対にない』と言い切ったとかなんとか。
先輩ありがとうございます、今度は俺が奢りますと心で拝んだ。
西日が夕陽に変わってきて、赤く色づく景色の中で見る阿部さんは普段よりもっと綺麗だ。
コンビニで一度離れてしまった手をそっと重ねると、阿部さんはちらりとそれを見て自分の手をくるりと返し、指を絡めてきた。
予測しない事態が起きるとわかりやすく全部吹っ飛ぶ俺は、今さっきここで告白しようと決めて考えた台詞も見事に飛ばした。
💚「目黒くん」
🖤「ハイ」
💚「今日、ほんとに勇気もらったよ」
🖤「ハイ」
💚「俺ずっと大切にしてた思い出があって、手放したくなくて、それが結局前に進めない原因みたいになっちゃってて」
でも今日の一生懸命な目黒くんを観たら、俺も前に進もうって思えたと阿部さんは話す。
いつもの柔らかい声は少し上ずっている。
💚「あの、それでね、俺…」
絡めた指に力がこもって我に返った。
俺から言おうと決めていたのに、もしこれが告白だったら阿部さんに言わせてしまっていいのか?
🖤「あの、待って」
💚「え?」
🖤「俺が先に好きって言います」
阿部さんはぽかんとしたけど、すぐに微笑んで『わかった』と答える。
そして既に好きと発言してしまった事に気付いてぐだぐだになった俺の告白をそれでも最後まで聞いてくれた。
🖤「えっと、さっきもう言っちゃったんですけど、好きです。あの、わかってると思うんですけどその、入学式で見た時からずっとで、だから……付き合ってください」
💚「ふふ、俺も目黒くんが好きです。よろしくお願いします」
言い終わると『やった…』と脱力する俺と笑いが止まらなくなる阿部さん。
💚「先に好きって言いますから始まる告白、後にも先にもきっとないよ」
🖤「テンパりました、恥ずかしい」
💚「でも本当に嬉しい。ありがとう」
🖤「それは俺もです」
そうして晴れて恋人同士になった俺たちは、陽が沈んで薄暗くなり始めた道を手を繋いで帰った。
コメント
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やった~‼️2人とも頑張ったねー( ˶ˆ꒳ˆ˵ )ニマニマ もー‼️もー、もー幸せ💞💞💞 ありがとうございます‼️
めめあべ書きたくなるけど、ミチルさんに任せればいいやとも思うジレンマw
🖤めめあべ💚おめでとう🎊