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食器を重ねて流しに置くと、
樹音さんは慣れた手つきで水を出した。
洗い物をする樹音さんの顔をぼんやり眺めながら、この静けさが怖く感じた。
――夢だったらどうしよう、なんて。
「……そんな顔して、どうしたの」
不意にそう言われて、はっとする。
『え、あ…なんでもないです』
「なんでもない顔じゃないけど」
そう言いながらも、追求してこない。
その代わりに、蛇口を閉めてこっちを見た。
「まぁ…なんかあったら言ってね。
話したくないこともあるだろうし……」
その言葉に、胸の奥がゆるむ。
『迷惑……じゃないんですか。?』
確認するみたいに言うと、
樹音さんは少し困った顔で笑って、
「迷惑だったら朝ごはんも出してないし、
そもそも泊めてないよ。」
「おれ、だれにでも優しいわけじゃないからね。」
「〇〇が嫌じゃないなら、ずっとここにいてほしいと思ってるよ。」
その”当たり前”みたいな言い方がずるい。
そう思った___。
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ソファーに並んで座ると、
微妙に触れそうで触れない距離。
テレビはついてるのに、
内容はまったく頭に入ってこない。
でも、それが心地いいのか、それとも昼特有のぽかぽかな雰囲気がいいのか。
わからないけどなんだか眠くなってきて。
気づいたら瞼を閉じていた。
目覚めたらもう辺りは少しオレンジ色になってきていて。
わたしの体にはブランケットがかけられていた。
でも__。
樹音さんの姿はどこにもなくて。
どこに行ったんだろう。
こんなことを考えるほど、わたしは詮索していい存在じゃない。
けど、気になってしまって。
玄関のドアノブに手をかけようとしたら、
小さく音を立ててドアが開いた。
「あ、起きた?」
そう言って鍵を閉める樹音さんの手には
コンビニのビニール袋があった。
『ごめんなさい……寝ちゃって。』
申し訳なさなのか、もしくは、樹音さんが
いなかった寂しさなのか。
わからない感情が込上がってきて。
俯いてるわたしに違和感を覚えたのか
「どうした?大丈夫?」
『大丈夫…です、。』
心配して声をかけてくれる樹音さんの言葉を遮るようにそう言って、 一足先にリビングに戻った。
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少したって樹音さんも戻ってきて。
「ごめん、声かければよかったね。」
申し訳なさそうに言ってくる樹音さんに
耐えられなくて。
『いや、違くて…… 。その、なんていうか… 』
焦っているわたしを見て樹音さんは
「どうした、ほんとに」
隣に座って、下を向いているわたしの顔を
覗き込んで、
「なんでそんなに泣きそうなの、?」
そう言われて、気づいた。
あの感情は、寂しかったんだって。
『ごめんなさい……自分でもわかんない…。』
溢れ出る涙が抑えきれなくて、必死にとめようとするけどとめれなくて。
「寂しかった?大丈夫だよ、おれここにいるよ。」
そう言って抱きしめてくれる樹音さんは、
すごく暖かくて、優しかった。
ジュノンside
朝ごはんを食べ終わって、
なんとなくつけたままのテレビを眺めていた視線を、隣に移す。
そこには、すやすやと眠る〇〇の姿があった。
昨日とはまるで違う、
不安が抜け落ちたみたいな、安心しきった表情。
起こさないようにそっとブランケットをかけて、 顔にかかっていた髪の毛を、指先で静かに耳にかける。
それだけなのに、胸の奥が少し緩んだ気がした。
気づけば、空の色がオレンジ色になってきていて。
隣には、相変わらず眠ったままの〇〇がいる。
昨日、あまり眠れなかったのか……。
そんなこと、普段なら考えもしないのに、今日は妙に気になった。
冷蔵庫を開けて、もう材料がほとんど残っていないことを思い出す。
起きる前に買い物を済ませてしまおう。
そう思って、静かに家を出た。
手にビニール袋を提げ、鍵を取り出してドアを開けると_
そこにいたのは、
まだ起きて間もないんだろうと思わせる、〇〇だった。
寝癖のついた髪も、ぼんやりした表情も、
どこか現実感がなくて。
「あ、起きた?」
声をかけても、すぐには反応が返ってこない。
ほんの数秒の沈黙のあと、
少し遅れて、はっとしたように目が合った。
『ごめんなさい……寝ちゃってて。』
そう言う〇〇が、どこか必要以上に申し訳なさそうで。
「どうした? 大丈夫?」
考えるより先に、言葉が口をついて出ていた。
『大丈夫……です、。』
そう言って、〇〇は視線を逸らし、
逃げるみたいにリビングへ戻っていった。
手を洗って、部屋着に着替えてからリビングに戻ると、
ソファーに座った〇〇が、俯いたまま動かずにいた。
「ごめん。声、かければよかったね。」
そう言うと、〇〇の肩がわずかに揺れる。
『いや、違くて……その、なんていうか……。』
声は小さくて、少し震えていて。
隣に腰を下ろして、そっと顔を覗き込むと__。
目にいっぱい涙を溜めていて、
今にも零れ落ちそうだった。
「なんでそんなに泣きそうなの、?」
できるだけ静かに、恐る恐る聞く。
『ごめんなさい……自分でも、わかんない、。』
ぽつぽつと涙を落としながら、
それでも必死に言葉を探している〇〇を見ていたら、
気づいた時には、腕を伸ばして抱きしめていた。
小柄なのは知っていたけど、
想像していたよりもずっと軽くて。
腕の中に、すっぽり収まってしまう。
「……寂しかった?」
返事はなくて、
その代わり、服をぎゅっと掴む力が強くなった。
「大丈夫だよ。おれ、ここにいる。」
そう言いながら、
背中と頭を、一定のリズムでゆっくり撫でる。
しばらくすると、
握りしめていたおれの服から、力が抜けていって。
頬に涙の跡を残したまま、
〇〇はまた静かな寝息を立て始めていた。
その寝顔を見下ろして、
自然と、口元が緩む。
――ほんと、無防備だな、
そう思いながら、
起こさないように、もう一度ブランケットをかけ直した。