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春めいた風が、大学構内をすり抜けていく。ここ数日、晴人の足取りは重かったが、それでも大学を休むわけにはいかなかった。
(今日は来ない…はず…)
悠真に合鍵を奪われて以来、毎日が緊張の連続だった。
けれど、外では――まだ、自分でいられる。そう思っていた。
「おーい、晴人ーっ!」
声に振り返ると、ゼミの同級生、柚木蓮が駆け寄ってくる。
「この前のレジュメ、助かった。ほんとありがとな」
「あ、ううん…全然、大丈夫……」
「にしても、お前ってさ、ほんと優しいよな。こういうとこ、俺けっこう好きだわ」
その瞬間――背筋を何かが這った。
振り返ると、建物の影から一瞬だけ“視線”を感じた気がした。
けれど、それはすぐに消えた。
気のせいだったのだと思い込もうとした、帰り道のことだった。
⸻
***
「……晴人くん、楽しそうだったね」
その声が耳元で響いた瞬間、心臓が跳ね上がった。
「…っ、悠真……!」
大学からの帰り道、人気のない路地裏で、背後から強く腕をつかまれる。
「誰? さっき君に笑いかけてた男。手まで触れてたね」
「ちがっ、ゼミの同期で……!」
「言い訳、いらない」
次の瞬間、悠真の腕が晴人の腰を抱き上げた。
驚く間もなく、口を塞がれ、軽々と車の後部座席に押し込まれる。
「ちょっ…離せっ!! やだっ……やめて、誰か……!!」
「無理。僕以外の男に、君が微笑むとか、許せないから」
後部座席には防音のパネルがついていた。叫んでも、外には届かない。
シートベルトのように手首を拘束され、身動きが取れなくなる。
「ねえ晴人。キミはもう、僕のものなの。忘れたの?」
「違うっ…俺は、お前なんかの、もんじゃ……っ!!」
バチン、と頬に張り手が飛ぶ。
一瞬、視界が白くなる。
「痛い? でも、これが“お仕置き”だよ」
「……っ、……っ、」
涙が溢れる。けれど、悠真の手は容赦なく、服を脱がせていく。
ネクタイを緩め、シャツのボタンを引きちぎり、下着ごとズボンを引き下ろす。
「こんなに他人に身体見せたことないよね? 初めての相手が僕でよかったね」
「やだ……っ…見ないで……やめて……っ……!!」
「……今更そんなこと言う? この前、僕の指で何度もイッたくせに」
恥ずかしさと屈辱で、身体が震える。
その震えすら、悠真は愛おしげに抱きしめる。
「今日のは、“嫉妬の罰”。覚えてね」
⸻
***
帰宅後――
晴人は、ベッドの上に縛られ、全裸のまま、目隠しと口枷をつけられた。
身体中にキスマークが刻まれ、肌のあちこちに潤滑ジェルが滴る。
悠真は、指を何本も使いながら、晴人の中を容赦なく責め立てていた。
「んぐっ…ふ、ぁっ……! ん、ぅああああっ……!!」
口枷越しに漏れる声は、切ない獣の鳴き声のようだった。
「中、もうトロトロだよ。さっきからずっとヒクヒクして、指を欲しがってる」
ずぶり、と指が更に深く差し込まれ、そこを掻きまわされる。
「ここが気持ちいいんでしょ? キミの一番えっちなとこ」
「んんんっ! っぁ、ぁああっっ!!!」
達した。指だけで、何度目かわからないほど。
白濁が腹に散っても、悠真は手を止めない。
むしろさらに、責めは激しさを増していく。
「まだイけるよね? もっと、もっと可愛く壊れてよ。僕以外、考えられないようにしてあげる」
目隠しを取ると、涙で濡れた瞳がうつろに揺れていた。
「……ねえ晴人。もう一度聞くよ。今日、笑ってたのは“誰”のため?」
「……っ…違う、ただ……話しただけで……っ…」
「不正解」
バシンッ、と尻を打つ音が鳴る。
「……もう一回言って。“誰のもの”?」
「……ッ……お前の、も……っ」
「そう、晴人は僕のもの。他の男に笑いかける資格なんてない」
⸻
何度も、何度も達するたびに、快感は苦痛と紙一重になっていった。
その夜、晴人はついに――口枷を噛んだまま、小さくうなずいた。
(もう……逃げられないんだ)
心も身体も、悠真の中に囚われていく。
愛という名の、終わりなき牢獄に――