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とある授業中にひでさんと隣になったため今日は俺がツッコミをするのではなく、待ちわびたボケの方をさせてもらうことに成功した。しかし、この日の授業は真面目に聞いていても面白くする要素がどこにも見当たらない。無から何かを生み出すのは、箸でつるつるする豆を掴むくらい難しい。だから、不器用な俺では到底掴めないので、周囲を見渡し何か面白いものはないかと、初めての環境に来た時の子供くらいキョロキョロする。しかし、一向に見つかる気配がない。退屈な授業に時計を見ないと無限の時間を持て余すように感じるので、純粋な疑問をぶつけようとした瞬間にジャブ程度のボケを思いつく。 やはあり、ひでさんも授業の終わりが見えないことに焦りを覚えたのだろう。俺に対して今何時かと、訪ねてくる。
「ごめんけど、今何時なん?」
俺は待ってましたと言わんばかりに、ひでさんに対して右自分の右腕の手首を見せつけるように指して回答する。
「今11時30分かな、俺の腹時計がビンビンとそう言ってる」
「まずそこは腹じゃなくて、腕やな。あと、時計すら着いてないやん。手違い、腹違いのオンパレードやん」
「美味しいツッコミありがとうございます」
「お腹でも空いてるの?言動が空腹すぎるで」
そう、このツッコミを待っていた。俺ツッコミを入れてほしいことをちゃんと理解してくれて、それでいて俺のカバーまでしてくれるこの優しさを。自分のボケをツッコミが上手な人に突っ込んでもらえるのがどれほど嬉しいことか。最近では、俺がツッコミに回るという日常の崩壊くらいの最悪の事態が続いたから、ひでさんのツッコミが天国のように感じる。ひでさんはこのままでいて欲しいな。そんな思考をよそにひでさんは話しかけてくる。
「俺このままじゃあ、ダメだと思うわ」
「ひでさんは今のままが最高にいいと思うよ」
そう、ひでさんはご飯に箸を使うように俺のボケに対するひでさんのツッコミは完璧な適材適所だと思う。何なら、お風呂にお湯を入れるくらいだといっても過言ではない。
「ちょっと俺ボケもできるように練習するわ」
「却下」
お前まで俺のボケを取ろうと言うのか。しかし、ひでさんのツッコミがなかったら俺の周囲でツッコミがいなくなる。それだけは絶対に阻止しなければいけない。
「布団が吹っ飛んだ!」
「いや、それボケじゃなく、おやじギャグ。あと、大学のテストくらい使いまわしされてるやつ」
「難しいな~、じゃあ、仲間とともに山から溶岩、仕舞には海にまで赴き、お宝ものを求めて旅に出ること?」
「いや、それ冒険!ていうか文字数違うし、語呂が悪い」
「下を見るのも震えるくらいの高低差のある高い場所のこと」
「それは崖。確かに語呂はあっていて韻も踏んでるけど……」
気づけば俺の顔を見ながら、ニヤニヤしているひでさんがそこにはいた。そして、最後の一言で俺は気づく。
「免許皆伝やな」
「………………」
今日はもう帰ってから寝る。しばらく、楽しいボケライフができないことを悟る俺であった。