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〜ストーリー内容〜
・英西
・8月24日は英西(えいにし)の日らしいんで…
・国名表記
・実際の国とは一切ご関係ありません
☆全年齢(Dキスあり、♡喘ぎあり)
それでは、いってらっしゃい
世界会議の休憩中、各々が羽を伸ばしている頃。
ある人は親しい仲間と談笑に浸り、ある人は会議の書類をじっくりと眺め、ある人は机に突っ伏して仮眠を取っている。
しかし、そんな和気あいあいとした空間に似合わない騒がしい声が二つ聞こえてくる。
「お前はいつもいつも俺のやることにケチ付けてきよって!!ふざけんなや!」
「はぁ!?じゃあ会議中に内職すんのをやめろ!!真面目に参加しやがれ!!」
「お前かて真面目にやってないやんけぇ!!」
「んだと!?」
一日一回はしてるのでは?と思う程喧嘩の耐えない二人…スペインとイギリス。
そんな二人を遠くから見ていたフランスは、大きくため息を吐いた。
「あの二人、あんな喧嘩して疲れないのかねぇ…」
「日課みたいなもんなんだろ。ま、あの二人なりの愛の伝え方だと思うけどな」
「不器用すぎる愛の伝え方だよほんと」
そうしてまた、ため息を吐いた。
会議には出ないが、弟のドイツを見るために来た悪友のプロイセンは、フランスの隣で、子供を見守るような、微笑ましそうな眼差しで二人を見守っていた。
「うわあああああどないしよおおー!また喧嘩してもたぁぁ…」
「デカい声出して派手に口論してたな」
「そうなんよ!本当は仲良ぉしたいねん。でも、イギリス相手だと悪口しか言えへんねん」
なんでなんやろぉぉ…と酒を煽って机に突っ伏すスペイン。
時刻は夜、ここは通りにある洒落た雰囲気の居酒屋だ。
ぐちゃぐちゃ泣きじゃくるスペインの愚痴を悪友仲間のプロイセンはうんうんと頷きながら聞いていた。
「その調子じゃあ、仲良くするどころか恋人になるだなんて無理な話だぜ?」
「わかっとるわ!つか、この際恋人にならんでもええねん。喧嘩をせずに仲良ぉなれればそれでええねん」
「俺様は、お前の愚痴聞いたり、喧嘩の仲裁をすることはできるが、最終的にイギリスと仲良くなれるかはお前の行動次第だぜ?スペイン」
「うぅ…」
実は、スペインはイギリスに片思いを拗らせているのである。
昔、散々喧嘩して、以降とてつもなく不仲な二人。お互いがお互いを嫌っていることは他国にも周知の事実だ。
しかし、ここ数年はスペインはイギリスに歩み寄ろうと努力していた。結果はこの様だが。
そして、いつからか芽生えた恋心。気のせいと片付けるにはなんだか惜しく、悔しかった。フランスに相談してみれば、「え、今更気づいたの?遅すぎじゃない?」と言われる始末。…そんなにわかりやすかったのだろうか。
「なんでイギリス相手だとああなるんやろ…ほんまに意味わからへん…俺はただ仲良ぉしたいだけやのに… 」
「照れ隠しだろ」
「照れ隠しぃ!?それはないわ!」
「というか、あいつが俺に何も言わなけりゃ、俺も何も言わんねん!!あいつがいちいち突っかかってくるのがあかんねん!!」
「お前なぁ…」
「(もうだめだ…こりゃ相当時間かかるな…)」
そう感じたプロイセンは、心の中で深々とため息を吐いた。
翌日。フランスの家にて。
テーブルを挟んで向かい側のソファに座ったフランスは、恐らく一番聞きたかったことであろうことを聞いてきた。
「昨日はスペインに飲みに誘われてただろ?どうだった?」
「フランスの予想通りだぜ。仲良くしたいとか言ってるわりには、イギリスの愚痴ばっか言うしよ」
「うっわぁ…そりゃ重症だ」
引き目で眉間に皺を寄せたフランスは、やっぱりか…と言わんばかりに肩を落とした。
「そういうフランスはどうだったんだ?何か愚痴られたか?」
「そりゃもう、酔うわ、泣くわ、愚痴るわのオンパレードよ 」
「全く…うじうじしてないで、好きなら好きって言えばいいのにね」
実を言うと、イギリスもまた、スペインに片思いを拗らせていたのである。 プロイセンとフランスから見れば両思いだが。なんなら、他国にもバレているが。
そして、喧嘩した後の愚痴や泣き言を聞く係も二人は担っていた。
プロイセンはスペインの、フランスはイギリスの愚痴を聞き、その内容を後日二人の間で共有、そしてはよ付き合えと項垂れる…という何とも面倒くさい立ち位置にいるのである。
「お兄さんじれったいよ〜両思いなのにさぁ〜…」
「フランス、お前愛の国だろ。なんか良い方法ねぇのか?」
「いやいやいや、お兄さんは確かに誇り高き美しい愛の国だけどね!?当の本人達があれじゃあね…」
「こういう時にイギリスの魔法とかありゃいいんだけどなぁ」
「こればっかりはお前に同意だよ…」
はぁ…と何度目かもわからないため息を吐くと、また談笑に浸っていくのであった___
ピンポーン♪
軽快な音を立てると、それと同時にドタドタという大きな音が聞こえてくる。
ガチャッ
乱雑な開閉音と共に、見慣れた金髪と眉毛がこちらを覗いた。
「やっほ〜イギリス!今日もお兄さんがお前の恋愛相談に乗りにきたよ〜!」
「余計なお世話だクソ髭!!つか連絡も無しに急に来んな!」
「あらら〜坊ちゃん、スペインとの恋路のアドバイス、欲しくないの〜?余計なツンデレが災いして毎日スペインと喧嘩ばっかりなのに〜?」
「お前……」
今にも殴りかかってきそうな顔だが、図星らしく、そうもいかないらしい。
本当に世話がかかる子だ。
「反論しないってことはお兄さんに恋愛相談乗ってほしかったんだね!それなら大丈夫か!じゃ、お邪魔しまーす」
「あ、おい!」
イギリスの横をするりと抜けると、慣れた手つきで靴を脱ぎ、家内へと歩みを進めて行った。
イギリスは諦めたのか、はたまた本当にスペイン関連の相談をしたかったのか、それ以上は何も言わなかった。
「はぁ…ったく…」
フランスを自分の部屋に通し、紅茶を入れるため、湯が沸くのを待っている最中、イギリスは心の中で文句を言っていた。
「(あんの髭…頼んでもねぇのに勝手に恋愛相談持ちかけるしマジで迷惑……別にあいつが恋愛相談乗ってくれて嬉しいとか思ってないんだからな!?毎日愚痴聞いてくれて感謝してるとか断じて思ってねぇからな!?!?)」
なんて、本人に聞こえている訳でもないのに悪態をつく。
俺だって、フランスに相談せずともスペインと仲良くなりたかったわ。ふざけんなバカ!!
「おらよ」
「ありがとうね〜」
イギリスが持ってきた紅茶を素直に受け取ると、一口飲む。
流石イギリス。料理の腕は壊滅的だが、紅茶だけは美食家の俺でも文句なしに美味い。ハズレ無しだ。
「で?」
「いや、で?じゃないよ。お兄さんわざわざお前のために来たんだよ?何か進展聞かせてよ」
「別に何も無ぇよ…」
「だと思った」
「じゃあ聞くな!」
「はいはい、すぐキレないの。まあ、お前とスペインのツンデレ具合にはいい加減飽きたから、お兄さん解決策考えてきたわけよ」
「解決策、だぁ?」
眉間に皺を寄せ、思いっきり嫌そうな顔をするイギリス。
何か企んでるのではないかと疑っている目だ。
「そんな顔しないでよ〜お兄さん傷ついちゃう」
「うるせぇ髭。その解決策とやらは何なんだよ」
嫌な顔をしてるわりには、気になるらしい。
ほんと、スペインと仲良くなるためなら容赦しないね、お前。
「んーとね…お前の魔法使えばよくない?」
「…………は??」
「だから、お前の魔法使えばよくない?」
「聞こえとるわバカ!!」
「何かと思ったら俺の魔法使えだぁ?何がどうしてそんな思考になったんだよ」
「待って待って、お兄さんの考えを聞いてよ」
何言ってんだコイツ、という目で見られるが、それを気にすることもなく軽くあしらうと、再び口を開いた。
「イギリスはさぁ、スペインと仲良くしたいわりには、何かとスペインに突っかかるわけじゃん?」
「……あぁ」
何か反論されると思ったが、図星らしく、黙って話を聞いている。
「だったら、お前に素直になっちゃう魔法とかかけてさ、スペインに毎日好き好き言えばよくない?って話」
「…………」
「どうよ」
これはおふざけなどではなく、わりと真剣な考えだ。プロイセンといつも通り愚痴共有をしたあの日、「イギリスの魔法とかあればいいのに」という言葉にピンと来て、「じゃあ素直になる魔法かければいいじゃん!」という考えに至ったのだ。
「ふざけてんのかお前!!!そんなことしたってスペインに気持ち悪いって思われるだけだろ!?余計嫌われるじゃねぇか!!」
「いやいや、絶対いけるって〜」
「あぁ!?無理に決まってんだろバカ!!」
スペインと両思いであることを知らないイギリスは反論するが、とっくに知っている俺からすれば、そんな考え今すぐ捨てろ、スペインは絶対喜んでくれるよ!と言いたい。
それを言ったら面白くないので決して言わないが。
「えぇ〜良い考えだと思ったんだけどなぁ〜」
「ぜっってぇやらねぇからな」
「じゃあどうするわけ?明日からスペインと喧嘩やめろって言ってもどうせまたやるでしょお前らは」
「………」
「……顔洗ってくる」
「はいはい。ついでにその臆病なことばっか考える頭もスッキリしてこいよ」
「うるせぇ髭」
バタン…とイギリスが出ていくと、誰もいないリビングで、ぽつりと呟いた。
「…ほんと、不器用な奴」
バシャッ バシャッ
「くっそ……」
キュッと蛇口を絞め、鏡に映る自分を見る。
「素直になれたら苦労しねぇし…」
鏡に映る自分を見ていると、なんだか自分の臆病さも思い切り晒されているようで。
すごく、自分が恨めしかった。
「…スペイン……」
戻ってくるのが遅いなと思いつつ、まあ頭を冷やしているのだろうと思い直す。
ふいに辺りをキョロキョロ見渡すと、周りは本が隙間なくギッシリと詰められていて、机には書類などが乱雑に置かれていた。
本好きなあいつらしい部屋だ。
「……ん?」
机の上に、一際目立つ小瓶が置かれている。
気になってソファから立ち上がると、 小瓶を手に取った。
「こんなのあったっけ?」
小瓶は半透明で、中には透明な液体が入っている。くるくると回してみるが、説明の紙などは貼られていない。
「(もしかしてイギリス、裏でやばい薬の開発でもしてたの…!?)」
「(怖ぁ〜!後でイギリス問い詰めてみよ〜!)」
にししと笑っていると、ふいに小瓶を持っていた手の小指がかさりと何かに当たった。
「…?あぁ、こんなところに説明書貼ってあったのね」
小瓶の裏に紙が貼ってあった。小さい文字で何か書いてある。
「えーっと…?何々…」
小さくて読みにくい文字を一音ずつ読み上げていく。
「すなおになるくすり………」
数週間後の世界会議。休憩中。
今日も今日とて、会場の中は二つの騒がしい声が大部分を占めていた。
「いい加減にしろっ!!」
「いちいち俺に構わんといてくれます?はぁ…お前なんかと話すより、ロマとかイタちゃんと話した方がよっぽど楽しいわ 」
「あぁ!?なんでそこであいつらの名前出てくんだよ!」
「いちいちうっさいねんお前ぇ!」
相変わらずアホな内容で喧嘩している二人をプロイセンやフランスは何か企んでそうな眼差しで遠くから見つめていた。
面倒くさいし、あの二人が愛(?)を伝えあっているところを邪魔するまい…と誰も仲裁する素振りを見せない中、二人に穏やかな声がかかった。
「まあまあ二人とも…そこら辺にしておきませんか」
「日本…」
声をかけたのは日本だった。
今まで黙って遠くから見守っていた日本だったが、今回は止めに入ったらしい。
「一旦落ち着きましょう。お茶を淹れてきましたから…これを飲んで少しリラックスなされてください」
「日本…」
コトッと二人分の湯呑みを乗せたトレーを机に置くと、隣同士のスペインとイギリスの席へ配った。
日本の介入で急激に大人しくなった二人を見かねて、プロイセンとフランスは二人に近寄る。
「日本の言う通りだ。毎日喧嘩ばっかしてなぁ…たまには落ち着こうぜ?」
「うんうん。ほら、日本がくれたお茶が冷めちゃうよ〜?」
「…ありがとなぁ。ちょっと落ち着くわ」
「おう…ありがとな、日本」
「いえ、お構いなく」
にこりと微笑んだ日本は、ひと仕事を終えましたと言わんばかりに息を吐くと、フランスやプロイセンと共に自分の席へ戻って行った。
「………」
もふもふと湯気をたてるお茶から、とても温かい、良い香りがする。
一口飲んでみると、固いものが解されたときのように、今までの緊張がぶわっと一気に解けた。
隣にいるスペインをチラリと見やると、彼は心底穏やかな顔をしていた。
俺の前では決して見せない、嬉しそうな顔。
「(…何に嫉妬してんだ俺は)」
「(後で日本にちゃんとお礼しねぇとな…)」
ちょうど休憩終了と合図がかかり、会議が再び再開された。
会議中、イギリスの心には温かいお茶の香りと湯気のようなもやもやとした気持ちが住み着いていた。
「よっ、日本」
「ああ、フランスさん。会議の進行、お疲れ様でした」
「サンキュ。それより日本もナイスプレーだったよ」
「そうですか?それならよかったです」
会議終了後。ちょうど夕方ということもあり、お腹空いた〜と言う声がチラホラ聞こえる。これから、ホスト国であるフランスで飲み会が開かれる予定であった。
そんな中、フランスと日本は何やら話し込んでいた。
「ほんと助かったよ。俺とかプロイセンがあんなことしたら「お前がそんなことするとか珍しくね…?ぜってぇ何か企んでるだろ」とかイギリスに言われてたからさぁ〜…」
「いいんですよ。私もイギリスさんとスペインさんには早く仲良くなってほしいですし」
「そうだね〜」
雑談もそこそこに、手早く片付けを終わらせたフランスは、ここからどうなるかな〜とワクワクしながら飲み会の会場へ向かうのだった。
おかしい。何かがおかしい。
普段なら好きな酒を思いっきり煽るのだが、今回は考えるのに必死で、中々酒を飲む手が進まなかった。
「イギリス、今日はあんまり飲まないのかい?」
「アメリカ…」
ジョッキを片手に何か珍しいものを見たかのような目でこちらを見下ろすアメリカ。
俺だって何がなんだかわかっていないのだ。
「今日の会議…休憩が終わった後だったかな?そこから変だったよね。いつもは俺の意見にぶつくさ色々言ってくるくせに、今回はなんか肯定的というか…大人しいというか…」
「俺だって意味わかんねーよ…」
「??自分で言っておいて意味がわかんないって、どういうことだい?」
今日の会議で、俺はよくわからない事態に遭遇した。
何故か、自分が思っていることがするすると口から出てくるのだ。
例えば、今日の世界会議。
到底できなさそうなことを口走るアメリカにいつも通り反論しようとした時、口をついて出てきた言葉は
「まあ良い意見なんじゃねーの?できなさそうだが、実現不可能ではないと思う」
だった。
…いや、確かに本心ではそう思っていたが、俺はそう簡単に本心を言えるタイプじゃない。なのに、突然何も障害物が無くなったかのように、気づいたらするすると口に出していた。
「今日のイギリスはおかしいんだぞ…」
「ごめんな。今日の俺、おかしいみたいなんだ」
また。
「………とにかく、明日には直すんだぞ!!」
「おう。ありがとな」
気味悪いと感じたのか、そそくさと他の国の所へ行ったアメリカだった。
「イタちゃんとロマは最近どうや?」
「最近?毎日すっごく楽しいよ〜!」
「そうなん?それはよかったわぁ〜」
「…まぁ、そこそこ」
「そうかそうかぁ〜」
愛しの子分とイタちゃんに挟まれて会話するのは、この上なく幸せである。
何でもない日常の話に花を咲かせていると、プロイセンがジョッキを片手に近づいてきた。
「よぉ、スペインにイタリアちゃん、お兄様」
「あ!プロイセン!」
「今日の会議、随分と大人しかったなぁ。日本からもらった茶のおかげか?」
「そうそう!あのお茶飲んだ後、不思議と落ち着いていられたねん」
「スペイン兄ちゃんはイギリスことが大好きなのに、なんでいつも喧嘩してるの?」
「ちょちょ、イタちゃん!聞こえてまうやろ!」
「あ、ご、ごめん!」
慌てて口を押さえたイタちゃんだったが、今更塞いだところで意味がない。まあ、可愛いから許すのだが。
イギリスを見てみると、何やらフランスと盛り上がっていた。聞かれてはいなかったようで安心だ。
「さっさと告白しろよこのやろー」
「できる訳ないやん!俺とイギリス、毎日喧嘩ばっかりやねんで!?」
「絶対嫌われとるのに、告白なんてしたらもっと嫌われるやん!」
「スペイン…」
(((両思いなことに早く気づいてよ/気づけよ…)))
喚くスペインに対して三人が思ったことは、恐らく一致していただろう。
「ちょうどあそこにイギリスいるし、一緒に飲んだらどうだ?今フランスと話してるけど、空気読んで二人きりにしてくれるだろ」
「無理無理無理二人きりとか緊張しすぎてまともに話せる自信ないわ」
「乙女かお前は」
「できないもんはできないねん…」
いつもは前向きにすぐに物事を決められるスペインだが、イギリスが絡むとどうしても臆病になってしまう。あーだのうーだの歯切れの悪い自分が憎らしいが、無理なものは無理なわけで。
そうプロイセンと押し問答していると、視線の先にいたイギリスが急にガタン!と勢いよく立ち上がった。
「スペインのことか!?そんなん世界一大好きに決まってんだろ!!!!??」
アメリカが去ったと思ったら、今度はフランスがこちらに来た。
「坊ちゃーん。そんなに項垂れてどうしたのさ」
「あぁ…?ちょっと考え事だよ…」
「あら珍しい。いつもならどっか行けって言うのに」
「うるせぇ」
「今日の会議も大人しいし…なんか素直じゃなーい?」
ニヨニヨと笑っているフランスに何だか嫌な予感を覚える。
フランスのこの顔は、何かを企んでいる時に見せる顔だ。
「…お前…俺に何かしただろ」
「言いがかりはよしてよ〜。俺は別に何もしてないよ?」
「その言い方から絶対何かしたってわかるんだよ!!」
「えぇ〜?」
こいつ、絶対何か隠してやがる。
「ま、それはさておき、ちょっとお兄さんからお前に質問」
「何だよ」
「アメリカのこと、どう思ってる?」
「まあちょっと可愛くない所はあるが、良い弟だよ」
「へぇ〜?」
「くっそ……」
何故か素直に答えてしまう今、こいつの質問にも裏表ない素直な答えを言ってしまう。
完全にフランスが俺に何かしたことはわかっているが、反論する気力も出てこず、フランスに言わされるがままだ。
「じゃあ日本は?」
「頼りになる親友だ。これからも大切にしていきたい」
「ふーん?」
「こんのクソ髭…後で殴る」
口だけが別人になったような感覚がすごく新鮮で、鬱陶しい。
いつまでこれが続くんだ…と思いながら、今度は確信したような目で聞いてきた。
「じゃ、今度は皆に聞こえるくらい大きな声で答えてね」
「はぁ…?」
「スペインのこと、どれくらい好き?」
ガタンッ!!と勢いよく立ち上がる。
喉から迫り上がってくる声は、留まることを知らない。
止める術などなく、フランスに言われた通り、会場中に響くくらい大きな声で叫んだ。
「スペインのことか!?そんなん世界一大好きに決まってんだろ!!!!??」
わあわあ騒いでいた会場が、一瞬にして静まり返る。
やばいと思って口を慌てて押さえたが、もう遅い。
ここにいる全員の視線が俺、そしてスペインに注がれている。
「ばっ…!!ち、ちが…!」
「い、イギリス…?」
目の前に居るスペインは、トマトと争えるぐらい顔が真っ赤に染まっていた。
多分、俺も同じくらい顔が真っ赤になっていることだろう。その証拠に、顔がめちゃくちゃ熱い。
「(お、俺は…今、何て…)」
静まり返る会場内。
全員が面食らった顔をしている。時折「すごい告白…」なんて声も聞こえてくる。
恥ずかしい。恥ずかしすぎる。日本では、こういう時に「穴があったら入りたい」と言うんだったか。なんて、どうでもいい思考が頭を巡る。
本人も外野も何も言わない沈黙状態を最初に破ったのは、スペインだった。
「い、イギリス…あ、あのな…?も、もう一回言ってくれへん…? 」
「だから世界一大好きだっつってんだろ」
だめだ。もう無理だ。
「き、きき、聞き間違いやないやんな…さっき、す、すす好きって言ったやんな… 」
「好きじゃねぇ、世界一大好きって言ったんだ」
会場内に悲鳴に近い歓声があがる。
俺だけが恥ずかしい思いをしてたまるものかと、なけなしの思考回路を必死に働かせてスペインに言った。
「スペインは俺のことどう思ってるんだよ。俺のこと…嫌いか?」
「…!!」
突然むっとした顔になるスペイン。
何を言い出すのかと思ったら、俺の肩を思いっきり掴んで俺と同じくらいの声量で叫んだ。
「嫌いな訳あるかアホぉ!!!俺だってイギリスのこと世界一好きや!!なんなら、お前より好きや!!!!」
「………」
至近距離でとんでもないことを言われ、いよいよ倒れそうになる。
俺の耳が正しければ、「お前が好きだ」と言ったはずだ。「世界一」という言葉も添えて。
歓声やはやし立てる声で止まない外野の中の一人…フランスが気持ち悪いぐらい清々しい笑顔を浮かべて、俺とスペインの間に入ってきた。
「いやぁ〜スッキリした!やっと素直になったねお前ら。ほんとお兄さん嬉しいよ!」
「あぁ!?」
「いくら言ってもだめだったから、日本とかプロイセンと協力して、お前ん家にあった素直になる薬をこっそりお茶に入れたんだよね」
「え?あ、あれか!?あのお茶か!?」
「そそ。俺とかプロイセンが出すと怪しまれるから、日本に協力してもらってね」
「…………」
今フランスが言っていることが正しければ、今までの口だけが別人になったような感覚にも頷ける。
会議後からやけに本心を言いまくっていたことにも納得ができる。
「なんっか変な感じしたの、その薬のせいやったんか!」
「どうりで今日、色んなことがするする口から出てくる訳や… 」
「そういうこと。ま、という訳で、ネタばらしも済んだことだし…」
「後は二人で仲良く部屋でイチャついてね☆」
「「え?/は?」」
ばちんとウインクをすると、「さ、他の皆は飲み直そ〜」とか何とか言っている。
「ほら!早く部屋に戻るんだぞ!」
「アメリカ!?」
「スペインさんと改めてお話したらいかがですか?」
「日本まで…!!」
顔の熱さは未だ引く気配がない。
呆然と立ち尽くしていると、ふいにぐい、と袖を引かれた。
「……イギリス。ちょぉ、俺の部屋で話そうや… 」
「す、スペイン…」
スペインもまた、頬の赤みは引く気配がない。
好きな人に頼まれれば、断れる訳ないじゃないか。
「…悪い。今日はここで…」
「はい。ごゆっくり」
「いってらっしゃいなんだぞ!」
二人に見送られながら、スペインと騒がしい会場を出ていった。
ガチャッ
袖を引っ張られるがまま、ホテルのスペインに宛てがわれた部屋に入る。
宛てがわれた部屋は、偶然か、わざとか、まあわざとなのだろうが、俺の隣の部屋だった。
靴を脱ぐため、一旦スペインから袖を離すようにうながすと、素直に手が離れた。
脱ぎ終わると、また袖を掴んでくる。
「袖を掴むな。掴むならこっち」
そう言って、スペインの手を握った。
素直になる薬を飲んだおかげか、動作や言動に一切の迷いや躊躇いがなかった。
「…イギリスのあほ」
「アホで悪かったな」
アホとか言っているわりには、スペインは少し嬉しそうだ。
手を引き、ソファに誘導すると、隣にぴったりくっついて座った。
手は繋がれたまま。
「………」
「………」
沈黙が流れる。
イギリスに好きだと言われ、同じ気持ちであることがとても嬉しいのに、何故だかかける言葉が見つからない。
何から話そう。
そう悩んでいると、今度は向こうから沈黙を破ってきた。
「……スペインは、俺のこと、好きか?」
「大好きやで。世界で一番」
「…つか、素直になる薬飲んどるんやから、嘘つけへんやろ」
「ふはっ(笑)確かに」
おかしそうに笑うと、今度は俺を真っ直ぐに見つめた。
ペリドット色の美しい瞳と、それより濃いエメラルド色の瞳がお互いを見つめている。
「好き……いや、世界一大好きだ、スペイン。俺と、付き合ってください」
「……もちろんや。俺も、世界一大好きやで、イギリス」
何度目かの”世界一大好き”というセリフ。
お互いにふふっと微笑み合うと、ぽすっという音を立てて優しく押し倒された。
ずい、と互いの鼻が擦れ合うくらい近づいてくる。
「スペイン…好きだよ」
「俺もや」
「スペイン……」
ちゅっ
「ん…っ…♡」
ちゅっ ちゅっ
「んん…♡」
互いの唇を何度も角度を変えて重ね合わせる。お互いの欲をぶつけ合うようにするキスは、少し乱暴で、それでいて、とても優しく、甘いキスだった。
「スペイン…口を開けろ」
「ん…♡」
ぐちゅっ♡ じゅっ じゅっ…♡
「ふぁ♡♡あぅ♡♡」
気持ちいい。”キスが上手い国”という肩書きは伊達ではないようだ。
じゅぅ…♡♡ぐちゅっ♡♡ぬる…♡♡
「は、ぁ♡♡ッ〜〜♡♡」
「好きだ…スペイン…」
「はぅ♡♡イギリスっ…♡」
耳元で直に囁かれる吐息が堪らない。
イギリスの背中に腕を回すと、更にせがむ。
「キス、もっとしたってぇ…♡」
「ん、」
二人の甘い夜は、日付がとっくに変わった頃まで続いたのであった…。
コメント
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クゥゥヴゥゥ…ハアァァ꒰ঌ( ˘꒳˘ )໒꒱(尊死)
喧嘩ップルが大大大好き~!!! ツンデレの人達が付き合うまで ほんとうに面倒くさそう...😇 妖精さんとぽんさん達本当にナイスプレー👍 そこでほぁたしない英さんは 紳士だなぁと思いました🎩
書き忘れた豆知識 イギリスの家にあった素直になる薬は、ツンデレすぎるイギリスを見かねた妖精さん達がイタズラで置いた薬です。いやぁ、ナイスプレーですね〜