テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
67
プレイボーイ…。
直訳すれば遊ぶ男の子。
プレイボーイが運命の人だなんて、信じるもんか!
放課後…私は一人だった。
佐織は部活があるという。信子は彼氏の誕生日らしく、今日は一緒に帰るそうだ。
「…独り者はつらいなぁ…。」
ボソッと独り言。まぁ、佐織は彼氏いないけどさ。
私は一人が好きだけど嫌いだ。
一人は気楽だけど、やっぱり寂しい。話し相手が欲しかった。
「あ…おい、アンタ!」
後ろから男の人の声がして、振り向いた。もしかして…ナンパ?するとそこには…
「あ…プ…。」
清春が立っていたのだ。ついプレイボーイと言いかけた。危ない危ない…。
「プ…?」
「あ、気にしないで…、松本君。」
「あ、清春で良いよ。…長いからみんなキヨって言うけど。」
「じゃあキヨで良い?私も呼び捨てで良いよ。伊夜っていうの。」
「伊夜…変わった名前だな。」
「…そうかな…。あ、帰り?」
「うん…伊夜も?」
「…うん。」
…なぜか沈黙。
ま…今日改めてお互いの素性を知ったわけだし…一緒に帰ろうとか言えないなぁ…。
そんなことを思っていたら、キヨが話しかけてきた。
「なぁ、土曜日のミサンガ、弁償するよ。いくら?」
「えっ…ホントにもういいよ…。気にしないで。ボタンに引っかけたのは私なんだし…。」
「ふぅん…あっそ…ならさ…」
そう言いながらキヨが顔を近づけてきた。
「オレと付き合わない?伊夜…」
耳元でささやかれた。…マズい…力ぬける…。
「なっ…何言い出すのよ!っていうか、今日はじめて誰か分かったような人と付き合わないわよ。」
「何?動揺してんの?伊夜って男知らないんだろ。真っ赤になってムキになって…。」
クスッと笑うキヨ。カチンときた。
「はぁ?何言ってんのよ。私はキヨみたいに軽そうな男はイヤなの。」
「軽そう…ね。ま、そうかもね。」
「…自覚してるなんて…タチ悪っ!」
「オレと付き合っても、1週間しか一緒にいないよ。」
…噂はホントらしい。
「最低…。好きだから付き合ってるんでしょ。なのにそんなすぐに別れるの?」
「伊夜は純情だねぇ。」
また笑うキヨ…。
「…みんなそうなんじゃないの?」
「悪いけど違うよ。少なくてもオレは。付き合ってた中には何人か居たけどね。しつこかったヤツ。こっちは別れるって言ってんのに、ずっとその気でいんだよ。笑っちゃうね。」
そう言ってまた乾いた笑い。
「…それ…本気で言ってんの?」
「当たり前だろ。そもそも男と女が付き合うなんて本能だろ。誰だって持ってる。普段は理性だとか世間だとかに抑えられてたって、所詮人間は人間。それくらいにしか思ってないよ。」
なにそれ…そんなのおかしいよ。絶対変。
「…最悪…。ドキドキしないの?好きで好きでたまらないとか…思ったことないの?」
「ないね。恋も愛もない。根本は本能の問題。最終的には人間っていう種族を生き残らせるためのモノだろ。」
すらすらと言うキヨ。
「信じない。そんなの。少なくても私は違う。」
「じゃあ伊夜は運命とか信じるの?純愛はあると思う?」
「思う。」
「ははは。どこまでも夢見る女の子だな。男はほとんどなぁ、女は自分の欲求を満たすためのモノだとしか思ってないよ。そもそも女とは作りが違うんだ。」
「…じゃあ…キヨも女の子の事…そんな風にしか思ってないの?」
「当たり前だ。それに、付き合うなんてめんどくさい。オレは最小限の事ができればそれで良いんだけど。」
「最小限…。」
「してやろうか?」
なっ…。どこまでバカにする気!
「ふざけないでよ。」
なんだか、腹を立てるのがバカバカしくなった。
「はははっ。ホントに免疫無いんだなぁ。ある意味伊夜みたいな子も好きだけど。」
「私はキライ。」
私はキヨから目を離した。見たくもない。
すると、急にキヨは私の手首の辺りをつかんだ。
「いたっ…何するのよ…」
「女ってさ、不便だよね。力で男に勝てないもんね。」
…すごい力…ふりほどけない…。
すると、キヨは急に手を離した。
「やめたっ。キスの一つでもしてやろうかと思ったけど、オレは嫌がる女をいたぶる趣味無いし。」
…ドキドキしてる…。ホントに免疫無いんだ…私…キスって言葉にドキドキしてる…。
黙って背中を向ける私に、キヨは聞いた。
「男、幻滅した?でも、事実だから。伊夜には悪いけど。」
その時、私は自分でもびっくりする事を言っていた。
「キヨ、付き合おう。」
「はぁ?今、なんつった?」
私は向き直ってキッとキヨを睨むように見た。
「キヨ、私と付き合いたいんでしょ。付き合おう。私がキヨを変えてあげる。」
「伊夜さ、何言ってんの?」
「ドキドキしない恋なんてホントの恋じゃないよ。私とホントの恋しよう。私がキヨをそうさせてみせるから。」
「へぇ。オレを変える…。ホントにできるの?」
「する。1週間しか持たない付き合いなんかじゃない。土曜日の出会いが運命だって言うならそうかもしれない。」
「運命ねぇ。ホントに伊夜にできるの?男と付き合ったこと無いんだろ。」
「その方がかえって都合良いじゃない。」
「はははっ。ま、オレは良いけど。退屈しないですみそうだし。ただし、」
「オレが伊夜に飽きたらその時点で別れる。良いな。」
「良いわ。」
「よし、じゃあ、ま、よろしく。」
そう言ってキヨは帰って行った。
…キヨが見えなくなったら、急に全身の力が抜けてきた。
…ドキドキした…心臓の鼓動がありえない。
男の子って…あんなに力強いんだ…。声、低いんだ…。
知ってるはずの事が一つ一つ新鮮で、鮮明に残っている。
はっきり言って、自信は無い。
キヨを変える…なんて大きな事を言い切ったけど…確かにキヨの言うとおり、私は男を知らない。
でも、だからこそできることがあるはずだ。
理想とは違ったけど、私は男の子と付き合う。これは事実じゃん。…それに…
私、自分で言っておきながらキヨの事、本当に好きになったみたいだ。今日改めて知ったばかりのはずだけど。
私のドキドキなんて、キヨは分からないだろう。
なんとも思わないかもしれない。
でも、今はそれで良い。これからキヨにドキドキしてもらうんだ。
わたしの顔と同じぐらい赤い夕焼けを見て、私はそんな事を思っていた。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!