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それから何日かが経った。家に篭れば誰からも何も言われない。そんな甘い考えが私の頭を溶かす。
ああ、なんて幸せなんだろう
私は初めて幸せだと思えた。相変わらずキッチンには手をつけていない。そろそろキッチンに行ってみても大丈夫だと自信がついた頃、外から叫び声が聞こえた。
「キャァァァァ!!アビスよ!」
いつもの私なら逃げたり、家の隅に隠れたりするだろう。でも今日は違った。咄嗟に家から出て、アビスの猛獣に立ち向かった。私は自分の神の目を信じ、アビスを倒して行った。
アビスの返り血。それは私を大きく変えた。
アビスの爪が私の頬を切った。それは普通の怪我とは違った。頬の傷からアビスの“力”が入り、私に秘めている“大きな力”を蝕んだ。
「はーッ…はーッ….」
私はそれでもやり遂げた。この騒動を聞きつけ、ムアラニちゃんとキィニチがやって来た。その時、私は我に帰った。
「だッ..大丈夫ですか!?」
私は手を伸ばし、庇っていた女性に聞いた。
「ヒッ..!嫌だ!こっちに来るなァァ!!」
「……..え..?」
「この“アビス”め!まだ私を襲おうとするの!?あったへ行って!この薄汚い化け物!」
私に言っている訳ではない。きっと先程のショックでこうなっただけ…私じゃない私じゃない..!そんな思いを踏み躙る様にまだ女性は私を罵倒した。
私は咄嗟にムアラニちゃんとキィニチがいる方を見た。でもそこにいたのは私の母や女の子,私に関わっていた知り合いだった。
『まだ人を不幸にするの?』『私達と同じ“人”なんて思いたくないよ』『貴方は“悪”なのよ』『いい加減自分の立場に気づいたら?』そんな言葉と言う刃で私の心はガラス瓶の様に割れた。
「皆んなが私を“悪”だと言うなら..!正真正銘の悪に…なってやる!!」
私の片目がアビスの力によって血に満ちた瞬間だった。