テラーノベル
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「正真正銘…悪になってやる!!」
それはあんな状況で言える言葉ではあった。
ルシーカの白髪の髪にアビスと返り血がまるで雨を浴びた様に付いていた。
「フッ..あははははははははははははは!!」
ルシーカは空を見上げ、今までに無いくらい幸せそうに笑った。俺の目には過去の自分が映った。過去の自分とルシーカが重なり、やがてそれは黒くなっていった。それは思い込みだと思っていたが本当にルシーカから黒い影が出ていた。
影はルシーカを包み込んだ。俺は躊躇う事なく影へ飛び込んだ。
『お兄さん。』
「あ…え?」
急に幼い子供に袖を捕まれ戸惑った 。俺は確かにルシーカを追って来たはずだ。でもこの子の純粋な瞳に抗えなかった。この子はルシーカに似ていた。
『私を..助けてくれますか?』
笑顔のまま俺に問うた。考える暇もなく景色が変わり気づくとルシーカの家にいた。でもそこはもっと新しかった。
『このバケモノ!』
そんな言葉が部屋に響いた。きっとルシーカの母だろう。止めようとして触れると体をすり抜けたしまった。
『ごめんなさい..!ごめんなさい..!』
ルシーカは悪くないのに謝った。
『もういい!近寄ってくるな!』
母はルシーカを殴り終わると部屋を出て行った。
「大丈夫か?」
俺は幼いルシーカに聞いた。きっと聞こえないだろう。諦めていたが放っては駄目だと思った。
『お兄さん..“助けて”』
涙を流しながら幼いルシーカは言った。この声を聞くだけで心が痛んだ。
『お母さんの事..好きなはずなのに怖いのッ!私、知ってるよ。本当に好いてくるお母さんは娘に向かって“バケモノ”なんて言わないって。』
ルシーカは度々母の話を楽しそうに話していたのを思い出した。果たしてそれは本当に楽しそうだったのか。きっと母の事を“好きだ”と自分に言い聞かせたのだろう。他の人は生きているだけで母から当たり前の様に愛されていると思うと生きてなんていられない。
『ねぇお兄さん…未来の私を助けてあげて。』
思いがけない言葉に耳を疑った。
「それどう言う意____」
黒い影が俺を包み込む。幼いルシーカが段々見えなくなった行ったが幼いルシーカは手を振った。
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