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このタルトはとんでもなく旨い
もう一個食べてもいいと彼女がくれたので、遠慮など知らずに、あっと言う間に洋平は彼女のラブベリータルトを2個平らげた
そして差し出された500㍉のお茶も、ガブガブ飲んでしまった
「私も嫌な事があったり、落ち込んだりしたらこのタルトを沢山買って、爆食いするの!ラズベリーは疲労回復にいいんですって!」
彼女の笑顔を見て洋平の胸は熱くなった
「そ・・・それは・・いいね・・・」
他に言葉を思いつかなかったのでそう言うと
「いっけない!もうお昼休みが終わっちゃう!会社に戻らなきゃ!」
「ええ?君お昼休みだったの?もう夕方だよ?こんな時間に? 」
「今日は忙しくてついランチを食べ損ねちゃったのよね~」
あっけらかんと言う彼女を見て洋平は焦った
どうしよう彼女の昼メシを全部食ってしまった
「私もてっきりあなたが自殺すると思いこんじゃって、ついついお説教しちゃってごめんなさいね!それじゃ!」
「あっ・・・ちょっとっ!」
そう言うと彼女はスクッと立ち上がって、向きを変えて去って行った
パタパタと走って行く彼女の後姿
風なびく茶色い髪は、まるで金色の光を浴びているようだ、フワフワの小動物のようなマフラーに、コートの袖にも、同じようなファーが付いている
お嬢様らしい清楚な服装が、彼女の可憐さを引き立てている
まるで時間が止まったかのような感覚に包まれる、彼女の言葉が洋平の心に深く刻まれたようだ
暫くしてなんだかじっとしていられず、洋平もスタスタ歩き出した
胸の中の緊迫感で呼吸するのが辛く感じた、しかし頭の中はぐちゃぐちゃだった
悟り、衝撃、―そして希望・・・洋平はいつまでも歩きつづけた
道行く車がすぐ傍を風を切って走って行く
通り雨が来たものの、濡れているうちに空は晴れた
ボソッ・・・「結論とは・・・考えることを諦めた地点に過ぎない・・・」
彼女の影響か、ふいに松下幸之助の言葉が心の中に浮かんだ
家に帰り、久しぶりにデスクトップの前に座り電源を付けた
ずっと彼女の言葉が頭の中をぐるぐるまわる
―それは本当にもう一度出来ないの?―
・:.。.・:.。.
もう洋平は自分のすることは分かっていた、次こそは上手くやる、狡猾に、用意周到に、政府の法律の隙間をくぐるんだ
洋平の心の中に確信が生まれた
それは険しい峠から立ち昇る焚火の煙が、どこまでも高く昇るように
自分は再び仮想通貨界に舞い戻る!必ず!
その時スマートフォンがけたたましく鳴った
『洋平さん!洋平さん!ああっっやっとつながった!!いったい今までどこにいたんですかっっ!!』
久しぶりに松田の声を聞いて洋平は心が痛んだ
もう一度、彼らと一緒に仮想通貨界に戻りたいがそれは洋平一人が決意したこと
彼らまでは巻き込めない、これは大変なリスクが伴う事だ
「あの・・・松田君・・・」
『大変なんですっっ!ああっもう、説明は後でしますから!とにかく僕の事務所に来てください!荒元もいますから!』
・:.。.・:.。.
洋平はつい最近松田が立ち上げたと言う、彼の小さな事務所にあるパソコンの画面を凝視し、目を疑った
洋平が作った「ラビットコイン」のチャートが鮮やかな緑色の上昇カーブを描いている
彼の手が震え、マウスをクリックする音が静かな部屋に響いた
「ど・・・どういうことだ・・・」
洋平は呟いた
「ラビットコインは・・・通貨リセットで消滅したはずなのに・・・」
洋平の脳裏に、数ヶ月前の悪夢のような光景が蘇る開発したラビットコインの価格が急落し、すべてが水泡に帰した瞬間・・・・
しかし今、目の前の画面は別の現実を示していた、松田が叫ぶ
「見てくださいよ!数日前から誰かが大量に買い込んでいるんですよ!」
松田の興奮した声が事務所に響き渡る
「信じられねぇよ!ラビットコイン復活してるんですよ!」
今度は荒元が叫ぶ
「何が起きてるんだ?復活してる!ラビットコイン!復活してるぞ!」
こんなことは信じられない、何かの間違いかもしれない
しかし間違いではなく目の前のチャートはどんどん上昇していく
三人は興奮のあまり、言葉を詰まらせながら状況を確認し合った
誰かが大量にラビットコインを購入している・・・・
それも、とんでもない額だ・・・・
「こ・・・こんなことするのは・・・誰だ?」
「な・・・何かの罠かな?」
脚が震える・・・・
外資かな?・・
でもいったい・・・・
そして、ついにその瞬間が訪れた、ラビットコインはまるでロケット発射のような
上昇を起こしついにストップ高!
さらに午後のニュースサイトのトップに躍り出た見出しが三人の目に飛び込んできた
三人全員が唖然と大きく口を開けた
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世界のトップ大富豪『ハーロン・マスク』氏、日本が開発した仮想通貨ミームコイン『ラビットコイン』1600億円相当の追加購入を発表
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「なんだって!!」
「おい!こっちのニュースサイト見ろよ!」
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ハーロン・マスク氏の発表を見て、アメリカ一の投資会社「ブラウン・ロック社」がラビットコイン「フル保有」を発表
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「信じられない!」
「ハーロン・マスクが?どうしてこんなことに!!」
「ブラック・ロックだって!」
「まって!MAXの投稿を見て!」
ガバッと三人がハーロン・マスクがCEOの世界一のSNSサイト『MAX』で投稿している内容を食い入る様に見る
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2021年に日本の若者エンジニア達が開発した「ラビットコイン」は、仮想通貨界だけではなく、新しく世界に貨幣通貨価値を見出すであろう、一部の保守派による連中の意向で潰してしまうのには、あまりにも惜しいミームコインである
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さらにさらに松田が自分のスマートフォンを見て
「ギャー――――ッ!」と殺される勢いで叫んだ
「なんだ!」
「どうした!」
「ハーロン・マスクからDMきたーーーーー!」
「ええっーーー?」
「何て言ってるんだ!!」
「見せろッッ!」
泡を吹いて、倒れそうになっている松田を二人が後ろからささえ、スマホを持っている手首を持って画面を見る
―君たちは日本の未来だ―ハーロン・マスク
・:.。.・:.。.
ギャー!ギャー!
「うぉーーーーーー!」
「すげーーーーーー!」
「ラビットコインが復活したぞぉ~」
「信じられない!分かってくれてるんだよ!」
「ラビットコイン公式にこのメッセージあげろ!!」
「ハーロンにお礼のメッセージを1分以内に返せっ」
「即リプでないと彼は読まないぞっ!」
「待てっ!彼は長文を嫌う!一言でいいぞ、長々とは書くな!」
「短くてセンスが光るメッセージを1分以内に送れっ!でないとせっかくの興味を無くされるぞ」
「リプライのハードルが高すぎるよっ!」(※リプライ→返事)
「えげつないバックが付いたぞーーー!」
「ラビットコインが復活したぞーー!」
洋平の目に涙が溢れた。松田も、荒元も同じだった、彼らの夢と努力が突如として報われた瞬間、温かい感情が込み上げ、三人は声にならない歓喜の叫びを上げた
グスッ・・・「やった・・・やったんだ・・・」
洋平は溢れる涙を拭い、震える声で呟いた。松田と荒元の嗚咽が聞こえる
三人は言葉を交わすことなく、ただ涙を流し続けた
喜びと安堵が入り混じった温かな涙が頬を伝う
ラビットコインの復活・・・・
それは洋平達にとって、単なる経済的成功以上の意味を持っていた
失われたと思われた希望が、再び彼らの人生に光をもたらしたのだ
洋平は走馬灯のように今日一日起こった事を思い出した
天使のような可愛い女の子に、自殺と間違われてタックルされた
その後、ずっと避けてた仮想通界にもう一度戻ろうと決意した
そしてラビットコインは復活し
しかもとんでもないムーブメントを起こして
もう一度洋平は涙を拭って一言呟いた
「奇跡って・・・本当にあるんだな」
・:.。.・:.。.
・:.。.・:.。