テラーノベル
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⚠️domsubユニバース、二重人格
二人は同居していてすでにパートナーの状態です。(一応原作軸)
かわいそうな表現を多く含みます。
時間軸の移り変わりが激しいのでご注意ください。
一補足ー
語尾がアルファベットで終わっているのは誤字脱字でなく、話してる途中で遮られてしまったことを表す意です。
思えば随分前から二郎はおかしかった。
話しかけても返事がなかったり、酷い耳鳴りや頭痛がすると二郎はよく言っていた。
きっとあれは本人も気づかないうちに体が出していたSOSサインだったのだろう。
あの時、あの時自分が気づいていれば…そう何度思っただろうか。
ー3ヶ月前ー
仕事を終え夜も深まった頃、やっと家に帰ることができた俺。
その携帯に一本の着信が入っていた。 ぱっとスマホの画面を確認すると二郎からである。
今日は休みのはずなのに家にいないことを不審に思ってはいたがこんな時間にどうしたのだろうか。
そう思いすぐに電話をとった。
紅林「悪い、仕事中だったか?」
久我「いや今家に着いたところだが、どうした?」
紅林「俺も夕方くらいまで家にいたんだが気づいたら知らない場所にいてよ。金もほとんど持ってなくて…悪いが迎えに来てくれねぇか?」
申し訳なさそうな声が電話口から聞こえる。
しゃーねえなと小さくため息をついて、今どこにいると聞き返すと、紅林は辿々しく自分が今いる駅の名を読み上げた。
聞き馴染みのない駅名だったのでスマホで地図を開いて検索すると、なんとマップは隣の県の山奥の駅を指していた。
久我「っはあ!? お前、なんでこんなとこに居んだよ!」
紅林「ごめん、本当に覚えてなくて…。やっぱ線路沿い歩くわ。悪かったな、疲れてんのに電話かけちまって。」
久我「何言ってんだ!今すぐ迎えに行くからベンチにでも座って待ってろ。危ねえから動き回んなよ!」
そう言って電話を切り、脱いだばかりのコートを羽織って財布をポケットに突っ込んだ。
終電なんてもうとっくにないだろう、仕方がないのでバイクに跨ってエンジンを吹かした。
久我「おい二郎!大丈夫だったか?」
古びたベンチに座っている赤髪を発見して慌てて駆け寄ると、二郎はゆっくりと顔を上げた。
紅林「虎徹…。」
久我「ったくお前どうしちまったんだ。こんな時間にハイキングっつうなら笑えないぞ」
紅林「すまねぇ、 ありがとうな。」
俺の冗談に反応しないなんてよほど落ち込んでいるとみえる。
ふと紅林の服装に目をやると、もう冬だというのにシャツ一枚という薄着である。
自分のコートを無理やり羽織らせてバイクの後ろに乗らせた。
久我「最近お前おかしいぞ、ちゃんと寝れてるか?」
紅林「頭の中で声がするんだ。俺のような俺じゃねえような、そんな声で。」
久我「疲れてんじゃねぇのか?インフルって嘘ついて1週間ぐらい休み取れよ。」
紅林「それだと周りに迷惑かけちm」
久我「自分の体を一番に大事にしてやれよ。」
二郎の言葉を遮ってそのまま話を続けた。
久我「お前が心配なんだよ、そんぐらい分かれや…」
憎まれ口を叩くようにそう言うと、二郎は俺を後ろから優しく抱きしめ再度ありがとうと呟いた。
それから二郎は俺の言った通りに1週間の休みを取ることになった。
俺も何日か有休を取って、一緒に借りてきた映画をみたりしてゆっくり過ごしている。
二郎は教師として昼に働き、俺は極道として夜に見回りをすることが多いもんだから、こうして顔を合わせて3食一緒に食べるのも随分久しぶりだ。
俺は二郎と違ってあんまり料理が得意でないのだが、二郎はどんな料理も美味しそうに食べてくれるので作り甲斐がある。
今日もキッチンに立って野菜を切っていると、紅林が近づいてきて俺のまとめられた後ろ髪を撫でた。
久我「っあ、もーゆっくりしてろって言っただろ?」
紅林「手危ないぞ。ほらこっち、猫の手にして」
もう付き合い始めて結構経つが、この距離感にはいまだに慣れない。
まあ二郎は俺の緊張になんて気づきすらしていないんだろうが。
久我「(新婚みてえでドキドキしちまう…///)」
紅林「ほら、カボチャはこうやって切るんだよ」
俺の手に自分の手を重ねるようにして包丁を握る二郎。
そのままゆっくり包丁に力を込めた。
スパッ パタタッ
久我「い゛っ⁉︎」
切られたのはカボチャでなく俺の手だった。
手の甲を赤い鮮血が伝い、まな板の上にぼたぼたと垂れる。
久我「っ、二郎?」
紅林「…。」
久我「二郎!聞いてんのか?」
反応がない。
肘で押し除けて肩を揺すると二郎はハッとした顔で俺を見た。
紅林「え、あ、こてつ…っその傷、お、俺が?」
青い顔で俺の手の傷を見ている二郎にお前のせいだとは言えなかった。
それでも二郎は堰を切ったようにごめん、ごめんと繰り返す。
慌てて救急箱を持ってきて、震える手で包帯を俺の手に巻いてくれた。
傷はなかなか深かったものの、幸い骨や腱に異常はなかったようで日常生活に支障はなかった。
なんとなく気まずい空気のまま夕食を終え、夜更かしは体に悪いぞと未だ落ち込んだままの二郎を半ば無理やりベッドに寝かせた。
少しだけ組から持ち帰った事務作業をこなして俺も早めに寝ることにした。
寝ている紅林を起こさないようにそっと寝室のドアを開けると二郎は暗闇の中で体を起こしていた。
久我「二郎、寝れないのか?」
そう聞くが二郎は申し訳なさそうに俯いたままだ。
ベッドの淵に腰掛けて、そっと二郎の頭を撫でる。
そのまま顔にかかった髪をそっと手で耳にかけてやると、眼球だけを動かしてこちらを見ている二郎と目が合った。
落ち込んだような、気力のないような目ではない。
瞳孔が開き切っている。その上瞬きひとつしていないのだ。
このまま狩られてしまうのではないかというような得体の知れない恐怖感に思わず半歩身を引いてしまった。
そんな俺の考えとは裏腹に二郎は優しい手つきで俺の手を取り、巻かれた包帯をゆっくりと外していく。
久我「交換、してくれるのか?」
露わになった傷を指の腹でそっと撫でる二郎。
久我「大丈夫、痛くねぇよ。俺包帯とってくる。」
そう言って立ちあがろうとした瞬間だった。
グジュッ
久我「っ⁉︎⁉︎ ぐぅっ、な、にして、二郎?」
まだ新しい傷痕に爪を立てた親指を捩じ込まれ、思わず苦痛に満ちた声が溢れる。
抵抗しようにも恐怖で体はうまく動かない。
二郎はさらに指を進めていく。
グジュ…ガリッ メリメリッ
傷を広げるようにして割れ目を裂かれる。 痛いなんてもんじゃない。
傷口からは血がしとどに流れ、肉の割れ目から骨が顔を覗かせている。
久我「い゛っ、あぁっ、やめろ、やめろって…‼︎」
やっと動くようになった身体で二郎の顔を殴りつけ、ドアの方まで後退した。
痛みに顔を歪め俺の手を離した二郎。 口内を噛んだらしく、口から血が滴っている。
久我「っはあ、はぁっ、お前っ、正気じゃねえよ!っ どうしちまったんだ…!」
俺の言葉に返事をせずに二郎はゆらりと立ち上がり、獲物を見るような目でこちらを見据えている。
紅林「Kneel」
久我「ぁ…⁉︎」 ペタンッ
力が抜けたように膝から崩れ落ちる俺の身体。
久我「(コマンドっ…はぁっ、体が言うことを聞かねえっ)」
紅林「Come」
久我「ぅ…っやめろ!なんでいきなりそんなことしやがんd」
紅林「久我、Comeだ。」
久我「ぐっ、お前二郎じゃねえな。だったらお前に従う義理がどこにあるってんだ!」
紅林「、、、チッ」
久我「かひゅっ…‼︎」
強いGlareに息が詰まるような感覚に陥る。
心臓が不規則に鼓動し、視界が揺らぐ。
開いた傷口からどんどん体温が抜けるように体が冷たくなっていく。
紅林「はぁ、何度も言わせんなよ。Come」
久我「かはっ、うっぐ、あ、ぁ…」
震える足のせいで立つこともままならない。
足を引き摺るようにしてなんとか紅林の元まで床を這った。
紅林「反抗的な目だな。まだGlare喰らい足りねえか。」
久我「ぐ…ぁ、や、やめろ、やめ…っ」
紅林「大人しく”二郎の命令”に従っとけよ。伏せろ。忘れたか?subdropの感覚を。」
久我「っ…‼︎」
少しずつ恐怖に心が蝕まれていく。抵抗の意思さえも削がれていく。
怖い、怖い怖い怖い。はやく、早く従わないと、早く早く早く早く早く早く。
紅林「いや、忘れられる訳ねえよなぁ?あん時救ってやったのは俺なんだからよ。」
そうだ、忘れられるはずが ない。あの時俺は二郎に救われた。
ーまさにちょうど3年前、凍てつくような寒さのあの日に。
第二話に続きます。
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