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同じ頃 時空屋司の間
東京サイケデリッククリエイターズの懇談会を終えた韓洋と上念は、安座間を交えて酒を酌み交わしていた。

布施は和室入り口で立ち尽くしたまま、その光景を眺めていた。

上念がお猪口の酒を飲み干して言った。


「今ははあまり言わなくなりましたね、辛口冷淡。昔ながらの日本酒の味ですよ」


韓洋はその言葉を聞いて笑った。


「君の身なりでサケを論ずるとは、実に愉快だし似合わないね、純粋な日本人は安座間君と布施だけか…」


布施は表情を変えずに、ちらりと安座間に目を向けると、安座間はペコペコと頭を動かしながら愛想笑いを浮かべた。

更に韓洋が続けた。


「それにしても安座間君、君の誘導はお見事!羽田の件にしても鷹野君ににしても、実に見事な誘導だ。さすがは管制官だな」


安座間は、酒を勧められるまま飲み干しては『ありがとうございます』と何度も頭を下げた。

上念は、羽田空港でアメリカ合衆国空中司令機を誘導していた安座間の存在には無関心だった。

しかし、その卓越した英語の響きと、見せかけの人の良さに魅力を感じ、この団体の幹部候補生に大抜擢したのだ。

韓洋は上機嫌に。


「あの男、津田とか言っていたが…泣いておったな」あいつのおかげで、皆の忠誠心が増したって訳だよ。バカとハサミはなんとやらだな!」


安座間は、ここぞとばかりに立ち上がって、


「命を救ってくれて、ありがとうございます!」


と、おどけて見せた。

この台詞は、津田が涙ながらに韓洋に述べた感謝の言葉であった。

安座間のふざけた口調に、韓洋と上念は拍手した。

布施は表情を変えなかった。

そんなボディーガードを見ながら韓洋が呟いた。


「赤虎隊のチンピラ3人、ちゃんと処理はしたのかな?」


3人とは、地面師の井上、先崎、中原のことである。

布施が軽く頷くと、韓洋はお猪口を片手に言った。


「勝手な事しおって…上念君、稲垣さんになんか御礼しといてくれるかな?一億もあれば充分だろう」

「わかりました。それはこちらでやりますから安心して下さい。それよりも…」


上念が徳利を手に言うと、韓洋はお猪口を差し出してお酌を受けた。


「先生のこの後のご予定は?」

「明日から京都だよ。こんな物騒な街からは早く逃げ出さんと、ますます物騒になるんだろう?」


お猪口を口にしながら笑う韓洋の言葉を理解した上で、上念は意味深に言った。


「その時はまたー」


これが韓洋に向けた、最期の言葉となった。






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