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「ひぃ~!?」
「オオオ、オベリスク様!? こここ、これはこれはお体は大丈夫なのですか!?」
「フォッフォッフォ。アミド、儂が元気だと何か不都合でもあるのか? 顔に書いてあるぞ?」
オベリスク様と共に屋敷の玄関を目指して歩いているとアミドとサレドに出会う。二人とも驚いて顔を青ざめさせてる。
「めめめ、滅相もございません。お元気そうで嬉しいですよ」
「くくく、演技はもういいぞアミド。儂の町が欲しいのだろう。しかし、やらぬわ」
「ぐぬぬ」
アミドの言葉に口角をあげて答えるオベリスク様。もうどっちが悪者なのかわからない状況だな。
「サレド! この老人を殺せ!」
「あ、アミド様! そのようなこと」
「やらねば我々が王に殺されるぞ! やるしかないのだ!」
アミドが青い顔でそう言って剣を抜く。サレドは首を横に振っているけど、選択肢がないことに気が付いて兵士達を差し向けてくる。
「フォッフォッフォ。儂の兵士達はどこへ行ったんじゃ? まあいい、儂の兵士を手にかけることがなくてな」
オベリスク様はそう言って兵士を一瞥する。そして、壁に立てかけてある大きな大剣を手に取る。
オベリスク様は大きい。僕が赤ん坊というのもあるけど、ルードよりも背が高くて体格も彼よりも大きいんだ。
そんな彼と同じくらいの刀身を持つ大剣、とても綺麗で見惚れちゃう。こんな剣があったら使ってみたいな。なんて思ってみているとその大剣が光りだす。
「悪しきものを切り伏せよ! 【聖剣エクスカリバー】」
オベリスク様がそう言って大剣を横なぎに振る。
すると剣圧が光となって兵士達を吹き飛ばす。壁に傷をつけるほどの光、兵士達はその場に倒れた。
「伝説の称号を持つオベリスクを恐れぬ者は儂の前に出て見よ! フォッフォッフォ!」
なんと! オベリスク様は称号を持っているんだ。なるほどね。
ってことはあの聖剣エクスカリバーを僕が使えば同じように光が出るってことか。
「おお、恐れるな! 王に反逆するものの名だ! 正義はこちらにある!」
「面白いことを言う人ね。王があなたを支持しているってわけ?」
「妖精……と赤子。お前達が……」
アミドは諦めずに兵士へと檄を飛ばす。それでも兵士達は意気消沈。
シディーさんの声に気が付いて僕らへと視線を落とす。ずっとオベリスク様の足元に隠れていたから見えていなかったみたいだ。
僕らが彼を回復させたことに気が付いて青筋を立てて睨みつけてくる。
「赤子を狙え! 妖精は魔法に気をつけろ!」
「あらあら。人質にしようとしているみたいね」
オベリスク様を相手にしないで済むと思ったアミドが声を上げる。そして、兵士達もやる気を見せる。僕になら勝てると思っているみたいだ。
「タッタッタ~!」
「な!? 素早い!?」
ハイハイで兵士達の足元を縫うように走り回って見せる。
AGIのステータスはそんなに高くないけど、小さな赤ん坊というステータスが兵士達を油断させていた。僕を捕まえられる人はいなかったみたい。
そして、僕を捕まえられないということは魔法球にも気づかないってことだ。そうなると、結果はこうなる。
「しびれる!? ……」
雷の魔法球を転がして歩き回っていた僕は水の魔法をばらまくだけで兵士達が失神していく。案ずるな峰うちじゃ。
「な、何が起きているんだ」
「そんなことを気にしなくてもよい。お前は負けたんじゃからな」
「ぐふ……」
オベリスク様がふっとい腕でアミドの首を絞める。すぐに落ちていくアミドは泡を吹いて倒れる。
「ひぃ~~~!?」
「おっと、逃げられんよサレド司祭。このことは教会は存じておるのか?」
「きょ、教会とは別でございます! 私はアミド様に脅迫されて!」
「ほ~、美味しい蜜に誘われた無視ではないのか?」
サレドはしりもちをついて言い訳を話す。オベリスク様は楽しそうに顎を触って彼に問いかける。
「脅迫とはどういったことをいわれたんじゃ? 命か? お主に妻も子もおらんじゃろう?」
「あ、え~、その~、あの~。そそそ! そうです! 協力しないと教会をおかないぞ。と言われまして」
「お~! それは名案じゃ!」
「……え?」
オベリスク様はサレドの声に反応してポンと手を叩く。
「人の病を治せない教会などある意味がないだろう。金や権力におびえる教会もな」
「そ、そんな!? おおお、オベリスク様」
オベリスク様の言葉に恐れおののくサレド。
オベリスク様は楽しそうに笑顔のまま屋敷を出て町の教会へと歩き出す。
「オベリスク様! お体は大丈夫なのですか?」
「オベリスク様が復活なされた!」
町に出ると町の中が大騒ぎになる。オベリスク様の回復を祝ってくれる人たちでいっぱいだ。
「オベリスク様! 回復おめでとうございます。私達兵士一同は信じておりました。あなた様が床に臥すなどありえぬと!」
「おお、兵士長のロッテンか。ありがとう。早速で悪いが仕事だ。教会から人を出してくれ。解体する」
「はっ! え? 解体?」
人だかりから兵士さんが現れてロッテンと呼ばれた。彼にオベリスク様は早速命令を出して向かわせる。
教会から蜘蛛の子を散らすように人が出てくる。そして、人がいなくなるとオベリスク様が大剣を振り上げる。
「今日からクレイトンの町には教会はない。病を負ったものは儂の所に来るがいい。無料で治す!」
オベリスク様はそう言い終わると大剣を振り下ろして光の剣圧を教会にぶち当てる。その一撃はとても強い光を放って教会を消し去っていく。
「きょ!? 教会が消えた!?」
目を瞑ってしまうほどの光が消えると、そこにあったはずの教会が姿を消した。その非現実的な光景にサレドが膝を落とす。
「フォッフォッフォ! 皆の者! 祝杯じゃ! 儂の勝ちじゃ!」
オベリスク様はサレドの姿を見て声を上げる。その声に呼応するように町が声を上げる。
みんなどんちゃん騒ぎで、夜も寝ることのない町へと変わっていく。
どうやら、無事にことが済んだみたい。僕たちは回復させただけ。なんだか拍子抜けだ。