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「もっとも孔雀の事じゃないかという説もあるんだけどね」
「孔雀?……ああ、そうか、七色の羽の鳥ってことならイメージはピッタリだよね。でも邪悪な物を払う力ってのはピンと来ない気がするけど」
「孔雀ってね、優雅な見かけによらず結構獰猛なとこがあるのよ。毒蛇を襲って食べちゃう事もあるの。インドではあの猛毒のコブラでもエサにしちゃうのよ」
「げっ!コブラを食う?」
「昔は毒蛇に噛まれたらまず命はなかったの。だからその毒蛇を退治してくれる孔雀は特別な存在だったんでしょうね。それが魔を払う神聖な鳥というイメージになった。仏教でも孔雀明王という仏像があるの知ってる?」
「ああ、以前社会見学で行ったお寺にそんなのがあったような……」
「孔雀明王も魔や怨霊を退治する、いわば仏様のボディガードなの。沖縄にもハブと言う猛毒を持つ蛇がいて、昔は犠牲者も多かったのよ。だから毒蛇を退治する孔雀の話が琉球王朝に伝わってビンヌスゥイという伝説の不死鳥が生まれたという可能性はあるわ。ひょっとしたらハブ退治のために昔実際に沖縄に孔雀を輸入したなんて事もあったのかもしれないわね」
なるほど、確かに美紅の霊能力は沖縄の琉球神道とかいう宗教のイメージに沿った形で表れる物なんだな。
俺は椅子から立ち上がり美紅のそばへ行き、美紅の肩に手を置いて頼んだ。
「美紅……俺は友達を助けたい。隆平を守りたい。それにはおまえの力が要る。あの幽霊と、もう一度戦ってくれるか?」
美紅は俺の目をまっすぐに見つめ返しながら、大きく頷いた。
「それがニーニの望みなら……それに、その友達を助ける時にあれを倒す事ができたら、ニーニを守るというあたしの役目もその時点で果たせる。あれがニーニを直接襲いに来るまで待たなければならない理由はない。だから、やる!」
俺は思わず美紅の頭を胸に抱きしめた、そして涙声で言った。
「すまん!……本当にすまない……でも俺にはおまえしか頼る相手がいないんだ! こんな事を頼める相手はおまえしか……」
「をなりは、えけりを守る者。気にしないで、ニーニ。それが琉球の女として生まれた者の運命であり使命。だから、あたしはそれを果たす!」