体感二日後、七月の誕生石がやってきた。
「おっ、次の相手は蜂《はち》か。厄介だなー」
「……」
蜂《はち》はものすごく小さな声でボソボソしゃべっている。
「え、えーっと、もう少し大きな声でしゃべってくれないと聞こえないぞー」
「……」
うーん、どうしよう。会話できないから戦意があるのかどうか分からないなー。
俺がそんなことを考えていると洞窟の奥から巨大な影がこちらにやってきた。
「彼女は恥ずかしがり屋なんだ。あまり怖がらせないでくれ」
「いや、お前の方がよっぽど怖いぞ。マンモスみたいな誕生石」
「私はマンモスみたいな誕生石ではない。マンモスフェーンだ」
「ほぼ合ってるじゃないか」
「いや、全然違う。まあ、それはともかく彼女に戦意はない。だから、乱暴なことはしないでほしい」
「お前に言われなくても俺はそうするよ。ところでこの蜂《はち》の名前は何なんだ?」
「ルビーだ」
「え?」
「ルビーだ」
「ルビー、ルビーか……。あっ! なるほど! ルビーの『ビー』と蜂《はち》の『ビー』をかけてるのか!!」
「ああ」
「そうか、そうか。えっと、これからよろしくな! ルビー!」
「……よ、よろしく」
「ん? 今、よろしくって言わなかったか?」
「気のせいだ」
「いや、でも」
「よ、よろしくね、主《あるじ》」
「ああ、よろしく。ほらな、ちゃんと俺に聞こえる声で言ってるだろ」
あのルビーがこんなにも早く心を開くとは……。噂以上の人物だな、この少年。
「ああ、そうだな。だが、私は強き者《もの》にしか従わない。さぁ、私と戦え。二代目」
「別にいいけど、俺は多分お前が思ってるよりずっと強いぞ?」
「それは戦ってみなければ分からない」
「そうだな。よし、じゃあ、やるか!」
「ま、待って。私の力、使って」
「おいおい、さっき知り合ったばかりの俺なんかに力を使わせていいのか?」
「うん」
「言っておくが、俺は力加減とかお前の身の安全を保証できるほど器用なやつじゃないぞ?」
「大丈夫。私はそんなに柔《やわ》じゃないから」
「そうか。じゃあ、借りるぞ、お前の力!!」
「うん、いいよ。使って」
俺がルビーを自分の胸骨付近から体内に入れると血液と精神が浄化されたような気がした。その後、無限の生命力が俺の体内を満たした。
「な、なんだ!? これ!! すごい熱量だ!!」
「その熱は愛の炎によるものだよ。情熱的で深い愛情が常に主《あるじ》を滾《たぎ》らせてくれるよ」
「そうか。これがお前の力なんだな」
俺の体から噴出する炎は俺の心臓が動く度《たび》にその勢いを増《ま》していく。
「愛の炎は永遠に消えない。つまり、今の俺を止める術《すべ》はこの世に存在しないということだな!」
「それはちょっと大袈裟だよ」
「えー、そうかなー。まあ、いいや。それじゃあ、やるか! この、ルビー全身愛炎《フルドライブ》形態《モード》で!!」
「うん」
「来い、少年」
「そんなの、言われなくても! 分かってるよおおお!!」
少しは楽しませてくれよ! マンモスフェーン!!
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