episodeⅤ 正面衝突。
これは、希咲羅のプール突き落とされ事件の数週間前の出来事。
6月上旬、部活勧誘も終わった時期に、生徒会は必ず、部活…及び同好会の、部員数.予算表の制作を行わければならない。
私、宮白 夜月は、漸く運動部全般の調査が終わり、資料を生徒会室へと届けるため、駆け足に階段を上がっていた。
生徒会室は、旧校舎の三階にある。これは、生徒会が由緒正しく、歴史深いものであることの象徴だった。この校舎は、百何十年前と昔の生徒会も使っており、ここで仕事をする、というのは中々に誇りなこと…だと私は思っている。
まぁ、それは今回のことには関係なく…!
昼休みが終わるまで、あと5分。それまでに資料を届け、表の制作へと移らなければならない。
とにかく、時間が無いのだ。理由としては幾つかあるのだが…今更それを切り取っても仕方が無いので、今回は飲み込むことにする。
「……はぁ、… 」
ようやく3階…早く、生徒会室に…と焦りながらも角を曲がると、目の前に大きい影が現れた。
明らかに20cm…いや、なんなら30cm程は高いのでは?と思われる男子生徒に、そのまま突進してしまったのだ。
あー、これは投げ飛ばされる。終わった…と、心の中は何故か冷静で、受け身を取れるかの心配まで頭の中は進んでいた。
ぎゅ、と目を瞑り、出来るだけ飛ばされませんようにと願う。
しかし、次の瞬間、少しの衝撃が頭に掛かっただけで、特に投げ飛ばされもしなかった。
あれ…?と思いつつもゆっくりと瞼を上げると、目の前に、先程ぶつかったであろう男子生徒が数メートル先で倒れていた。
「…!?!?!?」
頭の中がはてなマークで埋もれながらも、必死にその男子生徒を起こす。
赤い髪に、左右で色の違う瞳は、脳裏に瞬時に記憶された。それほど美形で、すごく印象的で。今から思えば、これが”希咲羅”との出会いだった。
ーー
「あの…ほんとに、すいません…!!」
消毒の匂いがつん、と鼻に染みる保健室で
彼女は、土下座をしそうな勢いで謝罪した。
「大丈夫大丈夫、笑」
美夏に紹介したい人がいると呼ばれ、向かった生徒会室。
“生徒会長”である、日野 るぅあさんを紹介され、生徒会へと勧誘された。
とりあえず保留にして、その帰りに起きた衝突事故。
まさか、自分より小さい女の子(しかも後輩)に吹き飛ばされるとは思って無かったから、もっと鍛えようと覚悟したけど……。
「ぁ…、私、代わりに診察カード書きますね。名前教えてください」
「神代、希咲羅です」
「かみしろ、きさら…」
胸元まである髪を巻いて、左サイドで少しだけ結っている彼女は、僕の名前を呟きながら、診察カードに書き込んでいく。
そういえば、この人の名前はなんて言うんだろう。と少し気になったものの、もうすぐ授業が始まりそうだった。
「…はい、治療完了」
保健室の先生の治療が終わり、診察カードも書き終えたようだったので、保健室を後にした。
管理校舎(保健室のある棟)から、教室のある、本校舎までは、中庭を通る。
割りと遠めで、それまで無言の間が二人の間に過ぎる。
……なまえ、聞きたいな
でも、それを言い出す勇気は無かった。
そうしているうちに、本校舎まで着いてしまう。
「……ぁ、じゃあ、僕…2階だから」
はやく教室に戻ってしまおう、と振り返りつつも少し足を早める。
「……あの!!」
そのとき、先程の女の子の、大きい声が中庭にまで響く。
少し驚きつつも、僕は振り返った。
「…ら…LINE、交換しませんか…!?」
ーーーこうして
名前もしらない後輩と、僕の交流が始まった
(尚、後輩のLINEの名前はあだ名の様だった)
それから数日後。
師匠にプールで助けられ、
水色髪の後輩とも再開したのは
また別の、おはなし。
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再投稿。
心情や状況を深く描きました。
コメント
5件
僕…www 僕が何かを言い出す勇気ないの合ってるめっちゃ。 ノベル版もやっぱりいい。神ってる