テラーノベル
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あれから数ヶ月。
僕の家の玄関には、僕の大きな靴の隣に、少し小さくて形の綺麗な靴が並んでいる。
この光景を見るたびに、僕は心のどこかで「これは現実なんだ」と深く深呼吸をして、噛み締めるんだ。
「元貴さん、おかえりなさい! ちょうどお鍋、沸騰するところです」
リビングから聞こえてくる、僕を呼ぶ声。
かつてはスタジオや楽屋でしか聞けなかった彼女の声が、今は僕だけの城に響いている。
スタッフとして、あるいは一人の女性として、彼女は僕の生活という五線譜に、欠かせない音符(ノート)を一つずつ丁寧に書き込んでくれている。
「……ただいま、らんちゃん」
後ろからそっと腰を抱き寄せると、らんちゃんが「もう、またすぐそうやって……」と困ったように笑う。
でも、彼女の耳元が赤くなっているのを見逃さない。
本当は、一秒だって離れたくないし、スタジオに行く時だって、僕の車に乗せて、僕の隣に座らせておきたい。
事務所の人間や、現場のスタッフが「大森さん、最近さらにガードが固くなりましたね」と苦笑いしているけれど、そんなの知ったことか。
僕の宝物を、誰がどう見ようと、僕が一番近くで守ることに変わりはない。
夕食の後、ソファで並んで明日の資料をチェックする。
真剣な顔で機材のリストを見つめる彼女の横顔は、凛としていて、それでいて僕の独占欲を激しくかき乱す。
「らんちゃん。仕事の話は、あと5分で終わり」
「えっ、でも、この照明の配置が……」
「……ダメ。ここからは、僕たちの時間でしょ」
強引に資料を取り上げて、彼女の小さな手を握りしめる。
薬指でキラリと光る指輪が、彼女が僕のものであることを何度だって証明してくれる。
「……大好きだよ、らん」
彼女が照れて僕の胸に顔を埋めるまで、僕は何度だってその言葉を囁き続ける。
僕の愛は、君が思っているよりずっと深くて、重い。
それを一生かけて分からせてあげるのが、僕のこれからの「最高の仕事」なんだ。
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少しだけ続けて終わりにします
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