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「んぁあっ……! L……深いっ……あっ、あっ、あぁっ……!」 これは──僕とBが、手錠で繋がれた物語。
「はぁ……B、すごいです。こんなに濡れて……私の形に、完全に変わっていますよ」
「ちがっ……ちがう……こんなの……Lのせいだっ……あっ、そこっ……! だめっ、そこばっか……!」
僕を監視するために掛けられたはずの鎖は、いつしか、誰かの心を縛るものへと変わっていく。
「アアッ……!! ひぐっ……! 死ぬっ……本当に死ぬっ……L……!」
「死にませんよ。Bは、私に抱かれているだけでイってしまうくらい、弱いんですから」
これは、僕を縛る鎖なのか。
それとも──LとB、二人を繋ぎ止める鎖なのか。
「んあっ、あっ、あっ、Lっ……早いっ……深いっ……壊れちゃうっ……!」
正義と罪。
執着と救済。
交わるはずのなかった三人の想いは、手錠という一本の鎖によって、歪な三角形を描き始める。
「んぁあっ……! またイクっ……L、Lっ……イクっ──!」
誰かを守るために繋ぐのか。
誰かを失わないために縛るのか。
鎖が外れたその時、最後に残るのは──愛か、罪か。
【Lの代わりにBBが夜神月と手錠生活をする話 -リライト版-】
竜崎との手錠生活が始まって、約一週間。
新たなキラが捕まるまでの辛抱──そう自分に言い聞かせてきたが、そろそろ体力も精神も限界だった。
世界一の名探偵と四六時中繋がれ、常に観察される生活。睡眠も、食事も、着替えも、風呂も、すべて視線付きだ。監視されているというプレッシャーと屈辱に、毎日魘される日々。
それだけでもしんどいというのに、こいつときたら私生活もままならない。時折僕が世話してやらないと着替えも出来ない。監視役のくせにこっちが世話までさせられるとは、笑えない。
手間も世話も増えて、そろそろ僕の精神は崩壊寸前だ……。
「……はぁ」
何度目か分からない溜め息をつくと、竜崎は積み上げた角砂糖を一つ摘み、そのまま口へ放り込んだ。
「お疲れのようですね、月くん」
「……当たり前だろ」
頭を抱え、机に肘をつく。
「毎日毎日、監視され続けて、こんな手錠まで付けられて……精神がもつ方がおかしい」
もう嫌だ。
そう口にしかけて、飲み込む。
こんな弱音をLの前で吐くのは癪だった。
しかしLは僕の表情を見て何か察したらしい。指を咥えたまま少し考え込み、口を開いた。
「……私に監視されるのが苦痛ですか?」
「苦痛だよ」
即答。
「世界一の名探偵に二十四時間見張られてみろ。普通の神経なら、とっくに参る」
すると竜崎は、珍しく少しだけ肩を落とした。
「……では、私ではなければ、少しは楽になりますか」
──その一言で、止まりかけていた思考が一気に動き出した。
監視役が変わる?
Lじゃなくなる?
それだけで、どれだけ気が楽になることか。
「ああ」
思わず前のめりになる。
「そうしてくれるなら助かる」
Lは複雑そうな顔で小さく頷いた。
「私の知り合いにお願いしましょう」
「知り合い?」
嫌な予感しかしない。
Lの知り合いだ。まともな人間である可能性は限りなく低い。だが、それでもL本人よりはましだ。この男から解放されるなら、多少変人でも我慢できる。
「実際に会ったことはありませんが……彼は非常に優秀です。私以上に観察眼が鋭い」
「へぇ」
「しかし」
Lは手錠を軽く持ち上げる。
「これが外れても、私と月くんの運命は変わりません。私が死ねば、あなたも死ぬ」
相変わらず大袈裟な男だ。
「ああ、分かったよ」
適当に返事をすると、Lは満足そうに頷いた。
そして数日後。
その”知り合い”が捜査本部へ現れた。
父さんたちがいない時間帯を選び、誰もいない捜査本部に飄々とLに連れられ姿を現したのは──案の定とんでもないやつだった。
(……なんだ、こいつ!)
思わず言葉を失った。
天然の黒髪、曲がりきった腰、Lを真似した様な黒い隈。……いや、あれは化粧?……か?
『Lを真似している』。その一言がよく当たる男だった。
「やあ、初めまして。──『キラ』」
……最悪だ。
初対面でいきなりそれか。
「キラ?」
睨み返すと、男は嬉しそうに目を細めた。
「キラだぁ……。L、本当に捕まえたんですね」
「僕はキラじゃない!」
「そ〜うですか、彼がキラですか」
何、頷いてやがる。
あの返事は「なるほど、なるほど」と受け流しただけだ。『ソーナンス』みたいな間延びした返事をしやがって。
「威勢がいいですね。嫌いじゃありませんよ」
腹が立つ。
余裕ぶった物言いもそうだが、何よりLを彷彿とさせるその態度が癇に障る。
……いや、違う。
似せきれていない。
だから余計に腹が立つのかもしれない。
その瞬間、自分でも意外な感情に気付いた。
(……何を張り合ってるんだ、僕は)
“Lを知っているのは僕だけ”。
そんな馬鹿げた独占欲でもあったのだろうか。
あるわけがない。
我ながら笑える。
黙ることにした。
すると竜崎は僕の腕に繋がった手錠を外し、そのまま自分の腕へとはめる。
──ガシャン!
男は鎖を持ち上げ、嬉しそうに微笑んだ。
「私の名前は、Bです。よろしくお願いします」
「……B?!」
思わず聞き返した。
Bってなんだよ!Lの他にBがいるのか?
嘘だろとLの方を見ると、彼はBですと答えた。
「B?……B!?……えぇ……」
困惑だ。Bってことは、他にも、Aやら、CやらDが居るってことか?
「それでは、私はキラ事件の他に追わなくてはならない事件がありますから。夜神くんの監視は任せます。B」
「ええ」
それだけ言い残し、Lはポケットに両手を突っ込んだまま、さっさと捜査本部を出て行ってしまった。
取り残された僕はどうしたらいいのか分からず、ただ呆然と突っ立って居ると、Bに手を握られた。
「ぅっ!」
いきなり手を繋がられ、上半身ごと引く。
「会えて光栄ですよ、キラ」
Lが居なくなってもそのキャラは突き通すらしい。
僕をキラだと決めつけ、訂正しない。
「だ、だからキラじゃないですって」
困りますという態度を全面的に出したものの、この男は自由気ままで僕の態度に気を遣う素振りは全くない。
「では、なんとお呼びしたら?」
Bにじっと見つめられる。
この男と目が合わないことに違和感を感じた。
どちらかというと僕の頭を見ているような……。なんで目線が合わないんだ?目を合わせるのが苦手な人なのか?
「……ライトでいいよ」
「らいと?」
Bは首を傾げ、眉間にシワを寄せた。
目をぱちぱちさせ、ぐっと僕に顔を近寄せるものの、やはり目が合わない。どこ見てるんだ、この人。
「夜神……らいと?」
「………………」
「月ではなく?らいとって読むんですか?」
いや、確かに珍しい名前ではあるけれど、そんなに急接近する程問いたださなくてもいいだろう。
「ええ」
僕は素直に答えると距離を取り、ぼそりと呟いた。
「やはり、日本語は難しいな……」
「はい?」
呟いた言葉が聞き取れず、聞き返したがスルーされてしまった。
「読めないので、夜神くんと呼ばせてもらいます」
ええ……。
そこまで月という名前に食いついておきながら、苗字で呼ぶのかよ。
……やっぱり読めないなこの人。
「ふふふ、名前の分からない人とは初めて出会った」
「ま、まあ、珍しい名前だねとはよく言われますけど」
「気に入った。夜神月」
Lの真似はもうしないのか、背筋を伸ばし、僕と同じくらいの身長になると、僕の手を握ったまま椅子のある方へ歩き出した。
Lの真似をしていると変態臭が凄いが、普通にしていればそんなことはなさそうだ。
座り方も普通。
あのLの、人間を辞めたような座り方を見慣れてしまったせいか、同じような見た目で普通に腰掛けているだけで妙な違和感がある。
斬新だ。
思わず博物館の展示物のように眺めてしまう。
「あの……」
「どうしました?」
「……その、BとかLとか何なんですか?……Lは、一人じゃないんですか?」
答えてくれるとは思ってない。
しかし、Bはあっさりと口を開いた。
「Lは一人だ。オリジナルは一人。でも、Lの後を追っているものは大勢いる……。L並の推理力を持ったものも……。そして、Lを超すものも、ね。──くくくっ……あっ。こういうことは言っちゃいけないんだっけ?まずいなあ、口が滑った。これあげますから、今のは秘密にしてくれますか?」
大分、結構ベラベラ喋っていたが大丈夫なのか。しかも、これあげると言って数分前にLが食べていたコアラのマーチを勝手に取り、僕に渡してきた。
これじゃあ盗み食いだ。
「これ、Lのだろ?」
「え!──Lの?これが?」
Bはコアラのマーチを両手で摘み上げ、宝石でも見つけたように目を輝かせた。
「あはは! Lの、かぁ!」
何がそんなに面白いんだ。
「あっははははは!」
怖い。
「持って帰ろう、うん、そうしよう」
「嘘だろ」
僕は思わずそんな言葉が漏れた。
Lの私物を持ち帰れる訳ないだろうと呆れつつ、Bから貰ったピンク色のコアラのマーチを口に放り込んだ。
口の中に広がるイチゴ味がLのものを盗み食いしている罪悪感とざまぁみろ感で美味く感じる。
「ところで、夜神月」
「………」
『夜神月』。結局、ライトでも、夜神くんでもないじゃないのか。──別に、どっちでもいいけど。
「Lのこと、教えてくれないか?」
「え?」
「Lについて知りたい。Lは何が好きなんだ?Lはどんな人だ?Lは人間か?Lの趣味は?Lはいつ寝てる?Lは普段どんな座り方をしている?Lは外に出るのか?Lは神を信じているのか?Lは──Lは──Lは──」
「そ、そんなの知らないですよ!僕に聞かれても」
ぐいぐい急接近してくるBの両肩を掴み、押し返した。
Lの正体なんて知らない。むしろ僕が教えてほしいくらいだ。
「Bの方が詳しいんじゃないのか?Lの知り合いなんでしょう?」
「Lの知り合い?知り合いってなんでそう思うんですか?どこから知り合いだと?」
「いや……Lがあなたを知り合いだと言っていたから」
「知り合い!?──あっ、あっ、そう……そうか。知り合い、かあ……!あっはははははは!」
Bは嬉しそうに微笑むと、コアラのマーチを抱きしめた。ぎゅっと、愛しそうに
「……………」
なんだこの人……怖すぎる。
ミサが僕を見つめる時と同じ顔だ。あまり深く関わらない方がいいかもしれない。
「Lの友達に、なれるかなあ」
「……友達になりたいんですか?Lと」
「うん。友達……それ以上の関係でもいい」
えッ……。
ゾッと寒気がした。
「まあ、今度テニスでもしてみたらどう?あいつ、ああ見えて結構強いから、勝てないかもだけど」
その言葉を聞いて、Bは机に手をかけ、身を乗り出した。
僕の椅子の肘掛に足を乗せて上から降り注ぐようにBが急接近してくる。
「テニス?」
「………………うん」
恐怖だ。
怖くて身の毛もよだつ。
「……Lとテニスしたって?」
「…………うん」
「本当に?」
「……うん」
近い近い近い。
そんなに急接近しなくても。
鼻がぶつかりそうだ。
椅子を引きたい。
……でも今引いたら、この人、落ちるよな。
(……まあ、別にいいか)
ほんの少しだけ椅子を後ろへ引く。
落ちろ。
そう願ったのも束の間だった。
Bはもう片方の足まで僕の腿の横へ乗せ、そのまま椅子を乗り換えてきた。
なんでだ!
なんで跨る!
「ほ、本当ですよ。というか近いです」
「……っ。ずるい」
Bはそんなことを呟くと僕の肩に顔を埋めた。
「ええ、ちょっと……」
僕はBの肩を押し、退かそうとすると、ギュッと抱きつかれてしまった。
(ど、どうすれば……)
「Bも……Lと遊びたい」
「……さ、誘ってみればいいんじゃないですか」
「どうやって?」
どうやってって。
そのまま「遊ぼう」でいいだろ。
それとも、この人はキラ容疑のかかった男に抱き付く勇気はあっても、遊ぼうの一言は言えないのか。
「僕が聞いてみましょうか?Lに……」
「聞いてくれるの?」
「は、はい」
Bは嬉しそうに笑うと、僕に再び抱きついた。
「ありがとう夜神月。大好きだ」
「そ、それは、どうも……」
分かったから退けと背中をポンポンすると、Bは僕から離れ、元の席に戻った。
「きゃはははは!テニス……Lと、テニス!るん、るん、るん」
Lとテニス出来るってだけでそこまでワクワク出来るなんて逆にすごい。
僕なんて、あいつとラリーしていた時はワクワクどころか、負けてたまるかという苛立ちしか湧かなかったのに。
「……BはLのこと、好きなのか?」
そんな率直な質問をすると、Bはニコッと笑い答えた。
「愛してます」
……うん。
そこまでは聞いてない。
「あ、そうですか」
これ以上踏み込んではいけない。そんな気がして僕は適当に答えた。
「夜神月はLのこと、どう思ってるんだ?」
「僕?友達、かな」
そんな在り来りな言葉が出た。それでもBにとってLと友達というのは羨ましいのか、親指の爪をガシガシと噛み、膝を抱えた。
「夜神月はLと友達、ということは、Bとは究極友達、ということか」
なんでそうなる。
会って数分なのに、Lよりも親密度が高いと勝手に思い込んでいるところが恐ろしい。
深く関わってはいけないタイプだ。
これ以上話すのは辞めよう。
「それより、僕は新しいキラを見つけなきゃいけないんで……少し作業しててもいいですか?」
なんて言ってパソコンの方を見つめていると、Bはくくっと笑った。
その笑い方──妙に懐かしい気分にさせるんだよな。
なんでだ?
「キラ探し、ですか?そんなもの直ぐに見つかりますから、放っておきましょう」
「………」
思わずBの方を見た。
すぐ──見つかる?
「あっはは!Bさん面白いこと言いますね。すぐに見つかったらLはあんなに苦労してませんよ」
半分ジョークで言ったのだが、Bは言い切った。
「見つかります」
…………………。
「……いやいや、ありえない」
僕は呆れて言葉も出なかった。
あのLが見つけられなかったキラを、簡単に見つけられるわけないだろう。
「Bなら見つけられる」
「ふふ、じゃあ見つけてみてくださいよ」
「断ります。Lの頼みなら聞くが……キラの頼みは聞かない」
あくまでもLの言うことしか聞かないようだ。
「うししししししし。いや、とほほほほほほ、か? うーん。ぞぞぞぞぞぞ! か? どれも違うなあ」
……ヤバい奴だ。
改めて確信した。
見なかったことにしよう。
僕はBから目を逸らし、パソコンを打ち込むのに集中した。
──そんなこんなで、僕は慣れないBとの共同生活が始まってしまった。
最初はどうなることかと不安だったが、Lじゃない分、身の回りの世話はしなくて済み助かってはいる。
そこまで監視らしい監視もせず、BはLの方に興味があるため、どちらかというと僕よりもLを監視しているといった感じだ。
手錠で繋がれているのが不便なだけであって、Lと比べたらBと手錠生活を強いられていた方がまだマシかもしれない。
──そんなBでも、“見られたくないものがあるらしい。
”風呂は僕と一緒に入ることはなかった。
風呂に入る時だけLと代わる。
風呂の時だけLと変わるってのも、それはそれで気持ち悪いが、Bが風呂を一緒に入らないのは恐らく化粧を落とした姿を見られたくないからだろう。
逆にそこまで守っているとその素顔が見たくなる。
──僕は風呂から上がり、寝巻きに着替えると、再びLと手錠で繋がれてしまい、今交代でBが風呂に入っている。
僕はBが来るまで布団で寝転がっていようと、Lの腕を引っ張って布団に寝転がった。Lも仕方なくベッドの上に上がるといつもの座り方で僕の隣に座る。
「どうです?彼との手錠生活は」
「ん?……正直面白いよ。あいつ、Lに似て結構変わってるしね」
「真似してるだけでしょう」
真似されるのは不本意なのか、Lは親指の爪を噛み、目を伏せた。
「Lとテニスがしたいって言ってたよ」
「……テニス、ですか……」
「やってあげなよ」
「いえ、断ります」
なんだよ、つれないやつ。
僕とはやったくせに、Bとはやらないのか。
「別にいいじゃないか、それくらい」
「……私とBはそういう関係じゃありませんから」
あんな謙虚にLを追っているのに、Lは見向きもしないなんて、可哀想だ。
……なんてミサがいる手前、僕がそんなこと言う資格はないのだけれど。
「じゃあ、Lとテニスをした僕は特別って思っていいのかな?」
少しLを困らせてやろうと思って言ってみた。
「……そうですね、キラと疑われた月くんは特別かもしれません」
が、失敗した。
もういい。
僕はため息をついて、Lに背を向けて目を瞑る。
キラが捕まればこの生活も終わる。さっさと捕まえなければ……。
毎晩毎晩そんなことを考えながら寝ている。
しばらくすると、ガチャっと扉が開き、髪の濡れたBが戻ってきた。
「おかえり」
僕は物音に目を向け、Bを見つめると、ハッと目を見開いた。
「……B?」
そこにいたのはまさしく別人。
美青年というより、格好良い青年が立っていた。
僕は目をぱちぱちとさせ、Bの姿を疑った。彼は初めて素の顔で僕の前に現れたのだ。
「いや、びっくりしたよ。化粧してないと別人だね」
「そりゃあそうだ」
Bは肩にかかったタオルで髪を拭きながら、僕の隣ではなく、Lの隣に腰掛けた。
「B、あまり私を装うのはやめた方が良いですよ」
「何故?」
「何故って……分かるでしょう?私を狙うものは世界中にごまんと居ます。下手に私の真似をしていると狙われますよ」
「BはLのバックアップ、じゃないのか?だからこうしてLの真似をしているのに」
「しなくていいです。私の真似なんて」
「ふふ、もしかして、南空ナオミに変態って言われたこと気にしてるの?」
「………………」
Lは心底うざそうにBを睨んで、頬杖をついてそっぽ向いた。
「どんな格好をしたらあんな風に言われるんだ。私を名乗るんだったらちゃんとやってくれ」
「くくくっ、悪かったね、L」
「それに、私の名前を勝手に名乗らないで頂きたい」
「Lだって『竜崎』と名乗ってるだろう」
「……一回は一回ですから」
なんの話しをしているのか僕にはさっぱりだが、聞き耳は立てておく。
すると、唐突にLとBの空気が変わった。
不穏な空気に僕は目を覚ます。
「L、あなたは本当に恐ろしい人だ。キラの前で竜崎を名乗るなんて……。キラの力は『顔と名前』が必要。もし仮に“竜崎という名前でキラの力が作用したら、見た目もそっくりなBが死んでいた”」
「………………」
「──それを狙ったのか?L」
僕はBの推理を聞いて嫌な汗が流れた。
Bの言ってることが本当だとしたら、Lって……本当に──容赦がない。
僕もその話が気になり、寝返りを打って後ろを振り向く。
BがLの頬を両手で包み込み、今にも喰ってしまいそうな勢いだ。
「犯罪者なら死んでもいいって、Lもそう思うのか?」
──は、犯罪者……?
「思いませんよ」
「じゃあなんでキラ対策で竜崎を名乗った?」
「一回は一回って言ったじゃないですか」
Bは目を伏せると、Lは自分が付けていた手錠を外し、Bの腕に付けた。
「B、あなたは私に負けたんです」
「……いや、Bの勝ちだ。あの事件、完璧に解けてないだろう?」
あの事件?
事件?事件……。
─────勘づいた僕は息を飲んだ。
B。
Bの事件と言ったら、あれしかない!
ロサンゼルスを驚愕させた、無差別殺人事件!
──BB連続殺人事件!
そ、その犯人!?
「ッ──!」
全身に鳥肌が立ち、僕は繋がれている鎖に青ざめた。
僕は今、殺人犯と繋がっているのか!?
冗談じゃない!!Lは何考えてるんだ!!僕と殺人犯を手錠で過ごさせるなんて!こ、殺す気か!?
寝ている場合ではないと、体を起こし、Bから離れるためにベッドから降りた。
「いえ、解けました」
「……嘘だ」
「いえ本当です」
LはBの耳元で僕には聞こえないように囁いた。
──B、あなたは顔を見ると、名前が見える。そうでしょう?
「………………」
Bは驚愕すると、Lから距離を取りありえないと言った表情で震えた。
「な、なんで分かった?……どうして」
「分かりますよ。やはり夜神くんに会わせた甲斐がありました」
「僕?」
「夜神くんの名前は珍しい名前ですからね。読めなくて当然です」
名前が、読めない?
僕の名前を利用した?
って──やっぱ僕は利用されていたのか……!
「B、もっと上手く隠さなくてはバレバレです。しかも、あの事件とも繋がっていましたし簡単に解けました。あなたは私に解けといいますが、私に対する挑戦というより──」
LはそっとBの頬に触れ、耳元で囁いた
「──私に気づいて欲しかったんじゃないですか?目のこと」
「…………………」
Bは完敗なのか、何も言い返すことが出来ず、歯を食いしばり、握られた拳だけが震えていた。
「……っ、違う……Lに勝ちたかった……どうしても。Lには解けない難事件を作れば、Bの勝ちだって……オリジナルになれるって……」
「だからってやっていい事と悪いことがあります。あなたのやったことは悪です」
「そんなこと分かってる!──だから、殺人は犯さないようにあの人たちを選んッ……ッ……」
そこまで言ってBは下唇を噛んだ。
しまったと顔が歪む。
Lは何かに気がついたのか、目をまん丸にして、固まってしまった。
「……違う」
「まさか──」
「違う」
「名前以外も分かるのか?」
「違う!違う!違う……ッ!」
Bは必死に頭を振り、否定する。
攻められ、否定することしか出来ないBは目元を覆った。
完膚なきまでにLにやられた。
Bが口を滑らなければ絶対に気づかなかった真実にLは気づいてしまった──
「っ──もういい。もういいよ、L」
Lもこれ以上Bを攻める気はないのか黙ってBを見つめており、BはそっとLの頬に手を当てた。
「──殺して」
「…………………」
「…………………」
僕もLも、言葉が出てこなかった。
Lに真実を見抜かれただけで命を捨てられるのか。この男はどれほど命を軽く見ているのか──それとも、命の価値を誰よりも分かっているのか。
Lならこの男を殺しかねない。
僕はBの手錠を引っ張り、Lから離れさせる。
Bは、力なく引っ張られた方向に倒れベッドに寝転がった。
「よせ、そんなこと言うな」
「……キラに殺されてもいい。なんでもいい、早く死なせてくれ。オリジナルになれなかったBに何の価値がある。所詮はコピー、LになれなかったBは……ただの敗者……」
Bは歯を食いしばり、目元を両手で覆うと、Lはポッケに両手を突っ込んでベッドの上で立ち上がった。
まるでBを見下すように。
その態度が気に入らず、僕はLに言いよった。
「L、Bを虐めるな」
「虐めていません」
「お前の存在がBにとって悪影響なんだ。あんま干渉するな」
「私は何もしていませんよ。Bが勝手にやって、勝手に自滅しただけです」
「……そうかもしれないが、BはLに認めて貰いたかったんじゃないか?本当はBの気持ちには気付いていたはずだ。気付かなかったなんて言わせない」
「………………」
「言っただろう。人の好意を踏みにじる様な事は許せないって。お前はBの気持ちを利用して僕の元に連れてきた。キラと疑われた僕にだ。僕の名前を見せるために僕を利用したことも、Bの気持ちに気づいてて否定も肯定もせず、何も応えてやらなかったお前にも少しは責任があると思う」
「……じゃあ私はどうしたら良かったんですか?私は誰かに好かれたりしたことが無いので分かりません」
Lといい、Bといい……。
何故人の気持ちが分からないんだ。天才的な推理が出来ても、人の気持ちを考えられない様ならだめだ。
「少しは応えてやったらどうだ?Bの気持ちに。Bはお前とテニスしたいって言ってたんだから、テニスとかしてあげたらいいじゃないか」
「いや、そんなことはいいんだ」
Bは両手を顔から離すと、一瞬赤く光った瞳でLを見つめた。
「愛して、L」
っ、重い!
そんなの、友情すらわかってないLには重すぎる。
「……愛、ですか」
Lは少しだけ悩んだあと、Bの上に覆い被さると、迷うことなく口を重ねた。
「ッ……!?」
誰がキスしろなんて言った!
僕は見てはいけないものを見てしまった気がして、顔が一気に熱くなる。
「え、L……」
トロンと溶けたBは、呆然とLを見つめた。
見ている僕の方が、よっぽど恥ずかしい。
「これでどうです? B」
「……L……っ、あんまり……嬉しくない」
Lの眉間がピクッと動いた。
するとBは、Lを軽く押し返し、今度は自分からLの口に覆い被さった。
唇が再び重なる。
「んっ……」
「一回は一回、なんでしょう?」
Bは遠慮なくLの唇を割り、舌を深くねじ込んだ。
ぐちゅっ、ぐちゅぐちゅ……と、濃い唾液の音がいやらしく響く。
Lはほとんど動かず、ただ受けているだけなのに、Bの舌だけが貪欲に絡みついてくる。
「んふっ……んっ、んっ……ぐちゅっ、ちゅぱっ……んっ」
「………………」
Lは何もしていない。なのに、Bだけが蕩けていく。
必死に舌を動かして攻めようとしているのに、Lはまるで応じてくれない。
猫がじゃれ合っているだけのような光景に、僕は頭を抱えた。
──この部屋から一刻も早く出て行きたい。
しかし、手錠のせいで部屋から出ることも出来ない。ベッドにも近づくのも嫌で、僕は床に胡座をかいて頭をかいた。
「ぷはっ……はぁ、はぁ……きゃははは、どう? L、気持ちいいだろう?」
「……あんまり、ですね」
適当な返事に、Bは軽く歯を食いしばった。
Bは負けじとLの胸ぐらを掴むと、そのまま押し倒し、今度はもっと激しく唇を重ねる。
「んっ! んんっ……ちゅっ、ぐちゅっ、んあっ……はぁ……」
ねっとりとした舌が絡み合い、唾液が糸を引いて落ちる。
「……はぁ……」
あんなに激しく舌を絡め合っているのに、Lは吐息ひとつで微動だにしない。Bだけが目の端から涙を滲ませ、必死に攻め続けていた。
「ぷはっ、はぁ、はぁ……」
口を離すと、Bの方が明らかにクタクタだった。
肩を上下に大きく揺らし、苦しげに息を継ぐ。
「はぁ、はぁ、はっ、はぁ……」
「どうしたんですか? B……“そんなものですか”」
Lの低く、少しだけ煽るような声に、Bは顔を歪めた。
するとLは上半身を起こし、両手でBの顔を優しく包み込むと、ゆっくりと口を重ねた。
先ほどまでの乱暴なキスとは違い、ねっとりと深く、しかし容赦のない口付け。
「んっ……」
「強気に攻めるのは良いですが、必死になって攻めたってダメですよ」
Lは咥えるようにBの唇を塞ぎ、上に被さっていたはずのBが、いつの間にかLに抱き上げられる形になっていた。
「ひっ、ぅ……んっ! ……んんっ」
「一気に攻めるのは私でも難しい。ジワジワと追い詰めていくことが、勝利への近道です」
そう言った次の瞬間、LがBの腰をギュッと抱きしめた。
「あぅっ!?」
Bの体が大きく跳ねる。
驚いただけじゃない。
Lに腰を抱えられただけで、明らかに感じている。
「ああっ……あっ、あっ!」
Bは目をチカチカさせ、狼狽えたように身をよじった。
触られているというだけで体が反応してしまう。本当に好きでなければ、こんな反応は出ない。
「ぃやっ……だ、離してL……っ! んんっ」
「闇雲に攻めてはいけません」
Lは再びBの口に舌を滑り込ませた。
最初は浅いところから。ゆっくり、じわじわと奥へ。
ぐちゅっ……ちゅぱっ……ぬちゃっ……。
Bが息を合わせようとするたび、Lはそれを上回る深さで舌を押し込み、主導権を奪っていく。
「んっ、んぐっ……んんっ、っ……っん」
Bの瞳は焦点が合わず、自然と上を向いていく。口の端から溢れた唾液が顎を伝い、喉元までぐちゃぐちゃに汚していた。
いつの間にか力の抜けたBを、Lは軽く押し倒す。ようやく口を離すと、二人の唇の間に、太くねっとりした唾液の糸が繋がった。
それが切れないまま、Bの唇の端から垂れ落ちていく。
「……これが、正しい攻め方ですよ。B」
Bはただ、荒く息を吐きながら、上からのしかかるLを見つめることしかできなかった。
Bは荒い息を吐きながら、まだ強がるように言い放った。
「ハァッ、ハァッ……Bは攻め……Lが受け、だ……」
「いえ、残念ながら受けはあなたの方です。私はやられません。絶対に」
次の瞬間、BはLの首を両手で掴み、ぐうっと力を込めた。
「っ!?」
「おい!」
さすがにやりすぎだと感じた僕は、手錠を引っ張って止めようとしたが、Bの力は強く、離れない。
「っ……」
Bが不敵な笑みを浮かべたのも、ほんの数秒だった。Lが手を伸ばし、今度はBの首を両手で包み込むと、親指で首の中心をグッと押し潰した。
「アガッ……!! ッ、ッ……!」
Bの目から一気に涙が溢れ、口から舌がだらりと垂れる。苦しげにもがくたび、口の端から唾液が糸を引いて落ちていった。
「だから、言ったじゃないですか。闇雲に攻めても自滅すると。そんな力いっぱい首を握ったって、苦しくないんですよ。やるなら、そう……首の中心、甲状腺を押し潰すようにやらないと」
「ッ! ッ! ッ……!」
本当に死んでしまうんじゃないかと、僕は居ても立ってもいられなくなり、Lに掴みかかった。
「おい! やめろ! L! 死んでしまう!」
僕が止めに入ると、LはあっさりとBの首を離し、両手を上げた。
「殺してと頼んだのは、Bの方ですよ」
ヒュー、ヒュー、と苦しそうな息が上がり、嗚咽に近い泣き声が僕の胸を締め付ける。
「だから、お前はやりすぎなんだよ……」
そこがLの強みであり、同時に欠点でもある。攻めは上手い。だが、加減を誤る。本当に殺してしまったら、一生「L」という人物に誤解が残る。
「すみません」
全く反省していないような謝罪を聞き終わったあと、僕はまだ苦しそうに肩を上下させているBの肩に触れた。
「おい、大丈夫か」
その瞬間、Bの体がビクビクッと跳ね、縮こまった。
「っ……わ、悪い」
驚かせるつもりはなかったのに、Bは自分の体を抱きしめるようにして、そっぽを向いた。
「さ、わらないで……」
そう言いながらも、頭の横に置かれたLの手には、自ら頬をすり寄せて触れている。
「ん、L……」
本当に、この男はLが好きなんだ。
どこか嫉妬する。
あの世界一の名探偵Lを知っているのは、僕だけだと思っていたのに。こいつは、僕とLが知り合う前からの仲だったというのか。
──妬ける。
僕が落胆していると、Lがそんな僕に気づいたように、薄くニヤッと笑った。
「何、妬いてるんですか」
「っ……妬いてなんかないよ」
腕を組み、そっぽを向いた瞬間、Lの指が僕の頬に触れた。そのまま首筋に唇が落ち、熱い吐息と一緒に囁かれる。
「っ……!」
「私は、あなたも好きですよ」
顔が一気に熱くなり、サッとLから離れて距離をとった。
「な、何を……」
LはBから離れると、今度は僕の腕を掴んで引き寄せた。抵抗する間もなく、胸にギュッと抱きしめられる。
耳たぶを甘噛みされ、そのまま舌が耳の中に滑り込んできた。
「ひっ……!」
ぐちゅっ、ちゅぱっ……と、ねっとりした水音が鼓膜のすぐ近くで響く。
ぞぞぞっという快感が腰の芯まで走り、全身の毛が逆立った。
「……んんっ、んぅ、える、んっ……」
脳がじわじわと蕩けて、体の力が抜けていく。
チュッ、というリップ音と共に腰がガクッと折れ、僕はLに支えられなければ立っていられない状態だった。
「んっ、ぷは!──おい……」
睨みつけた先で、Lの背後に不機嫌そうなBが立っているのに気づいた。
「っ!」
咄嗟に離れようとした瞬間、BがLに覆い被さるように抱きついてきた。
成人一人の体重がのしかかり、僕を支えていたLごと前に倒れ、三人で床に横転する。
「ぐっ……!」
「ッ……B……!」
「すみません」
LがBを睨むと、Bは全く反省していない顔で謝罪を零した。
「っ……なんです?そんなに私に構ってほしいんですか」
「構ってほしいに決まってる。じゃなきゃあんな事件、提供してない」
事件を提供って……やっぱりこいつ犯罪者か!
僕が二人から距離を取ろうとしたが、手錠に引っ張られてよろめく。
LはBを無理やり立ち上がらせると、ベッドに押し倒した。
「っ!」
「L、そんなにがっつかなくても、Bは逃げたりしない」
「一回は一回って言ったじゃないですか」
Lは躊躇なくBのズボンに手をかけ、一気に引き下ろした。
下半身が露わになると、すでに少し濡れた先端が空気に晒される。
「私に認めてもらいたくてあんな事件を起こしたとしたら、尚更許せませんね」
「それしか、Lに認めて貰う方法が思いつかなかった……。どれだけ良い成績を出そうと、どれだけ優れた才能を持とうと、あなたは振り向きもしてくれなかった……」
Lは無言でBの足を持ち上げ、残りの布を完全に脱がせていく。
そして、低く告げた。
「ならば、今、応えます。B」
「っ、L……Bが受けなのは……違う……」
そんな声は届いていない。
Lの指が、すでに湿った入り口に触れたかと思うと、そのままゆっくりと中に沈んでいった。
「うっ、ぅあ……! ……ぃやっ、L……!」
「負けたんですから、我慢してください」
「負けてなぃッ──! ひあっ……あっ!」
Bの腰がビクッと跳ね、シーツを強く握りしめる。
「負けたじゃないですか。完膚なきまでに」
「ちゃんと全部……解けてないだろう……!」
「解きました。あのクロスワードパズルだって、私は解きました」
指を少し曲げると、明らかに気持ちいい場所を捉えたようで、Bの体が一気に跳ねる。
「アアアッ……! アッ! アッ……!」
「ここ、好きなんですか?」
「うっ、だめ、そこ、き、気持ちいい……! L……L……こんなのやだ……」
「やだって、あなたが望んだ事ですよ」
「違う、違う……Bは攻め……受けじゃない。攻め、だ……」
そう言いながらも、腰はくねくねとLの指に擦り寄り、説得力のかけらもない。
「Bが攻めなら、私はもっと攻めですね」
指の動きが激しくなる。
ぬちゃぬちゃ、ぐちゅぐちゅと水音が止まらず、Bの喘ぎはどんどん大きく乱れていく。
「あ゛あ゛!? はっ! アッ、やだぁ……! あ゛ぅ……!」
ガクガクと震えながら、Bは軽く絶頂した。
腹に透明な体液が溢れ、首の力が抜けてガクッと倒れる。死人のように力を失い、肩でゼェゼェと浅い呼吸を繰り返した。
「ァッ、アッ、ハァ、ハァッ……ハァッ……」
目からは涙がこぼれ、赤い顔を両腕で隠した。
「もうイッちゃったんですか?」
「……激しくッ……するからぁ……」
「私は強気な攻め、ですから」
Lは興奮しきった表情でニヤッと笑う。
そのまま両腕を掴み、Bの頭の上で拘束すると、自分の熱を入り口に当て、グッと腰を押し入れた。
「んアッ……! ッア!? アアッ……!? 挿れ、てっ……?! ……アアッ……!」
「おや?……B、初めてなんですか?」
「あ、当たり前だろ……こっ、こ、こんな、こんな事……Lとせ、ックスなんて……か、考えられないッ! 頭おかしくなるッ……!」
目が渦を巻き、完全にパニック状態のB。
「煽り文句が酷いから、経験者なのかと……」
「やだ、やめろ、怖い……! ……やめっ、やめて……ごえ、ごめん、許して……L、ごめんなさ……!」
Lは動きを止めず、ゆっくりと奥まで埋めていく。
あんなに泣き腫らした目で、必死にLにすがりついているBを見ていると、可哀想だと思う反面、ひどく虐めたくなる。
これがS心というやつなのだろうか。めちゃくちゃに泣かせてやりたい。そんな衝動が、胸の奥でくすぐるように疼く。
「この程度で怖いって……よく言いますね。好きな人に抱かれたら、嬉しいものなんじゃないんですか?私は自ら炎に飛び込む方が、よっぽど怖いですけど」
「あれは……それしか無かったから……!あんなの本当は嫌だった……死ぬ思いで、あなたに……あの事件を提供したんだ……!……壊れるっ、Lに壊されるのはもう嫌だ……!」
「十分壊れてますけどね……むしろ、私が手を入れた方が、治るんじゃないですか?」
「バカ言ってないでやめろ……! こんなの嫌だ……!もう、動かさないで……! アアッ……! 苦しい……っ」
目をギュッと瞑り、顔を歪ませたBが、Lの髪を掴んで強く引っ張る。
「うぐっ……B!」
「不愉快だ、早く退け……」
「……っ、B。照れ隠しは、もっと可愛くやってください。一回は一回、分かってます? 私はあんまり、暴力とか振るいたくありませんよ?」
LはBの長く伸びきった前髪をガッと上に持ち上げ、隠していた顔を強制的に晒した。
泣き濡れた睫毛、赤い頬、唾液の垂れる唇。
そのあまりに無防備で可愛らしい顔に、僕の調子まで狂ってくる。
「相変わらず、可愛らしい顔をしてるんですね、B」
Bは耳まで真っ赤に染め、顔を隠そうと必死に首をくねらせる。だが両手を掴まれているせいで、ろくに隠せない。
恥ずかしさに身をよじるたび、繋がっている部分がぬちゃりと水音を立て、Bの喉から甘い吐息が漏れた。
「なんだか大人っぽくなりました」
「……っ、何の話だ」
「昔の話ですよ。あの頃から、ずっと私のことが気になっていたんでしょう?あなたの視線には勘づいていました。だから、あんな事件まで起こして、私の前に現れた」
Bの内壁がきつく締め付けてくる。
恥ずかしさと快感と、古い記憶が混ざり合って、体がびくびくと震えていた。
「……可愛いですね、B。子供の頃より、ずっと──……。何も私の見た目に合わせなくたっていいんです。変態って言われますよ」
「……っ、ふっ……やっぱ変態って言われたこと気にしてるのか……あんっ……!」
奥にグッと突き入れられた瞬間、Bは歯を食いしばりながらも、可愛らしく短い声を上げた。
腰がびくりと跳ね、内壁がきつく締まる感触が、Lの表情をさらに濃くする。
「Bは変態って言われても構わない。Lが天才なら、Bは究極天才……。Lが変態なら……Bは究極変態ッ……だ……」
あくまでも、Lを超えたいらしい。
頭脳だけでなく、何を対象にしても越えたいという執念。それが重く、熱く、どこまでも深い。
どれだけの愛をLに注いできたのか、僕には計り知れない。
「Bが究極変態と言うなら、私は至極最強の変態ってことになってしまいますね。……あんまり良い気はしませんが」
負けず嫌いが、ここでも発動している。
そんなことで張り合うな。本当に幼稚だな、と呆れた目で見ていると、突然、僕の手錠が強く引かれた。
「ちょっ……! 引っ張るな……!」
僕の体が二人の方へ引き寄せられる。
Lの視線が、掠めるように僕に向いた。
その目が、ほんの少しだけ愉しげに細められていて──
LはBの腕に鎖を巻き付け、抵抗できないようにロックした。
僕も同じ鎖に繋がれているせいで、自然とBとの距離が縮まり、蕩けきった顔がすぐ目の前に来る。無防備に歪んだ表情は、ひどく可愛らしかった。
変な気を起こしかけて、思わず固唾を飲む。
「夜神月……お前は、Lそっくりだ……」
「っ……僕が?」
「Lに近いものを感じる……そんなお前が……羨ましい……」
そのセリフ、どこかで聞いた気が──
ごくり。
嫌な汗が背中を伝う。
今この男をめちゃくちゃにしたらどうなるんだろう。
汚してみたい。ぐちゃぐちゃにしてみたい。
そんな汚い欲ばかりが、次々と浮き上がってくる。
ダメだ。ダメだ。そんなこと、できるはずがない。
奥歯を噛み締めて理性を保っていると、Lが急に激しく腰を打ちつけた。
「ひぁっ……! アッ! アッ! アッ……!
だえ、だめ、そんなに攻めちゃ、あん、んっ……!」
全身に電気が走るような快感に、Bの顔が大きく歪む。
ぬちゃっ、ぐちゅっ、ぱんっ、ぱんっ……。
僕はこの輪に入らざるを得ない空気に「いやいや」と頭を振り、ベッドから離れようとした。
その瞬間、Bに服の裾を強く噛まれ、止められた。
「っは……! っは……もう、怖い……。助けて……キラ……いっそ殺してくれ……」
さっきまで「L、L」としか呼んでいなかった癖に、限界が近づくと僕に縋りついてくる。
その姿は、何とも謙虚で、愛おしいくらいに可愛らしかった。
「僕は……」
「壊れそう……あ、頭が……バカになる……」
大好きと言って抱きしめてくれたBに、嫌悪感はない。むしろ、Lの後をずっと追い続けてきたこの男は、嫌いじゃない。そういう謙虚なところは、僕も好きだ。
「B……」
Lに虐められているBに欲情し、僕は顎を持ち上げると、上からキスをした。
柔らかい唇は、甘いチョコの味がした。きっとLが食べた痕だ。
舐め取るように優しく口付けを交わしていると、Lがグッと奥まで突き入れた。
「お゛っ……!?」
「何、夜神くんと、よろしくやってるんですか」
Lの声が低く落ちる。
「っ……! んあっ……! あっ! あっ……! えるっ……!」
「はっ……夜神くんも、夜神くんです。っ、この人を甘やかさないでください」
「そうは言っても……そんなに攻めたら、可哀想だろ」
苦しそうに喘ぐBの姿が目に入る。
さっき言ったことが嘘みたいに、もっと苦しめてやりたいという欲が、腹の底から涌き上がってきた。
「アッ……! アアッ……! そこ、だめ……! あっ! L、L……!」
「Bのやったことを、私は許してません。……
が、私の事をここまで愛した人も、あなたが初めてです」
Bは僕の太ももに顔を擦り付け、Lの激しい突き上げに耐えている。
「ひっ……! アッアッアッアッ……!ぐ、ぅ……おぐぅ……ゴツゴツ、気持ちいぃ……!」
ダメだ。完全に飛んでいる。
溢れ出た舌を絡めるように、もう一度深く口付けをした。今度はBの方から、貪欲に僕の口内へ舌をねじ込んでくる。
「え、える……愛してる……」
僕と舌を絡ませながら、Lの名前を呼ぶ。
「えう……えゅの、欲しい……もっと! もっとお……」
口を離すと、太い唾液の糸が二人を繋いだ。
気持ちよさそうにLを受け入れているBは、虚ろな目でLに手を伸ばす。
「?」
「える……えゅ、えぅ……頂戴。えるの遺伝子、欲しい……」
とんでもない誘い文句に、関係ない僕ですらグラッと目眩がした。
本当に初めてなのか。
「イクなら、一緒にです。B」
LはBの熱を卑猥な手つきで擦り上げた。
下品な喘ぎ声が、部屋に大きく響く。
「え゛るぅ……うぅ……うっ! うっうう……!」
そうやって「L、L」と連呼する口がうるさくて、僕はBの口に指を突っ込んだ。
「んぐっ……!? んんっ……! んん……!」
普通なら抵抗したり噛んだりするはずなのに、Bは慣れた手つきで僕の指をねっとりと舐め回し、しゃぶり始めた。
「んっ……ちゅっ……んんっ……んあっ……あむ……」
モグモグと指をむしゃぼる姿に、手に何か塗ったら美味しそうに食べそうだと想像し、丁度サイドチェストにBのイチゴジャムが置いてあるのを思い出した。
イチゴジャムを手に取り、チョコの味をかき消してやろうと、人差し指でイチゴジャムを掬い、Bの口元に持ってきてやると、美味しそうにそれを咥えた。
「あむ、んっ、んんっ、んひっ、ぅ!んっ」
喘ぎながら指に着いたイチゴジャムをペロリと舐めとき、今度は二本指で掬って、食べさせると、二本の指ごと咥えて、イチゴジャムを舐めとった。
「あっ。んっ。んんっ、ちゅ、っん」
LにめちゃくちゃにされているBを、自分でもめちゃくちゃにしてやりたいという感情が、一気に込み上げてくる。
ジャムを手のひらにたっぷり掬った。
手が真っ赤に染まる。
それを口に流し込むように押し付けると、Bは顔についたジャムなど気にもせず、手ごとねっとりと舐め回し始めた。
「んぐっ……! んっ……ぐっ……んんっ……! んんんっ……!」
「B、凄いね……上手」
素直に受け入れるその姿勢は、愛らしくてたまらない。汚れていない方の手で頭を優しく撫でてやると、目元がトロンと蕩け、さらに熱心に舌を動かした。
手のひらについたジャムをすべて舐め取り、ゴックンと飲み干すと、まだ欲しいのか、赤い舌を突き出して待っている。
その瞬間、LがBに覆い被さり、深くキスをした。
「あぅっ……んんっ……えゆ、えゅぅ……」
Lも甘いものが欲しかったらしい。
Bの口の周りや頰についたイチゴジャムを、ちゅぱちゅぱと舐め取る。髪に絡んだ砂糖まで、丁寧に舌で掬い上げていった。
僕も自分の指をしゃぶってみた。
甘いイチゴの味が口内に広がり、頭がくらくらと溶けていく。
「ちゅっ……ちゅっ……」
軽いリップ音を響かせて手についた残りを食べていると、突然Lが僕の手首を掴み、引き寄せた。
「!?」
びっくりして振り返ると、Lは僕の手についたイチゴジャムを、ねっとりと舐め取った。
最後はじゅっと強く指を吸い、舌で絡め取るようにして離す。
「〜〜〜……!」
Lにそんなことをされると、一気に顔が熱くなる。慌てて手を引っ込め、距離を取ると、Lは珍しく、小さく笑った。
「夜神くん──」
「……Lっ……」
「あっ……える、こっち、こっち向いて……」
Bがいつの間にか自力で鎖を解き、Lの服の裾を弱々しく引っ張っていた。
イチゴジャムの砂糖で髪が頰にくっつき、それが余計に色気を煽る。
「はい、見てますよ、B。可愛らしく感じていましたね。顔がぐしゃぐしゃです」
「そ、そんなの言わないで……」
「わざとです。その方が、感じやすくなるんでしょう?」
耳元で低く囁くと、Bの腰がビクッと大きく跳ねた。
「変態ッ……」
弱々しく言い放つ声とは裏腹に、体は正直にLを受け入れている。
LはBを起き上がらせ、抱きしめるように密着させた。
「すみません、夜神くんの相手は後でしてあげますから、待っててください」
その一言で、僕は火を噴くんじゃないかと思うくらい顔が赤くなり、パニックになった。
「はぁ!? え!? あっ! え……!」
Lの上に跨ったBは、さらに深いところに当たって腰が砕け、動けなくなっている。
LはそんなBの腰を支え、ゆっくりと上下に動かし始めた。
「アッ……! アッ……! アッ……! 気持ちっ……あ! L……!」
最初は小さく、徐々に激しくなる水音と喘ぎ。
「B、私の“合図”でイケますか?」
「い、イけるッ……!」
「いい子ですね」
真っ先に答えたBは、Lに全力で抱きついた。
Lは耳元で囁きながら、打ち付けるスピードを一気に上げる。
「『13』……12……11……」
カウントが進むたび、Bの喘ぎは高く、切なく、壊れていくように鳴き始めた。
Lの得意とする攻め方だ。
ジワジワと相手を追い詰める。巧妙で、容赦がない。焦らせ、焚きつけ、限界まで引き伸ばす。
「10、9……ほら、まだイクな」
「あぅっんっ……! んっ……んっ……んんっ……!」
Bは自分の指を強く噛み、必死に快楽から逃れようとする。
「8、7、6……っ、5……」
「ひっ、イク……イクっ!」
L自身も苦しそうに呼吸を整えながら、Bの耳元で低く囁き続ける。
「4、3……はっ、まだ我慢してください」
「んあっ!あっ……あっ!もう……」
打ち付けるスピードが一気に上がる。
Bは泣きわめくように首を振り、体を大きく乱した。
血が出るんじゃないかと思うほど強く指を噛んでいた手を、Lが優しく引き剥がし、恋人繋ぎで絡め取る。
「えるっ、えるぅぅ……あっ、ダメ……!」
「まだ、まだだ」
意地悪だ。
ずるい。
あんな風にされたら、僕はどうなってしまうんだろう。考えただけで、背筋がぞくりと熱くなる。
「2、1……」
「イッ、くッ……ッ、アッ……! アッ……! アッ……!」
「0……」
なのに、Bはまだイカない。
カウントはすでに0を過ぎているのに。ただ、Lの合図だけを、震える体で待っている。
「……B。イッて?」
「ッッ〜〜〜〜!!!」
Lの一言で、声にならない悲鳴が飛び出した。
Bは天を仰ぎ、フワッと力が抜け、Lの肩に顔を埋める。
余韻で体をびくびくと痙攣させながら、必死にしがみついた。
「あっ……あぁッ……あっ……」
LはBの頭を優しく撫で、慰めるように髪を梳く。
やがてBは力を失い、倒れるようにベッドに沈み、浅い寝息を立てて気絶した。
「だから、お前はやりすぎなんだよ……」
スースーと眠ってしまったBを見ながら、次は僕の番かと、胸がハラハラと高鳴る。
「はっ、はっ……」
Lに、乱暴に抱かれたい。
あんな風に乱れてみたい。
そのとき、Lがゆっくりと僕の方へ振り向いた。不機嫌そうに、じっと睨んでくる。
「な、なんだよ……」
僕、何かしたか。
LはBに繋がれていた鎖を外し、そのまま自らの手首に付けたあと、グッと強く引っ張った。
鎖が短くなり、僕の体が一気に引き寄せられる。
「Bに、何かされましたか?」
「え? いや、何も……」
「本当ですか? 触られたりとか、キスとか……されませんでしたか?」
「な、なん、のことだか……」
──まずい。
Lの目が、本気で怖い。
以前、LのいないところでBと二人きりになったこと。そして、あの時”事を足した”こと。きっとバレているんだろう。
嘘をつく気力も失せて、苦笑いが漏れた。
「あ、ああ、あれ……見られちゃったかな」
「見てました。 夜神くんにも、躾が必要ですかね?勝手に私の『幼なじみ』に手を出したりして。……それに、私の情報を流すのはやめてください」
うわっ、全部バレてる。
「いや、悪かったって。だって、全然お前構ってくれないし……。BならLの情報と引き換えって言えば、喜んで僕の言うことを聞いてくれるし。可愛くってね。それに、知り合いだって言ってたから、お前の話くらい良いのかと」
「良くないです。知り合いどころか、Bは私の敵です。今後一切、私の情報は流さないように。良いですね?」
「わ、分かった、分かったから、離れてよL……」
「それと──Bに体を許すのは、やめて頂きたい」
「な、なんで……」
「夜神くんの体は、私のものですから」
い、いつからそんなことになっている!?
僕はぶんぶんと首を振ったが、Lは構わず、胸に手を這わせてきた。
指先が鎖骨をゆっくりなぞり、下へ落ちていく。
「もう少し、私と付き合ってください。本当は、夜神くんも限界なんでしょう?」
そう言って、Lは僕の股間に膝を押し当てた。熱い感触が、はっきりと伝わる。
あんなに激しい行為をすぐ傍で見せられて、興奮しないほうが無理だ。
悔しいけれど、Lに攻められたい。
Bみたいに乱れたい。
Lに壊されたいなんて、柄にもない欲望が、腹の奥でうずく。
僕はLの首に腕を回し、引き寄せた。
「……しょうがないな。付き合ってやるよ、L。でも、あんな激しくは耐えられない──優しくしてくれ」
Lの目が、暗く、熱く細められた。
鎖が短く引かれ、僕の体が完全にLの腕の中に落ちる。
「……わかりました。じゃあ、優しく、壊してあげますね」
#デスノ夢
アカツキ
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