テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「お、圭じゃん。お前らこれからイチゴフェア行くんだって?」
吾妻くんは圭ちゃんの放つピリついた空気など気にも留めない様子で、ひらひらと手を振って尋ねる。
けれど、圭ちゃんの表情はピクリとも動かない。
完全に目が据わっている。
俺は二人の間に漂う一触即発の空気に、生唾を飲み込んで固唾を見守るしかなかった。
ふいに、吾妻くんがさらに攻め込むように切り出した。
「俺もそのカフェ、一緒に行っていい?」
その発言を聞いた瞬間、圭ちゃんの眉間がこれ以上ないほど深く寄せられた。
周囲の温度が何度か下がったんじゃないかと思うくらい、明らかに機嫌が悪くなっているのが空気で分かる。
「ダメに決まってんだろ」
一瞬の躊躇もなく、冷徹に即答した。
あまりにも早すぎる拒絶に、俺は隣で乾いた苦笑いを浮かべることしかできない。
「なんで?減るもんじゃないじゃん」
「いや、コイツと二人で話したいことあんだよ」
「ちぇー、ケチ。せっかく珍しく甘い物食べるチャンスだったのにな」
大袈裟に肩をすくめて残念がる吾妻くんに向かって、圭ちゃんはさらに追い打ちをかけるように容赦ない言葉を言い捨てた。
「お前なら、その辺の女どもに頼めばいくらでも奢ってもらえるだろ?そっち行け」
「相変わらずひっどい言われようだなぁ、圭。冗談でも地味に傷付くんですけど?」
「冗談に聞こえるか?」
「いや、全然」
「じゃ、そういうことだから」
徹底的に冷めた口調で会話を打ち切ると
圭ちゃんは俺の肩を掴んでいた手を下ろし、今度は俺の腕を強引に引っ張った。
「ほら、行くぞりゅう」
「あ、ちょ、ちょっと待ってよ圭ちゃん!ご、ごめん吾妻くん、また今度ね……っ!」
半ば引きずられるようにして校門を後にする。
ズンズンと大きな歩幅で歩き出す圭ちゃんの背中を見ながら
俺は必死にその後を追った。
(やっぱり、圭ちゃんと吾妻くんって仲良くないのかな…圭ちゃん、ものすごく怖い顔してた……)
少しだけ心配になって、去り際にちらりと背後の吾妻くんの方を振り返ってみたけれど
彼は遠くから不思議そうな笑みを浮かべてこちらを見送っているだけで
その真意までは読み取れなかった。
しばらくの間、圭ちゃんは無言のまま早足で歩き続けた。
気まずい沈黙に耐えながら
ようやく辿り着いたのは、Xで見たあのカフェ【ベリーズ】だった。
◆◇◆◇
カランカラン、とレトロなドアベルが鳴り
ドアを開けた瞬間
空間いっぱいに満ちた、甘酸っぱく芳醇な香りに全身が包み込まれた。
野々さくら
990
#ラブコメ
猫塚ルイ

752