海に来た。
雪が少しばかり夏は暑い砂の上に積もっている。
そこで僕らは気づいた。
今冬じゃん。
「わー、寒いねー」
「本当に。超寒いんだけど。脱走する前にこの寒さで死にそう」
「物騒なこと言わないのスカビオサ。まぁまぁいいじゃない、こんな寒さじゃ流石に村の誰も海に来ようなんて思わないよ」
「うわっ、海の水冷たっ……ちょっと氷ってる」
「これもこれで綺麗だねぇ、海に蜘蛛が反射してて。今なら海の上歩けそう」
なんて言いながら遠くを見つめて、段々と深い所へ向かっていくアイビー。
寒くないのかな。
「めちゃくちゃ冷たそうなんだけど、足凍らないのそれ」
「んー、もう足の感覚ないよ」
「出なよ。火傷っぽくなっちゃうよ」
「んー」
なんて聞いてるのか聞いてないのかよく分かんない返事をしながらアイビーの足は海に呑まれていく。
もう膝まで行った。
流石に危なくないか。
「アイビー、聞いてる?早く出ないと、脱出前だってのに風邪ひいちゃうよ。そうなったら本末転倒じゃない」
「……私さ、怖いんだ」
「え?」
アイビーは足を止めて、でも体は前を向いたまま、こちらへ話しかける。
だから僕には今、アイビーがどんな顔してるのか分からないけれど、少し声が震えて、寂しそうな、寒色のような声色をしているのは分かった。
「前、スカビオサを窓から落としそうになった時、思ったんだ。私、君のこと殺したいって」
「だから、僕はアイビーに殺されてもいいって」
「それでも!!!!……それでも君にあの時言われた言葉が頭から離れないんだ」
あの時言った言葉?僕は一体何を言ってしまったんだ。
彼女をここまで弱くした僕の言葉、それはなんだ、僕は何を言った。
脳内の記憶を巡るが、彼女を傷つけるようなことを言った記憶が全くない。
「スカビオサは、私を、アイビーを怖いと言った。その時、私はもうスカビオサとは一緒にいれないと思ったんだ。スカビオサがそれを許しても、私が許せない。私は君のことを殺したいとか言っておいて、殺すのが、傷をつけるのさえが怖いんだ」
自分の下唇を噛みながら、彼女はこらえたように言う。
……ああ、アイビーはどこまでも儚くて、消えそうで、弱くて、それでいてとっても優しい子なんだ。
大好きだなあ。
彼女は弱々しくこちらを除く。
その顔はこちらに向いていたが、その目は僕を捉えてはいなかった。
そのままわなわなと震えたまま薄紫に染った唇が開く。
「だから、私は私を消そうと思って」
アイビーは自分勝手だ。
コメント
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小説書くの上手すぎワロタんめんシャンシャンバリンソーセージスペシャルコース
天才、、、小説の先生(なんだよそれ)になれるよね?!(ごめん日本語忘れてしまった)やっぱさすが私の推しだわ(は?)