「嫌いになりたくない」
千尋(ちひろ)は俺を値踏みするように目を眇め、じっと見る。
興味があるわけではないが、ないことはないというような、曖昧な目だった。
「この間、花音(かのん)とは本当に終わった。だから……俺にはもう千尋しかいない。信じて」
千尋の眉がぴくりとつり上がる。
それでも千尋は俺から目を離さないから、どうかわかってくれと思いながら、必死で見つめ返した。
「俺は神戸に異動だし、千尋と離れ離れになる。それは嫌なんだ。もうほかに女は作らない。だから……今すぐにでなくてもいいから、神戸に来てほしい。新しい土地で、もう一度やり直そう」
千尋と新しい場所で―――しがらみのない場所で、花音も榊も、俺たちを知る人がほとんどいない土地でふたりになれば、また甘く楽しい生活にきっと戻れる。
千尋の反応は決して芳しくはないけど、それでもその願いを、捨てることなんて、できるわけがなかっ********************
************
***********
****************
******************
************
*********************
********************
コメント
1件