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「千尋は、もう」

千尋(ちひろ)が言い、動けない俺の横を通り過ぎた。

俺の横を、ゆっくり、確実に前へ進んでいく。

(千尋)

千尋を愛しているのは嘘なんかじゃない。

“そうじゃない”と言って、否定したかった。

でも俺の愛を千尋に受け入れられていないのは―――俺が“間違い”だからなのか?

千尋を追いかけたいのに、今言われた言葉が大きな衝撃となって、足が動かない。

(俺は……)

千尋との関係が揺るぎないと確信していたからこそ、多少のスパイスも欲しくなった。

でも他の女と千尋は別だし、もちろん千尋を愛しているのとは全く別の感情だ。

花音(かのん)のことは“浮気”という認識はなく、千尋も花音もそれぞれ大切にしていた。

でもそのことが“誠実”でないと言われたら―――そうじゃないと俺がいくら思っても、受け入れてもらえないことかもしれない。

今思っていることは、これまで思いもしな***********************

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熱帯夜~私と彼氏と浮気相手と~

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