「その通りよ。でも違うわ。呪術入りのコーヒーを飲んでない人も、何かの拍子でこの世界へと迷い込んでいるの。コーヒーを飲んでいない人でも夢を見るでしょ。なので、ベットからこちらの世界へと来ているの。また、夢の世界は宇宙と同じくらい大きいの。それと、そこでコーヒーを飲んだ人と出会ったりするとその夢の世界で住むようになるわ」
私はこの途方もない話を聞いて、とにかく取り返しのつかない事態なのだと単純に考えた。現実感がないと、それが何であれ信じることが難しいというのが現代人なのだろう。
私はこの夢の世界で何をしたらいいのか、途方に暮れる。霧画や呉林が教えてくれることを実際にすればよいのだろう。しかし、混乱し半信半疑のような状態では、力が十分にだせないだろう。それと、現実感がないとどんな判断も出来なくなりそうだった。
対向車がそそくさと通り過ぎた。信号はいずれも青だった。
「赤羽さん。そう深刻にならないで。ようするに南米に行ってシャーマンを何とかすればいいのよ」
「具体的に何をすればいいんですか?」
「そうね。シャーマンを説得したり、後、拷問もいいかも知れないわ」
私は笑った。気持ちを切り替え笑うしかない。
「南米へ何とかして行かないと……」
「その息よ。一緒に頑張りましょう。でも、あまり根詰めて考えないでね。心のバランスに気を付けないと。リラックスも必要よ」
「はい」
私は頭に力が戻ってきた。混乱していた神経回路は、今は生き生きと活動する。
「後、真理をよろしくね。弟さん」
「あ……はい!」
私は神経回路がさらに生き生きと、そして高揚した。
20時15分。
霧画に送ってもらい礼を言った。彼女は依頼がまだあるからとどこかへと車を走らせた。
霧の濃い深夜で、物静かになっている空間にどっぷりして考え事をしていると、
「ご主人様!」
安浦がドアを開けると、飛び出してきた。
「心配しましたよ」
「ああ。悪かった」
私は嬉し恥ずかし……少し鬱陶しい。
「もう。ご主人様に何かあったら、あたし」
安浦は涙目になっている。
「ああ。大丈夫さ。ただ単の残業だったんだ」
その途端、安浦はパッと顔を輝かせ、
「危険な戦いじゃなくて、残業だったのですか?」
「ああ」
「それならそうと……連絡」
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