テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「頼んでもないのに助けてくるから、何いい子ぶってんの、あんたもやられるよ、困るでしょって言ったじゃん」
「……そうだったよね」
「そしたらさ、青木さんはいつも可愛くて人気者で私なんて普段なら近寄れないから。こんな時だから、わざと話しかけてるんだよとか笑ってて」
もう10年も前の話を、優里は昨日のことのようにスラスラと話す。
(仲良くなった頃の話なんて、もう何年もしてないのに、優里も覚えてたんだ……)
真衣香は当時を思い出すように目を閉じた。
『私は、クラスに全然仲の良い子できてないから……』
『同じ目にあっても青木さんが一緒にいてくれるなら困ることなんて何もないよね』
そんなふうに言葉を選びながら、しゃがみ込む優里の隣に寄り添った。
クラスが変わって優里を取り巻く環境が好転しても、当たり前のようにいつも一緒にいた。
“青木さんって立花さんみたいなタイプとも仲良くするんだね”って、いろんな人が言ったけど。
優里は蹴散らすように”真衣香は私の恩人で親友なんだから”とお決まりのセリフで黙らせるのだ。
その後真衣香が市外の女子校に、優里は地元の共学にそれぞれ進学したけれど、変わらずに、これまで一番の友達だった、はずだ。
「私には真衣香がいてくれたけど、でも、芹那は誰もいなくて……助けてくれる人誰もいなくて」
優里の声にハッとして目を開けた真衣香は、相槌を打つ。
「……うん」
「当時、同じ境遇だったし同い年だったし、余計仲良くなったんだよ。でも私だけ真衣香に助けられて……自分だけって罪悪感ばっかり募って、今も多分ずっと残ってて」
隣にいる坪井は特に言葉を挟まずに、けれど独り言のように「……ついて回るなぁ」と呟いて、ソファーに深くもたれ大きなため息をつく。
「真衣香の気持ち優先するより、自分の罪悪感だけ、さっさと消そうとしてたんだと思う。ごめんなさい」
優里が言い終わると、しばらく誰も口を開かなかった。
代わりに店内のざわめきが一気に耳に届く。
真衣香は、優里の言い分を理解はした。
……したけれど、そこに感情が追いついてきてくれるわけではない。
「いずれ、坪井くんと芹那ちゃんは優里が何かしなくても会うことになってたかもしれないし……」
ポツリと声を出した真衣香を、優里は首をすくめながら見上げる。