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m ( 低浮
デパートからの帰り道、玲王の専用車の中は異様な沈黙に包まれていた。
山のようなブランドバッグに囲まれ、潔はどこかそわそわとしている。一方の玲王は、窓の外を眺めながらも、耳の先まで赤みが引かないまま、膝の上で拳を固く握りしめていた。
「……着いたぞ」
案内されたのは、ブルーロックの喧騒とは無縁な、玲王専用の豪華な個室。
重厚なドアが閉まった瞬間、密室の熱気が二人を閉じ込めた。
「あの、玲王……さっきの約束、今ここでいいか?」
潔が少し照れくさそうに、でも真っ直ぐに玲王を見つめる。
玲王は心臓が口から飛び出しそうなのを必死に抑え、背中を壁に預けた。
「……ああ。……お前から、しろよ」
玲王は挑発するように言ったが、実際は潔から迫られるなんて想像しただけで頭が真っ白になりそうだった。
潔は、一歩。ゆっくりと玲王に近づく。
「……こういうの、初めてだから。下手だったら悪い」
潔の手が、玲王の整った顔に添えられた。指先から伝わる熱。
潔が背伸びをして、玲王の唇に自分のそれをそっと重ねた。
「……ん……っ、」
柔らかく、熱い感触。
潔の控えめな、けれど確かな熱を帯びた「ちゅっ」という小さな接触。
玲王は脳が痺れるような衝撃を受けた。潔からしてくれた。あんなに憎んでいたはずの、でも今は誰よりも欲しくてたまらない男が、自分に甘く触れている。
「……ぷはっ。……これくらいで、いいか?」
離れようとする潔の顔は、ほんのりと赤らみ、瞳は潤んでいる。その無自覚な色気に、玲王の中の「王子様」は完全に消え去った。
「……んなわけねーだろ。……おい、潔。……口、開けろ」
「え……口?」
潔が不思議そうに、少しだけ唇を割り、隙間を作った。
その瞬間、玲王は潔の後頭部を強引に引き寄せ、深い、深い、貪るような口づけでその隙間を埋め尽くした。
「んんぅっ!? ……ふ、ぁ……っ!!」
潔の驚いたような悲鳴が、玲王の口内へと吸い込まれていく。
玲王の舌が、潔の震える舌を絡め取り、逃がさないように何度も、何度も執拗に弄り回した。
「は……っ、あ、……れお、……んんっ……」
潔の鼻にかかった高い声が漏れる。
初めての感覚に、潔の膝がガクガクと震え、玲王のセットアップの胸元をぎゅっと掴んだ。
長い、あまりにも長い接吻。
銀色の糸が引くほどに深く、潔の肺から酸素を奪い尽くす。
「ふ、……あ、っ……れ……お……っ、んっ……」
潔の瞳がトロンと蕩け、涙が滲んでくる。
玲王はその表情を見て、独占欲がさらに跳ね上がった。
舌先で潔の口内の裏側を撫で上げ、敏感な場所を刺激するたびに、潔の身体がビクンと跳ねる。
「……あ、っ、……ん……んぅうう……っ!!」
蕩けた声を出し、潔が玲王の首に腕を回して縋り付いてくる。
もう嫌いなんて感情はどこにもない。
潔の熱い吐息、苦しげな喘ぎ、そして自分を求める指先の感触。
玲王は、お返しどころか、潔のすべてを今この場で飲み込んでしまいたい衝動に駆られながら、さらに深く、溺れるようなディープキスを繋ぎ続けた。
数分間の濃密なキスの後、ようやく唇を離した潔の姿を見て、玲王の心臓は再び爆発しそうなほどの衝撃を受けた。
「は……っ、はぁ……っ、玲王……これ、心臓に悪いな……」
潔の潤んだ瞳、熱を持って赤く染まった頬。何より、玲王がつけた熱に浮かされて、抵抗するどころかトロンと蕩けた表情で自分を見つめてくるその姿。
(……は? なんだよこれ、反則だろ……っ! 可愛すぎるだろ……!)
玲王の頭の中では「こいつは凪を奪った敵だ」というかつての公式が、音を立てて粉砕されていた。今目の前にいるのは、自分の色に染まり、自分の腕の中で呼吸を乱している「潔世一」という、愛おしくてたまらない存在だけだ。
「……おい、潔。一回でお返しが終わるなんて思ってんじゃねーよ」
「えっ……? まだ、やんのか……?」
驚いて目を丸くする潔。その無防備な唇に、玲王は飢えた獣のように再び食らいついた。
「んんっ!? ……んぅ……っ、ん……!」
今度はさっきよりも激しく、深く。逃がさないように潔の腰をグイと引き寄せ、密着させる。潔の「ふやふや」とした甘い喘ぎ声が、玲王の個室に何度も反響した。
一度火がついた玲王の独占欲は、もう止まらない。
唇を離すと、玲王はそのまま潔の白い首筋へと顔を埋めた。
「っ、……ひゃっ、……な、なに!? 首、くすぐった……あ、っ!!」
「…………じゅっ、……っ」
玲王は潔の柔らかな肌を吸い上げ、思い切り歯を立てて、真っ赤な痕を刻みつけた。
白磁のような潔の肌に、自分の所有物であることを示す「キスマーク」。
「いっ……てぇ……。玲王、今何したんだよ? 跡、ついてるぞ?」
潔が鏡も見ずに首元を押さえるが、そこにははっきりと玲王のつけた紅い証が浮かび上がっていた。
「……別に。お前が『何でもする』っつった証拠だよ」
「えー……? なんか変な感じ。……これ、怪我じゃないよな?」
潔は首を傾げながら、不思議そうにその痕を指でなぞる。天然な彼は、これが「独占欲の塊」であることも、明日からチームメイトや凪、凛、蜂楽に見られたらどんな騒動になるかも、これっぽっちも分かっていない。
「……っ、お前、マジで分かってねーんだな……」
玲王は呆れつつも、その無知さがたまらなく愛おしくなり、顔を真っ赤にしながら潔を再び抱き寄せた。
「いいか、潔。……明日からその跡、絶対隠すなよ。分かったか?」
「え? まあ、隠す理由もないし……。分かったよ」
潔の「全肯定」な返事に、玲王は満足げに、でも少しだけ罪悪感を感じながら、三度目の長い長いキスを落とした。
(……これで、凪も凛も、あいつもこいつも……潔が「誰のもの」か、嫌でも分からせてやるよ……!)
玲王の不器用で、激しすぎる「復讐」は、いつの間にか一途で重すぎる「求愛」へと完全に上書きされていた。