いじめっ子には【教育】を 中編②
僕の日常はに色は無い。正に孤独とも言える空間だ。毎朝5:30に起床し、朝食と昼食用の弁当を作る。ニュースをテレビで見ながら黙々と食べ続け、食べ終えたらすぐにスーツに着替えてマスクを着用し、昨夜磨いておいた革靴を履いて出勤。
ぱっぱと終わらせて定時に切り上げて家に帰る。夕食を作って食べて、筋トレを行いお風呂に入って、教育の準備を進めて22:00には床に着く。
これは独身アラサー男性によるルーティン。慣れてくるとなんだかもうどうにでもなってくる。
まあ今は、ひとりではないのだが。
彼女は体育座りでリビングのソファーに座り込んでいる。すっかり生気が抜けきっており、掛けてあげる言葉が見つからない。それも当然だろう。一夜のうちに両親を失ってしまったのだから。
スマホで先ほどまで見ていたネットニュースをもう一度見返す。
【〇〇区の住宅街で火災。中にいた夫婦死亡。娘行方不明】
最新のニュースで真っ先に出てきたゴシック体の文字が、僕らに昨夜の出来事が夢ではない事を知らしめる。今まで生きてきた中で事件を目の当たりにしたのはこれで2回目だ。天からのお導きか。今まで趣味としてやってきたことへの天罰か。たくさんの人を教育していくとこう言ったことも起きやすくなるのだろうか。
あの時、彼女はこちらで引き取らないとまずいと僕の中の細胞が危険信号を発した。
『早くその子を連れて逃げろ』
『そこから距離を取れ』
急いで彼女の元に駆け寄り、彼女を両の腕で抱えて住宅街から走って逃げた。途中で通りかかったタクシーを捕まえて乗り込み、足取りを掴み辛くする為にタクシーを数珠繋ぎで乗り換えてやっと家に帰って今に至る訳だが、何故自分がそんなことをしたのかなんてさっぱりわからない。ただ直感がそうしたまでだ。今後どうすればいいのかまとまりが付くことは無かった。
一夜明けて時刻は8:42を指している。彼女は依然として起きる気配が感じられない。一夜にして彼女にとって辛い事が起こりすぎた。
「『大丈夫』…なんて、そんな無責任な事は言えないな。」
結局僕は一睡もできずに肩にもたれた彼女を起こさないようにじっとしていた。流石に移動させようと思い、僕は彼女を慎重に持ち上げてそのまま寝室のベットに寝かせた。すうすうと寝息を立てているのでおそらく睡眠状態は安定しているだろう。
運び終えたのちに僕は自室の堅い木の扉を開ける。
ギイィと軋む音、これは悪人に持たせる地獄行きの片道切符の軌道音。
真っ暗な部屋に明かりを付けると蛍光灯のパチパチという音と共に壁にかけられた大量の書類、写真、赤線
作業机の上に置かれた奇妙な器具が目に映る。
ここは主に犯人追及に向けて色々と行う場所。ここにはデスクトップ環境も整っているのでかなり作業が進む。
僕は早速内ポケットから例の金属片を取り出してこの金属はどういうものだったのかを調べるために作業机に置く。
金属に付着している黒い色の液体は鼻を摘みたくなる匂いと火に当たって黒く変色していることからガソリンでほぼ間違いはないだろう。そこから推理していくと、この火事は放火による発生だというのはほぼ明確だ。そしてこの金属片には破片のため一部しか確認できないが英語表記で『火元』と記載されている事から、ガソリン缶だろう。
僕は分かったことをメモに記入してデスクに貼り、電源を入れて早速調べ物を行う。
ホーム画面には様々なファイルが混在しており壁紙が見えないぐらいまでぎっしりと詰め込んでいる。
そろそろ整理した方が良いかもな…
そんなことを思いながらSNS【Potutter】(ぽつったー)を開いて検索で火災の事を調べてみるが、まあ案の定昨日の件は流れてきていない。しばらくマウスでとにかく下にスクロールしていくが、該当するものは特には見当たらなかった。
他のSNSも見てみようと今度は若者を中心に利用されている【instantgram】(いんすたんとぐらむ)で検索をかけようとすると下の画面で『今1番再生されている画像』で見覚えのある画像があった。該当する画像をクリックすると、おそらく火災が起きる前の家と燃えている家に中指を立てている様子。
そしてモザイクもかけられていないまま載せられた、座り込んでいる彼女に書き込まれた文字
『ホームレス乙www』
血が沸騰するぐらいの怒りが湧き上がる。マウスを持った手に力が入ってパキンと音を立ててヒビが入ってしまった。一度深呼吸をして気の乱れを抑えて再び作業に取り掛かる。
投稿には特定の人しかコメントできないように設定されているようだ。叩かれる事は恐れても承認欲求は抑えられなかったみたいだ。
すぐに投稿者のプロフィールを確認する。こう言ったやつはSNSの怖さを分かっていないらしい。名前、在校名、顔まであげている。調べる手間が省けたので、あっという間に彼らの住所や付近の状況までもが判明した。
作業部屋から出て寝室の戸をゆっくりと開けて彼女の様子を伺う。暗いがベットには膨らみが確認されるので、まだ寝ているのだろう。
時計はいつの間にか12時をまわっている。もう昼飯時だ。夜中辺りまで家を開けるので、彼女が腹を空かせてしまわないように軽い食事を作ってテーブルに置く。ラップをかけて、近くにメモを残す。
「いってきます」
小さく言って家を後にした。
ガタン
おとがなってめがさめた。うすぐらいしらないへや。あのスーツのひとがここまではこんでくれたみたいだ。ふかふかできもちいい。
へやからでてきっちんにいくとテーブルにおいしそうなごはんとかみがあった。
『⚪︎あたりまで⚪︎に⚪︎⚪︎けてます。ごはんを⚪︎⚪︎しているので⚪︎し⚪︎がってください。』
…ところどころよめないものがある。たべていいのかな。
すんといきをすうといやなにおいがきた。おぼえのあるとてもいやなにおい。
においのもとをたどっていくときのとびらがすこしひらいている。ひいてあけるとせいけつかんのあるへやとはぜんぜんちがう、とてもちらかったへや。そしてあのにおい。
あたまがいたい。でもにげたくないとなぜかおもった。へやのなかにはいる。いやなにおいとあたまのいたさとたたかう。おおきなつくえになにかがある。においがつよい。げんいんはこれみたいだ。
なにかをおもいだした。
「おとうさん…おかあさん」
わからないけど、いまあのスーツのひとをおいかけないといけない。
なぜかそうおもった。いえからとびだす。あのひとをとにかくおいかける。
Bloody Educationのサムネイル絵コンテ
後日完成したものを投稿します。
そして(2024 3⁄25)♡300ありがとうございます。
これからもぼちぼち頑張っていきます。
無能より
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