テラーノベル
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橙色に染まる街。夕暮れに満ちたこの国の片隅で、私は肩を揺られながら窓から街を眺める。電車。それは、離れ離れの街と街を繋ぐ、ひとつの交通手段であり、憩いの場。
お年寄り、子連れ、サラリーマン、学生、。様々な年代の、様々な立場の人々の乗る電車。
数時間前。私は仕事を終え、電車へと向かう。
気付けば時刻はとっくにいつもの電車の時間を逃していた。
…そこでようやく気付いた。どうやら私は、電車を逃してしまったようだ。
肌寒い町中。私は身震いをしながら駅まで向かう。仕方ないので、いつもより遅い電車に乗る。
塞がる両手と改札口が邪魔をしてきたが、私は早く帰りたいので無理やりにでも電車に乗る。
早く帰らないといけない。
だが今でさえ、眠気、陽だまり、時間。それさえもが、私を電車に引き止めているように感じた。 集団下校する小学生と、暖かく見守る信号機が、哀れむような目で、じっと私を見つめている。
明るい橙色から、薄暗い蒼色に染まりかけている頃。私は、小声でぽつりと呟いた。
「…眠って誤魔化せ。」
コメント
2件
めっちゃ雰囲気いいんだが