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「……はぁ、もう、1ヶ月も休みひとつ無しで働いてる。俺もう死ぬぞこれ……」
オフィスの隅っこのデスクで、白木陽斗は呟いた。目の下には深いクマ、朦朧とした頭。終電はとっくに逃し、今日も会社に泊まり込みだ。
「……なぁ、俺の人生どこで間違えたんだろ」
ふっ、と意識が遠ざかる。
ガタン。
気づけば自分は床に倒れていて、周囲のざわめきも遠のいていった——。
「……きてください……きてください!!」
遠くから、誰かの声が聞こえる。
「ん、んん……?」
ぼやけた視界が段々クリアになっていく。あたりは白く眩しい光で満たされていた。
そして、目の前には浮かぶように立つ女性。透き通るようなローブに、柔らかな金の髪。まるでアニメで見た“女神”のようだ。
「えっと……俺、死んだんだよな……?」
「うん、死んじゃった♪ ブラック企業で酷使されてたら、そりゃあ寿命も縮まるってものよ」
淡々と言うその声に、思わず苦笑いが漏れる。
「あー、これって……あれか、異世界転生のお約束パターン?」
女神はニコリと微笑んで頷いた。
「そう!私は女神・ミリィ。あなたの転生先を決めてあげるから、選んでね。ただし……何でも転生できるわけじゃないの。今から言う3つの中で選んでね」
「そ、そうなんですか?」
「一つ目!ゴブリン!」
「ゴブリン……はい」
「二つ目!キノコ!」
「き、キノコ?」
「三つ目!ドラゴン!!」
「え、それ絶対ドラゴンが良いです!無敵っぽいし強そうだし、お願いしますドラゴンで!」
女神は、くすっと笑ってパチンと指を鳴らす。
「りょうかーい!じゃ、ドラゴンにレッツ転生!」
光がオーロラのように渦巻き始める。
「うわ、まぶしっ——」
次に目を覚ました時、陽斗は自分の体が不思議な感覚に包まれていることに気付いた。
「ん……?あれ?ドラゴンってもっとゴツいはずじゃ……?」
目の前に見えたのは細く白い手。しかも腕の先には……キノコらしき傘部分が。
「な、なんだこの手!?あ、足も……細っ!しかも真っ白じゃん……」
混乱しながら、ふと地面におかしな影が落ちているのに気づく。
その影の形は——どうみても手足の生えたキノコだった。
「……え、これって、ドラゴンじゃなくないか?」
戸惑いながら、脳裏でステータスウィンドウが開かれる。
【名前】モルグ・マッシュ
【種族】人型キノコ
【外見】キノコに手足が生えた感じ。身長約120cm
【スキル】胞子放出
「あ——ッ!これ絶対間違ってるだろ!?ゴブリンでもドラゴンでも無い!しかもよりによってキノコだなんて……!」
陽斗は天を仰いで叫ぶ。
「お、おいクソ女神ぁ!!ふざけんなぁぁぁ!!!」
こうして、白木陽斗、いや新生“モルグ・マッシュ”の異世界人生がスタートした。……不本意すぎる転生ライフ、その先に待つのは一体!?