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「……特殊捜査班?」
「そうなんっすよぉ〜、最近計画されてるってゆー話を聞いたんっすよ〜」
自分でも〝真面目〟という肩書きが似合うと感じている30代前半の警察官、片山は、飲み会の最中、何故か慕われている後輩の話を聞いていた。
「特殊捜査班というと……重装備で現場に突入する、SITのようなものか?」
「いやぁ〜まぁ、……そうなんすけどそうじゃないというかぁ〜……」
「……何か違う、より特殊なものなのか?」
「らしいっすよ?」
「………ほう、」
「お、珍しく興味持ちましたねぇ〜?片山サン」
「持ってなどいない………ただ相槌をうっただけだ………」
「ふぅ〜〜〜ん?へぇ〜〜〜」
「……何だその言い方は…………」
そこまで自分は冷酷な人間だったのか………?と思った片山を他所に、後輩は話を続ける。
「それがですねぇ〜、名前の通り〝特殊〟ではあるんっすけど〜、身を挺して突入してく部隊?班?ではなくってですねぇー…………………………」
「……………浅田?」
「…………………」
俯いたままの後輩に声をかけても返事が無く、そのうちいびきが聞こえてきた。
「はぁ…………」
ため息をついた片山は、寝始めた後輩を起こそうとしながら少しばかりそのものに興味を持っていた自分にまたため息をした。
「………今なんとおっしゃいましたか」
「え?だから特殊捜査班の第一人者になって欲しいんだよ、片山颯(かたやま はやて)くんに」
つい昨日聞いたことのある言葉に戸惑いを隠せない。
「………失礼しました」
詳細はまた今度伝えるから、と言われ、とりあえず署長室を出た。まだ信じられていない。
「………はぁぁ………………」
最近ため息ばかりが出てしまう。仕方ないと思う。何故ならこの有り様。前向きに過ごすことなんてできるはずがないのだ。
「あ、片山サーン!おつかれっす!」
いっそコイツのように生きることができれば……と思ったり思わなかったり、だ。
「何してたんすか〜?もしかしてお呼び出し…?いくら片山サンでもそんなことあるんっすねー……」
「早とちりをするな………少し用があったんだよ」
「あ、もしかして特殊捜査班?」
妙に勘が鋭いのも浅田の特徴である。図星ではあるが、正直に言うと後にとんでもないことに巻き込まれそうな予感がしてならないため、黙っておくことを選択した。
「………そういう浅田はここで何をしていたんだ?」
「あー、誤魔化しましたねー?
………俺っすか?俺も呼び出されたんっすよ〜、部長に」
「何故…………ってまさかお前……」
「特殊捜査班っす!いや〜念願が叶いました!!」
「………はぁぁぁぁ………………」
今まででついたことがなかったほどの特大のため息をつく。こうなったらもう〝お終い〟だ。
「も〜またまた片山サンため息ついちゃって〜、悩みなら俺が聞きますよ〜?」
だったらもう転勤してくれ、と思うが一応胸にしまい込んでおく。
「…………いい……」
「溜め込まないでくださいよ?」
「……あぁ………」
そんな会話をして、浅田は部長室に、片山は仕事に戻った。
「…………………ところで、部長からの説明も殆ど無かったのだが、一体その〝特殊捜査班〟というものはどういうものなんだ?」
半ば強引に浅田と休憩を共にしている片山は、ずっと疑問にあったものを問う。
「あ〜、それがですね〜……
〝突入〟ではなくて〝潜入〟らしいっすよ?」
「…………は?そんなものに俺は頼まれたのか?」
「はい」
「経験も上手く誤魔化せる術も持ち合わせていないんだが……」
「片山サンならいけるっすよ!」
「無責任なことを………」
「まぁー、でもその潜入する所にもよるんじゃないっすか?」
「確かにそうだな………」
「片山サンは配達員とかなら良いかもしれないっすね!」
ハハハハハ、と笑う失礼な後輩を横に、またため息をつく片山だった。