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「一弥先輩は私を悪者にするんですか? 悪いのは恭香先輩なのに?」
確かに、先輩にフラれて寂しかったのは本当のことだ。あの時、私は本当に苦しくて、悲しくて、つらかった。
いっぱいいっぱい泣いたのも事実。
そのくらい、大好きな人だったから――
だけれど、2人の仲を壊すなんて、そんなことは絶対にしない。
「梨花ちゃん。私はね、一弥先輩を誘惑できるような魅力があるわけないじゃない。菜々子先輩はあんなに美人だし。私が菜々子先輩にかなうわけないって、ちゃんと自分でもわかってるつもりだよ。梨花ちゃんだって、そう思ってるんでしょ?」
必死になって弁解してる自分が悲しい。
一弥先輩も聞いているのに……
「ですよね。菜々子先輩みたいな美人に絶対にかなうわけないのに、恭香先輩が一弥先輩にグイグイ近づいて。どんな手を使ったのかわからないけど、気づいたら2人は別れてて。結局、一弥先輩は優しいから菜々子先輩をフッて恭香先輩に乗り換えたんですよね」
梨花ちゃん、どうしてそんなひどいことが言えるの?
私のこと、そんなに嫌いなの?
梨花ちゃんに何か嫌われるようなことをしたの?
どんどんたくさんの疑問が湧いてくる。
「梨花ちゃん、本当にそれは違うんだ。それに言い方に気をつけないとダメだよ。君の言い方は人の心を傷つけてることに気づくべきだよ」
「そんな……。一弥先輩、ひどいです。恭香先輩の味方をするんですかっ」
「味方とか、そういうことじゃないよ。恭香ちゃんも梨花ちゃんも、僕にとってとても大切な仲間だと思ってる。みんながいがみ合っていたら、良い仕事ができない。だから、一緒に仲良く頑張っていきたいんだ。その方が気持ち良いよね?」
一弥先輩、今度は梨花ちゃんに優しい言い方をしている。
こういう人なんだよね。
結局、誰にでも優しくて。
そういうところに私も惹かれたんだ。
「一弥先輩。結局、恭香先輩の味方してますよ。どうして恭香先輩にそんなに優しいんですか? 美人でも可愛いわけでもないのに。菜々子先輩の方が絶対素敵なのに、どうして別れたんですか? 全然理解できないです。おかしいですよ、こんなの」
必死に訴える梨花ちゃん。
ここまでハッキリ言われたら、もう何も言い返す気になれない。
「正直、今は自分の気持ちを無理に抑えようと頑張ってる。でも、それ以上言うと、僕も声を荒らげてしまう。本当に止めよう。恭香ちゃんの容姿をそんな風に言うなんて、同じ女性として恥ずかしいことだよ」
一弥先輩……
「ひどい! 一弥先輩も恭香先輩も。2人で私のこといじめて!」
「梨花ちゃん、あのね。私達は梨花ちゃんをいじめてなんていないよ。ただ、ありもしない噂を流さないでほしいの。みんなが誤解するようなことは止めてほしい。ただそれだけだよ」
「才能がないクセに後輩に嫉妬して意地悪して。一弥先輩も亮君も、それに本宮さんも、みんな恭香先輩に騙されてるんです。最低です!」
すごく悲しい――
梨花ちゃんに嫉妬して恨んだりするがわけない。
可愛いと思って接してきた後輩だったのに……
もう、正直、泣きたい。
「梨花ちゃん、本当にいい加減にしてくれ。僕は、恭香ちゃんに騙されてなんかいないよ。恭香ちゃんはそんな子じゃない。本当にすごく優しい子なんだ。だから……」
「は? だから? だから何なんですか?」
梨花ちゃんは相当イライラしているようだった。
「僕はね……僕は……」
「だから何なんですか? ハッキリ言ったらどうなんですか!」
「僕は! 僕は……恭香ちゃんのことが……」
「えっ……」
一弥先輩?
何を言おうとしてるの?
「好きなんだ」
「えっ!?」
私と梨花ちゃんの2人が叫んだ。
「梨花ちゃんが言ったみたいに、僕が恭香ちゃんに誘惑されたんじゃない。僕は、本当に……心から恭香ちゃんのことが好きなんだよ」
え……
一弥先輩?
そのあまりにも突然過ぎる言葉に、私と梨花ちゃんは動揺を隠せなかった。