テラーノベル
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会議室は、空気が物凄く悪かった。
それはもう悪かった。
怒声。
苛立ち。
言葉の刃がテーブルの上で跳ねている。
誰かが机を叩いた、その瞬間。
「……あの」
小さな声。
全員が、声の主を探してから気づく。
いつからそこに?
椅子にちょこんと座る
幼い少女。
淡い色のドレス。
背も低く、年齢も若く見える。
それなのに
表情は、やけに落ち着いていた。
微笑んでいる。
でも媚びていない。
余裕があるというより
結論を知っている人の顔。
「お話、少し整理してもいいですか?」
反論しようとした誰かが
なぜか口を閉じる。
彼女はメモも取らない。
視線だけを、順番に動かす。
「こちらは誤解ですね」
「ここは譲れない、と」
「……でも、それは今だけの話ですよね?」
責めない。
否定しない。
声も上げない。
ただ、静かに配置を変えていく。
数分後。
あれ?
いつの間にか、喧嘩が終わっていた。
さっきまで対立していた二人が
同じ資料を見ている。
誰かが、ぽつりと呟く。
「……丸く、収まったな」
少女は、ほっとしたように微笑んだ。
「よかったです。
皆さん、ルリよりずーっと、大人ですから」
そう言って立ち上がる。
去り際、誰かが名前を聞こうとして
もう、いなかった。
後日。
裏で囁かれるようになる。
「揉め事?なんだ、そんなことか」
「ああ、静謐の調停者がいたらしいぞ」
本人は今日も
どこかで静かに微笑んでいる。
「オレンジジュース美味しいですね」
「子供っぽい?」
「そうですよ、ルリは子供なのですから」
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