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朝、ジョージが餌やりに来る少し前から、俺は身体を痙攣させていた。
横たわった姿勢を取り、身体全体で痙攣する。さらに、ヨダレまでダラダラ垂らす。
飯を食っていない身体で、ヨダレを垂らすのはキツイが、命懸けなので必死で絞り出す。
そんな様子を見て、白豚は嘲りの表情を向けてくる。だが、今はそれどころではない。
何としても病気を装い、処分を回避しなければならない。
それにしても遅い、遅すぎる。
いつもなら朝飯がもう届いているはずだ。
ずっと痙攣しているせいで、足と腰がつりかけている。もう限界だと思っていると、バタバタバタバタとジョージが入って来る。
いつもより後頭部の髪の毛が跳ねている。寝坊だ。俺は怒りを覚えたが、早く俺に気づいてくれれば、それで良かった。
しかし、ジョージはいつも通り米粒を投げてくる。
俺の事が目に入らないはすがないのだが、一向に気にとめる様子はない。
俺はブヒーブヒーと痙攣したまま鳴いてみる。ジョージはニカッと笑って柵を越え、こちらに歩み寄る。
『ほらよっ』とお碗を出してくる。
俺は痙攣しながら、下目遣いでそれを見る。
お碗からは湯気がでており、米粒もいつもよりふっくらしている。
『お前元気無かったから、おかゆにしたよ』とジョージは笑みを浮かべている。
俺は痙攣しながら、涙を流してしまった。
素直にその気持ちが嬉しかった。
俺は一瞬迷ったが、この気持ちを無下にしたくないと思ってしまった。
無下にしては、本当の意味で高尚な豚にはなれないだろう。
俺はスクッと起き上がり、お碗に食らいついた。さすがに熱い、熱かった。
だが、いつもの米粒より旨い。それに、何日も食べていない身体に沁みる。
ガツガツ食っていると、ジョージは頭を撫でて来る。『美味しいか、美味しいか』と聞いてくる。
俺は答えるようにブヒーと鳴く。
ジョージーは満足そうに頷く。
またガツガツ食べ始めると、
『お前に愛着が出てきたのに、明日でお別れか』とジョージが呟いた。
思わずジョージの顔を見上げる。
『トニーさんが明日お前の事、食べるってよ。最後くらい、良い物食べさせたくてな。』
瞬間、頭の中が真っ白になる。
あれほど美味しかったおかゆの味も、もうしなかった。