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「もう帰るのか?」
「あ、あの……」
あまりにイケメン過ぎる月城先輩の姿にドキドキして、思わず後ずさりした。
美咲はそんな私の肩を叩いて、ニヤニヤしてさっさと帰ってしまった。
嘘……、私、本当にどうしたらいいの?
入口辺りに立ってる私達の周りには、他に誰もいない。こんなイケメンとツーショットなんて心臓が口から飛び出しそうだ。
「穂乃果。これから時間ある?」
「え……あの……」
私がまだ言いかけてる途中で、「あるなら俺に付き合って」と、半ば強引に私の腕をサッと掴んでそのまま店を出た。
「あ、あの、どうしたんですか? どうして私なんかに声かけるんですか?」
不思議過ぎて思わず聞いてしまった。
その瞬間、先輩は私の腕を離した。
「穂乃果の髪、俺に触らせて」
え??
「か、髪の毛ですか?」
「ああ。この近くに店があるから」
そう言って、先輩は右手をあげてタクシーを止めた。
「乗って」
私を先に後部座席に座らせてから、先輩もタクシーに乗り込んだ。
ちょっと強引過ぎない?
うわ……密室になって気づいた。先輩、すごくいい匂いがする。
これって、月城先輩がつけてる香水?
素敵な大人な香り、何だろう……
上手く表現できないけど、ついつい先輩の身体に顔を埋めたくなるような、そんな惹き付けられる香り。
ちょっとフラフラってなる。
男性の香りにこんなにもドキドキするなんて初めてだ。
「あの、お店って、まさか月城先輩のお店ですか?」
「ああ」
美咲が言ってた、先輩の経営する美容院は都内に5店舗もあるって。31歳の若さで、とても信じられない。
「そこに行くんですか?」
「そうだ」
先輩は、それ以上、何も言わない。
すごく気まずい空気が流れてる……
どうしよう……特に彼氏もいない私だけど、でも、男性と2人きりなんて……
店に着いて、鍵を開けて中に入る先輩。
灯りを付けてから、私を中に呼び込んでくれた。
すごく広くて綺麗な店内、オシャレな雰囲気にちょっとたじろいだ。私の勤める美容院とは、全くレベルが違う。
派手ではない洗練された内装にもこだわりが感じられるし、先輩のセンスがうかがえる。
あまりにも素敵過ぎるよ――
「ここに座って、穂乃果」
さっきまでとは少し違う、優しく甘い先輩の声。
思わずキュンとしてしまう。
私は言われるままに、施術用のチェアに座った。
目の前には大きな鏡。美容院なら当たり前だけど、そこに改めて自分が写ってるのを見ると異常に恥ずかしい。
「すみません……」
「なぜ謝る?」
「だって、こんな予約も取れない素敵なお店に私なんかが……」