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ドアがノックされた音がした。
ソファから跳ね起き、嬉の感情を隠せないままドアに駆ける。
「よう、──いい女になったな」
「ちょっとそれどういう意味?」
頭から足先まで舐めるようにみた彼に少し顔をしかめ、まあいいけどと腕を絡ませる。
ぽっと頬を赤くした彼女の頭を彼は優しく撫でた。
彼女、ローラ・アレンは、出身地であるカナダから両親と離れた、このニューヨーク郊外に住んでいる。
彼、マシュー・ケラーは、以前ローラを助けた人物。それ以来数年に一回会っているのだが、彼には重大な秘密があった。
──詐欺師で、殺人を犯したことのある犯罪者だということ。
実はローラは、この秘密を知っていた。
しかし何されるか分からないのに、こうやって会っているのだ。
不思議で不思議で、ケラーは尋ねていた。
「お前は何で俺と会ってる?」
え、とウイスキーを飲む手を止め、ローラは微笑みかけた。
ローラには当時彼氏がいた。彼の家はとても裕福で、ローラの家も彼と負けないほどであった。
将来結婚するであろうと思われていたのだが、彼の性格は我慢できるものではなく。
どちらの両親も別れることは許してくれず、自分か彼が死ぬしかないと思っていた頃。
金銭目的で、ケラーが彼を殺した。
「それがきっかけで私は両親と離れることができたし、恩人でしかないからかな?」
グラスの氷をカラカラと鳴らしながら、緑が多めの風景を見て息をつくローラ。
ケラーが腰に手を回すと、イヤらしいなぁと笑った。
「殺されるかも知れないんだぜ」
「あんたにだったら、何されてもいいよ」
ローラは、ウイスキーにケラーが毒を仕込んでいるのを知っているのだろうか。