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#5 知らない記憶
〜警視庁 捜査一課〜
「今日から一人で動かないで」
柔太朗の言葉が、頭の中で何度も繰り返されていた。
事件になれば冷静な柔太朗。
でも、あんなに真っ直ぐな表情で言われたのは初めてだった。
🩷「……」
机の上には例の写真。
赤い文字。
『思い出せ』
そして、さっきの電話。
『今度は守れないぞ』
誰が。何を。守れないって言ったんだ?
🩷「はぁ…」
🤍「ため息多いね」
🩷「出ちゃうんだもん」
🤍「珍しく元気ないじゃん」
🩷「そりゃそうだよ」
柔太朗はコーヒーを2本買って戻ってくると、1本を俺の机に置いた。
🩷「俺の?」
🤍「うん、勇ちゃんの」
🩷「ありがとう」
🤍「温かいうちに飲みな?」
🩷「なんか今日優しくね?」
🤍「いつも優しいよ」
🩷「それ自分で言う?」
🤍「勇ちゃんが気づいてないだけ笑」
🩷「そうなのかな」
🤍「そうだよ」
🩷「じゃあ信じる」
🤍「素直だね」
🩷「柔太朗が言うなら」
柔太朗は少し照れくさそうにして笑った。
🤍「そういうこと普通に言うよね」
🩷「思ったことだから」
🤍「勇ちゃんらしいね」
その時。
課長がフロアへ入ってきた。
課長「佐野、山中」
🩷「はい」
🤍「はい」
課長「新しい情報が入った」
ふたりで立ち上がる。
〜会議室〜
課長は1枚の資料を机の上に広げた。
そこには古い住宅街の地図。
数箇所に赤い丸がついている。
🩷「この場所は?」
課長「7年前、少年が最後に目撃された場所だ」
🤍「全部徒歩圏内ですね」
🩷「共通点は?」
課長「それはまだ分かっていない」
柔太朗は資料をじっと見つめる。
目線が地図の一点で止まった。
🩷「柔太朗?」
🤍「…この公園」
🩷「知ってる?」
🤍「いや、」
少し沈黙を置いて続ける。
🤍「でも、気になる」
🩷「なんで?」
🤍「説明できない」
🩷「またその感覚?」
課長「行ってみるか」
🩷「はい」
〜7年前の目撃現場・公園〜
夕方。
住宅街の小さな公園。
ブランコが風で揺れている。
人影はほどんどない。
🩷「普通の公園だね」
🤍「そうだね」
🩷「ここで最後に目撃されたってことか」
柔太朗はゆっくり周囲を見回していた。
遊具。街灯。古いベンチ。
何かを探すように。
🩷「柔太朗、何見てんの?」
🤍「景色かな 」
🩷「景色?」
🤍「昔来たことある気がする」
🩷「えっ」
🤍「でも思い出せないんだよね」
🩷「俺もそんな感じなんだよな」
ふたりで歩き始める。
すると、公園の隅に小さな花束が置かれているのが見えた。
🩷「花?」
🤍「最近置かれた感じだね」
近づく。
花束の下には写真立てが。
中には、あの少年の笑顔があった。
🩷「……」
🤍「命日じゃない?」
🩷「え?」
🤍「花が新しい」
🩷「じゃあ誰が」
その時だった、後ろから声がした。
「その子を知っているの?」
2人同時に振り返る。
年配の女性が立っていた。
🩷「こんにちは」
女性「刑事さん?」
🩷「はい」
女性は写真を見つめ、小さく頷いた。
女性「毎年ね」
🩷「毎年?」
女性「誰かが花を置きに来るの」
🤍「誰が来るんですか?」
女性「顔は見えないの」
🤍「見えない?」
女性「いつも夜だから」
🩷「7年間ずっと?」
女性「……うん」
柔太朗と目が合う。
7年間。毎年。
誰かがここに来ていた。
🩷「その人、男ですか?女ですか?」
女性「分からない」
🩷「特徴は」
女性は少し黙り込む。
そして静かに言った。
女性「黒いパーカーを着ていた気がする」
🩷「……!」
🤍「勇ちゃん」
🩷「現場の映像」
🤍「うん」
フードの人物。同じ格好。
偶然とは思えなかった。
その夜。
〜警視庁・資料室〜
俺は花束の写真を見返していた。
柔太朗も隣で資料をめくる。
静かな時間。
🩷「なあ」
🤍「ん?」
🩷「俺たちってさ」「絶対この事件に関わってるよね」
🤍「たぶんね」
🩷「なんか怖くね?」
柔太朗は少し考えてから言った。
🤍「怖いよ」
🩷「え?」
🤍「怖くないわけない」 「でも一人じゃないから」
🩷「ん? 」
🤍「勇ちゃんがいるし」
俺は思わず笑う。
🩷「それ俺の台詞だと思ってたわ笑」
🤍「先に言っちゃった笑」
🩷「ずるいなあ」
🤍「たまにはね」
🩷「じゃあ俺も言う」 「柔太朗がいるから俺も頑張れる」
柔太朗は少し目を丸くして、それから優しく笑った。
🤍「…ありがとう笑」
その時、資料の間から1枚の古い封筒が滑り落ちた。
🩷「また?」
拾い上げる。
差出人はない。
中には、一枚の写真。そこには7年前の公園。
そして、 “遊ぶ2人の少年”。
🩷「これ……」
🤍「勇ちゃん」「その右…」
🩷「……」
写真の端。木の陰。
黒いフード姿の人物が、じっとふたりの少年を見つめていた。
まるで、7年前からずっと。
俺たちを監視しているかのように──。
【#5 知らない記憶 終】
コメント
1件
ああ、第5話読み終わりました!柔太朗が「怖いよ」「でも一人じゃないから」って言うところ、じんわり来ましたね…。勇ちゃんが「それ俺の台詞だと思ってた」って笑うところも、もう相棒の信頼関係がしっかり描かれていて、読んでて温かい気持ちになりました。そして最後の写真、7年前から黒いフードが見つめてるって…背筋が寒くなりました。ふたりの失われた記憶と花束を置く人物、続きがすごく気になります!