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「今から一時間図るからその本でなにかして見せてちょうだい」
腕を組みながら、眉間にしわを寄せる姿は偉人そのものだ。選択肢から顔を背けるように本を抱える。
「私から背けて何をしているのかしら。絵でも描いた?文字を書いた?私を遊んだつもり?寝ていたのかしら?何もしなかった?考え事をした?本を見つめてた?妄想した?ほ苦いかしら?指遊び?運動?」
彼女はいつも僕が行動する前に、選択肢を差し出す。まるでテーブルの上に並んだカードを取れと言っているようだ。手札には机上に選出されたものと同じものがあった。でも、僕は指ひとつ動かさなかった。
「分かった、それ以外が答えね」
彼女はしきりに始めたばかりのゲームを終わらせようとする。
「ついに何も答えなくなったのね。選ばないを選んだ。私の勝ちね」
目の前のカードが回収されそうになる。
「選んでないよ」
僕は自身の手札を見せるように言った。
「は?選んだんじゃないのかしら?」
彼女はゲームで言うならばお手付き状態だ。
「まだ1時間経ってないよ」
言葉を発してから、まるで周りの視線がこちらに集まるくらいの時差があった。
「ふーん…言われてみればそうかもしれないわね。なに、持ちの一時間丸々使うつもりなのかしら?」
勝者を欲するにしては、相手を気にかけているような余裕はないように見える。まるで、僕の一手が局面を変えてしまわないか不安そうだ。
「あなたは選択外を選んだのね。じゃあ、もう一度行きましょう。今度は時間内に決めなさい。当たり前のこと過ぎて、言うのを忘れていたわ。答えるための条件よ」
的はずれな彼女は敗者も同然に見える。けれど、質問者兼ゲームマスターには従わなければならなかった。
「私に合わせてよ。私で測る時間軸よ。こうやって貴方は私の言いなりを避ければ自由を消されていくのよ。ちゃんとルールは守ってよね」
彼女の隠し持っていた最後のカードを見た。それはジョーカーという局番をひっくり返すもののようだった。