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みえりな@多忙の為あまり居ない
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全て話し終えた頃山中は怒りで爆発しそうだった。チームのリーダー吉田だけでなく、これまで最前線で頑張って来た最年長の佐野までもがその女優のせいで心をボロボロにされているからだった。
佐野は何とか涙をこぼさずに話し切ると山中を恐る恐る見た。自分には泣く資格はないからと我慢していた。チラ見した山中から発せられる真っ黒いオーラに佐野は怯えた。いつも何があってもいつも周りに気を配りニコニコと優しい笑顔を振りまいている山中から放たれているとは到底思えなかった。
「そんなことがあったんだね。許せないね。」
「お、おう、……柔太朗怒ってる?」
「え?当たり前じゃん。」
「そ、そうだよな。ごめん。」
「うん。はやちゃんも悪いよ。さっさと相談してくれたら良かったのに。一人で抱え込んじゃって。結局限界になってるじゃん」
佐野はぐぅの音も出なかった。でも今、山中が話を聞いてくれたことで確実に佐野の心は軽くなった。
自分の軽率な行動が結果、チームを、愛する人を傷つけてしまった。
「てかあそこまで言う必要あったの?じんちゃんほんとにショック受けてたよ。」
「……仁人から離れるにはこうするしかないんだよ。中途半端に振ったら期待させるだろ。」
「ふーん。離れるつもりないくせに?」
山中には全てお見通しだった。佐野が吉田から離れるつもりなど微塵もないこと。強がりでそんなことを言っていること。
「……はやちゃんはじんちゃんに言うつもりは無い?」
「無い。こんなこと話せるわけねぇよ。てかもう俺多分仁人に嫌われたし。」
「それは本人に聞いてみないと分からないでしょ。」
山中は「これからどうしよっかなー」なんて思ったより呑気に考えている。チームの危機だと言うのに大丈夫かこいつはという目線を佐野は山中に向ける。それに気付いているのか気付いてないのか、山中は佐野の手を引き楽屋に引っ張る。
楽屋の目の前まで来たところで佐野の足がピタッと止まった。山中の腕をグッと引っ張り、それ以上進むことを許さなかった。山中は振り返り佐野の背中を思いっきり叩く。バシンっと誰もいない廊下に音が響く。
「ったぁ!?お前!何するんだよ!」
「はやちゃんらしくないよ!なよなよしてないで真正面にぶつかんなよ!!」
そう山中が言うと同時に楽屋の柔らかい雰囲気の中に突き落とされる。佐野が入ってきたことでその雰囲気が一気に冷えていった。その事実が余計に佐野の心を苦しめた。曽野と塩﨑は無意識に吉田の前に立ち、佐野から遠ざけようとする。吉田も不安そうな目で佐野を見上げた。
チームのために、愛する吉田の為に嫌われ役を自分から買って出たくせにいざ嫌われると苦しい。そりゃそうだ。M!LKを愛しているのだから。つい数日前まではカメラの前でも移動の車の中でも5人でわちゃわちゃしていたというのに。今はどうだ。楽屋の空気は最悪中の最悪だった。佐野が全ての元凶になってしまっている。
山中が入ってきてもう一度佐野の背中を叩く。さっきよりは少し優しく。
それでも成人済みの男がそこそこの力を込めて叩くのだからなかなかの衝撃だった。
佐野はタイミング悪く息を吸っていたためむせてしまった。
「うっ!ごほっごほ、げほっ!おいっ、!柔太朗またお前やりやがったな!」
佐野の怒鳴り声に3人が体を強ばらせるのが佐野の視界の端っこに映った。
何があったのか言いたいのに。全て言って楽になりたいのに。怖がる3人を見て言葉が出てこなかった。自分に怯える3人を見ていたくなくて楽屋から飛び出す。背中の方から山中の声が聞こえたが聞こえないフリをして走った。
「なんではやちゃん連れてきたん柔太朗。」
カメラの前で見せる塩﨑と別人のように冷静に静かに問いかける。怯える曽野と吉田の前に手を広げ、山中を睨む。
「答えてや柔太朗。柔太朗も仁人を傷つけたいん。」
「ち、違う!!俺はそんなつもりじゃ…。」
「太智…。俺は大丈夫だから。柔太朗。勇斗の話聞いてくれたんでしょ。ありがとう。」
吉田は震える手で塩﨑の服の裾をそっとつまみ、山中に感謝を伝える。内容は何も知らないはずなのに感謝を伝える吉田に山中は自分の行動を後悔する。まだ二人を会わせるには早かった。
コメント
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山中が佐野の背中を叩くシーン、めちゃくちゃ良かったです。「なよなよしてないで真正面にぶつかんなよ!」って、ああいう叱咤こそ本当の優しさだなと。佐野が「離れるつもりないくせに?」って見抜かれてるのもグッときました。チームのために嫌われ役を買って出たのに、実際に嫌われると苦しいっていう心情描写がリアルすぎて切ない。吉田の「ありがとう」が震える手と合わさって、もう泣きそうになりました。守りたい人がいる強さと弱さ、のりもちさんらしい温かい人間ドラマでした。