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#怪異
阿炎快空
123
リユ
232
#ダークファンタジー
阿炎快空
82
阿炎快空
111
僕と蒼梧が鳥居を潜った直後、汐梨さんの声はぱったりと聴こえなくなった。 振り返ると、ちょうど鳥居が塵となって崩れ去るところだった。
先ほどまでそこにあったはずの住宅街は、既に影も形もない。
——門が、完全に閉じたのだ。
「ここが境の世界か?」
「うん」
霧で見通しは悪いが、前に訪れた時からほぼ変わりないように見える。
ポケットに入れていたスマホで確認してみるが、当然のように表示は圏外であった。
「蒼梧」
「ん?」
「ありがとう、ついてきてくれて」
僕の感謝の言葉に対し、蒼梧は笑って、
「『ごめん』なんて言ったら、蹴っ飛ばしてたぜ」
と答えた。
「それに、別にお前や椎名の為だけに来たってわけじゃないんだ」
「どういうこと?」
「さっきの俺、様子がおかしかっただろ?」
鳥居を眺め、呆然自失となっていた時のことを言っているのだろう。
本人にも自覚はあったらしい。
「何だか急に、〝誰か〟に呼ばれてるような気がしてさ」
「〝誰か〟?」
「ああ。どうしても、鳥居を潜らなきゃいけないような気がしたんだ。体の奥から力が湧き上がってきて——気が付いたら、全員をぶちのめしてた」
蒼梧が見ていたのは、鳥居そのものではなく、鳥居の向こう側で呼ぶ何者かの気配だった——ということだろうか?
「で?例の猫を埋めたのは、ここなのか?」
「うん。確か、ちょうどその辺に——」
と、すぐ近くの地面を指差した僕は、そこで言葉を切った。
指の先——霧の向こうにぼんやりと、僕の身長程の木の影が見えたからだ。
近づき、目を凝らす。
その木は、僕がオーマを埋葬したあたりから生えていた。
幹がくねくねと曲がり、あちこちから枝が伸びている。
葉の色は二種類で、それぞれがオーマの体毛と同じオレンジと黒。
更に根元には、オレンジと黒が斑ら模様になった、大きな実らしきものが転がっていた。
実はラグビーボールくらいの楕円形で、まるで内側から破られたかのように大きな穴が空いている。
僕は、オーマの言葉を頭の中で反芻した。
——この世界の猫は、死んですぐ土に埋めてもらえれば、蘇ることができるのです。心臓から植物の芽が出て、やがてその芽が木となり、枝についた実から、記憶を引き継いだ新しい私が生まれます。
「そいつが、猫が産まれ直す、っていう例の実か?」
「たぶん、そうだと思う……でも……」
「でも?」
「たしか、蘇るのには遅くて半年——早くても数ヶ月かかる、って言ってたんだけど……」
あれからまだ、二週間ほどしか経っていない。
「もしかしたら、産まれる前に獣にでも食べられちまったのかもな」
蒼梧が縁起でもないことを呟く。
「だとしたら可哀想だけど……悲しんでる暇はないぞ?」
「……うん、わかってる」
オーマには申し訳ないが、今は由宇を助けることを第一に考えなければならない。
僕は実から離れると、木々の間から山の周囲を見渡した。
相変わらず霧が立ち込めてはいるものの、この間に比べるとだいぶ先まで見通せる。
どこかの国のスラム街の様なビル群に混じり、現代アートみたいに歪な形をした塔や、日本の五重の塔のような建造物、モクモクと紫色の煙を撒き散らす工場なんかもある。
天には黒く輝く暗黒の太陽が燃え、鴉の群れが飛び交っていた。
翼の生えた半透明の鯨のような生き物が優雅に空を飛び、その向こうには黒い光沢を帯びた謎の立方体が宙に浮かんでいる。
「行こうぜ、修」
奇妙で奇怪な異界の街を見下ろし、蒼梧が言う。
覚悟を決めて、僕は頷いた。
「うん——行こう」
コメント
1件
ああっ、第30話めっちゃ熱かった…!😭💕 蒼梧が「ごめんって言ったら蹴っ飛ばしてたぜ」って言い返すシーン、マジで男の友情って感じで胸熱すぎた…!あと蒼梧も〝誰か〟に呼ばれてたって流れ、伏線っぽくて震える…! オーマの木と実の描写もリアルで、もう二週間でこんなに育ってるの?!って驚いたけど、実に穴が空いてて中身がいない…ってのがもう切なすぎる😢 でも由宇を助けるために前に進む決意、最高のラストだったよ! 異界の世界観も相変わらず綺麗で、暗黒の太陽とか翼ある鯨とか、想像が膨らみまくった…! 次話も絶対読むからね、阿炎先生🔥