[ただいまー]
[おー!久しぶりの我が家やー]
『 モノの場所は変えてないから安心してね』
ふわっちが病院から退院した後
無事に家へと戻ってきた
俺とふわっちは同じ家に住んでいる
いわゆるルームシェアというやつだ
[久しぶりすぎて初めましてやな!]
『 …何言ってるの?笑』
いつもの脳死ふわっち
よかった、少し安心する
保護されて病院にいる間は
ずっと窓の外を眺めて、
どこか遠くを見ていたけど
最近は少しだけ笑顔がもどった
それだけのことがたまらなく嬉しい
[そや!久しぶりにゲームしよっ、うぉ]
ふわっちが前のめりな姿勢になる
どうやらめまいがしたようだ
『 ふわっち?大丈夫?どうしたの?』
[にゃは、大丈夫。ちょっと立ちくらみ]
しゃがんで頭を押さえているふわっち
その腕に
数十箇所の痛々しい注射の後が、あった
薬?まさか、
『 はっ』
思わずいきをのむ
薬漬け…?
ふわっち、君は
いったい
どこまで辛いことをされてきたの?
[ん?明那がどしたん?]
『 !何でもないよ!ゲームしよ!』
[おーやるぞー]
おれはそこから
ふわっちを直視することができなかった
[ふー遊び疲れたなあ]
『 お腹すいたー』
ゲームをひとしきり楽しみ
時計を見ると午後8時
そろそろ夜ご飯にしようかな
『 ふわっち、ご飯にしよっか』
[おー!いいね]
『 オムライスとかでいいなら簡単に作っちゃうから待ってて』
[わーい]
そんな大層なものではないのに、純粋に喜んでくれているふわっちが可愛い
『 お待たせー』
[待ってた〜]
『 本日のメニューはオムライスでございます』
なんて高級レストラン風に紹介してみる
[おー素敵ー]
そこで俺はカッコつけてオムライスを腕に二個持ちでスタイリッシュに運ぶ
[明那、落とさんでな?]
『 大丈夫だよっ、あ!』
がしゃん
ふわっちが忠告してくれた側から落としてしまった
お皿は割れ、破片と料理が混同している
あーあこれは勿体無いけど廃棄かな…
するとふわっちは突然料理の前に座った
『 ?どうしたのふわっち、危ないからあっちに…』
かしゃかしゃ
ふわっちが素手で料理を触り始める
『 ちょっと、何してるの!?』
お皿の破片でふわっちの手にどんどん切り傷がついていく
[…、っちゃんと、集めないと、]
『 ねぇ、ふわっち、』
[…だから、っ、〜で、]
だめだ、声が聞こえてないみたい
ふわっちは何かを呟きながら
無我夢中で料理を拾い集めている
まるで何かに取り憑かれているかのように
『 …っ、ふわっち!!!!』
俺はとてつもない大きな声を出した
[はっ、あ、明那、あれ、俺、そっかごめん]
[にゃは、おかしいな。]
やっとふわっちに声が届いたようだった
おかしいな、と小さく笑うふわっちは
自分でも困惑している様子だった
…監禁生活で身についた癖
きっと、それなのだろう
『 っ、』
[あ、明那?ごめん、おこっ、た?]
どうして彼は謝るのだろう
1番辛いのは彼なのに
彼に対する同情と
監禁していた相手に対する憎悪
それと嫉妬で
頭がおかしくなりそうだった
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えっへ、えへへ
好き