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Side 青
日もすっかり暮れ、本番の時間が近づいてくる。
俺はジェシーと連れ立って楽屋を出た。4人は先に呼ばれて行ってたり、後から行くって言ってたり。
「大丈夫か? ジェシー」
俺は、廊下の壁に手をついたジェシーをそっと支えた。
「…大丈夫」
いつになくその返事がぶっきらぼうな気がして、ちょっとびっくりした。前なら、楽しそうにみんなと飯の話とかしてたのにな。
「ちょっと休憩しようか。足取り重いし」
「いいって言ってるだろ!」
彼の怒号が唐突に響いた。俺はびくっと肩を震わせる。
「だから休みたかったんだよ。活動続けてても、みんなに色々心配とか迷惑かけるだろうから。いっそ一人で過ごしたかった。だけどやってほしいって言うから、みんなのためにも頑張ってる。頑張ってんのに『無理するな』なんて…矛盾してるだろっ」
畳みかけるように、そして吐き捨てるように口にした。何も言い返せない。
そんなふうにジェシーが思ってただなんて、知らなかった。
「見捨ててほしいとか、そういうわけじゃない。でも何ていうか…辛いんだよ。樹とかメンバーに心配されるたびに。俺は何にもできないって思えてくる」
久しぶりに大声を出したせいだろう、ジェシーは大きく肩で息をする。
「……ごめん。ジェシーの気持ち、考えてなかった」
謝ると、ジェシーは眉尻を下げて首を振った。
「違う! 樹は優しいし、みんなが俺のこと思ってくれてるのはわかってる。でも、それでみんなの時間を奪いたくないんだ」
すれ違う、思いやり。
どうすれば混じり合えるのだろう。俺は言葉を選んで口にする。
「ジェシーはさ。俺ら5人をこの世界に留めたから、ずっとそれで引け目を負ってたんじゃない? 俺がメンバーの命運を握ってるんだって」
「……どういうこと?」
「だけどな、SixTONESの運命なんて6人全員にかかってるんだよ。良くも悪くも。全員で、100パーセントを担ってる。だからジェシーの責任じゃないし、誰のせいにもできない」
彼は、明かりのせいかやや茶色ががった瞳で見返してくる。
「俺らは、そういうジェシーが一人で抱え込まないように、パーキンソン病がわかっても俺らと一緒にいさせた。だから…頑張ってるのはよく見てる。でも全員で頑張ればいいだろ。負担も少ない」
足音が近づいてくる。スタッフさんらしき人が、ちらとこっちを見て去っていく。俺は続けた。
「6人みんなで、楽しいことも苦しいことも分け合おう。ジェシーが感じてる病気の辛さだって、俺らにぶちまけて6等分すればいい」
「…いいの?」
彼は子犬みたいな目でのぞき込んでくる。
「ああ。ジェシーが思う迷惑は、俺らにとってはぜんっぜん迷惑じゃないから。きっと、4人も同じ気持ちだよ」
ジェシーはこっちに近づいてきて、ちょっと低い俺の肩口に顔を埋めてきた。
「これからさ、病気がもし進んでいっても、離れないでくれる?」
「——言うまでもないだろ。だってお前が俺らをSixTONESにしてくれたんだからな? もう変更は許さねぇ」
アハハ、とジェシーの笑い声が耳に届く。いつものあの底抜けに明るい声が。
「ほら。本番、頑張ろうぜ」
俺はジェシーと肩を組み、この日のために用意された舞台へと向かう。
そしてメンバーが揃う。
ショーが始まる。
このまま、俺ら6人で一緒にどこまでも歩いて行こう。
それは10年前の今日に決めてたことだよな、ジェシー。
終わり
Happy 10th Formation Anniversary!!!!!!